2 / 22
2
しおりを挟む
子供と旅をして2年の月日が流れていた。
ジョナサンも3歳になった。
生活は毎日移動をくり返し、子供が眠った時には、布に刺繍を施しハンカチを売っていた。
毎日がギリギリの生活だった。
安息はない、少し止まってもすぐお触れがいまだに出回り、今では捜索隊まで出ていると聞く。
そんな生活もある日突然終止符が打たれた。
子供を抱えて森の中を歩いていたその時、前から捜索隊とおもわしき身なりをした集団がいた。
木の影に身を隠しながら通り過ぎた次の瞬間、
「止まれ。」
1人の隊員に呼び止められた。
「……何かご用でしょうか?」
振り向かずに返事をする。
「顔を見せろ。」
抵抗するまもなく肩を引かれて、向き合う形になってしまった。
その瞬間、隊員声を上げた。
「いたぞ!」
その瞬間、数人の隊員たちに取り押さえられあっという間に馬車の中に押し込まれた。
私を真ん中に置いて周りには4人の隊員が逃げないようにと、ガッチリ固めて座っている。
幸いジョナサンは眠っている。
これから何が起きるかわからずに、震える体を抑えるようにジョナサンを抱きしめた。
馬車が、屋敷の前に止まると引きずられる様に書斎に投げ込まれた。
ジョナサンを庇いながら床に手をつき、私の事を見下ろしている彼の父親がいた。
「久しぶりだな。」
静かながら威厳のある声だった。
私は震えながらも、ジョナサンを抱きしめて口を開いた。
「お久しぶりでございます…。」
「子供がいたとは…。」
子供に意識を向けられた事で慌てて視界から隠すように、ジョナサンを隠した。
しかしその抵抗も虚しく、目の前の男は隊員に目配せすると、私からジョナサンを引き離し、男のに手渡した。
「やめてください!その子は関係ありません!」
「はっ…!お前の魂胆はわかっているが残念だが、この子はジョセフの子供だろう?」
慌てて首を振るが聞き入れてもらえない。
「お前にやってもらいたいことがある。そうすれば、お前から子供を取り上げる事はしない。」
「何を…。」
急なことに頭がついていかない。
「まぁ座れ。」
男にそう問われて床に付いていた手を隊員に立ち上げられ椅子に座らされる。
「お前がある条件を呑めば、子供とは毎日合わせてやる。」
「どういうことですか?」
「詳しくは一緒に来てもらおう。」
「子供は乳母に預ける。」
するといつの間にか近くにいた女性が私に頭を下げてジョナサンを連れて行く。
心配ではあるが抵抗するのは得策ではないと黙って従った。
男は立ち上がると、屋敷の別館へと案内された。
そこの一部屋に通された時、目を見張った。
そこには愛する人が虚にベッドに座っていたのだった。
ジョナサンも3歳になった。
生活は毎日移動をくり返し、子供が眠った時には、布に刺繍を施しハンカチを売っていた。
毎日がギリギリの生活だった。
安息はない、少し止まってもすぐお触れがいまだに出回り、今では捜索隊まで出ていると聞く。
そんな生活もある日突然終止符が打たれた。
子供を抱えて森の中を歩いていたその時、前から捜索隊とおもわしき身なりをした集団がいた。
木の影に身を隠しながら通り過ぎた次の瞬間、
「止まれ。」
1人の隊員に呼び止められた。
「……何かご用でしょうか?」
振り向かずに返事をする。
「顔を見せろ。」
抵抗するまもなく肩を引かれて、向き合う形になってしまった。
その瞬間、隊員声を上げた。
「いたぞ!」
その瞬間、数人の隊員たちに取り押さえられあっという間に馬車の中に押し込まれた。
私を真ん中に置いて周りには4人の隊員が逃げないようにと、ガッチリ固めて座っている。
幸いジョナサンは眠っている。
これから何が起きるかわからずに、震える体を抑えるようにジョナサンを抱きしめた。
馬車が、屋敷の前に止まると引きずられる様に書斎に投げ込まれた。
ジョナサンを庇いながら床に手をつき、私の事を見下ろしている彼の父親がいた。
「久しぶりだな。」
静かながら威厳のある声だった。
私は震えながらも、ジョナサンを抱きしめて口を開いた。
「お久しぶりでございます…。」
「子供がいたとは…。」
子供に意識を向けられた事で慌てて視界から隠すように、ジョナサンを隠した。
しかしその抵抗も虚しく、目の前の男は隊員に目配せすると、私からジョナサンを引き離し、男のに手渡した。
「やめてください!その子は関係ありません!」
「はっ…!お前の魂胆はわかっているが残念だが、この子はジョセフの子供だろう?」
慌てて首を振るが聞き入れてもらえない。
「お前にやってもらいたいことがある。そうすれば、お前から子供を取り上げる事はしない。」
「何を…。」
急なことに頭がついていかない。
「まぁ座れ。」
男にそう問われて床に付いていた手を隊員に立ち上げられ椅子に座らされる。
「お前がある条件を呑めば、子供とは毎日合わせてやる。」
「どういうことですか?」
「詳しくは一緒に来てもらおう。」
「子供は乳母に預ける。」
するといつの間にか近くにいた女性が私に頭を下げてジョナサンを連れて行く。
心配ではあるが抵抗するのは得策ではないと黙って従った。
男は立ち上がると、屋敷の別館へと案内された。
そこの一部屋に通された時、目を見張った。
そこには愛する人が虚にベッドに座っていたのだった。
0
お気に入りに追加
11
あなたにおすすめの小説

シークレット・ガーデン~英国紳士の甘い求愛と秘密~
東川カンナ
恋愛
とある事情から、しばし休暇を取るために幼少期を過ごしたイギリスの湖水地方を訪れた莉緒。
到着早々、ステイ先の知り合いと連絡が取れなくなり困り果てていたところ、その昔一緒に遊んだ少年・レオンと再会し、幸運にも彼の持つ別宅に置いてもらえることに。
英国紳士そのもの、非の打ちどころのないレオンと一つ屋根の下で過ごすうちに、二人の関係はどんどんと深まっていく。
けれど蕩けるように甘く優しいこの関係には、実はいくつかの大きな秘密があって―ーーー
甘く優しい英国紳士、美しい湖水地方、日本とはまた違う郷土料理。英国で過ごす特別なひと時を綴る物語。

蔑ろにされた王妃と見限られた国王
奏千歌
恋愛
※最初に公開したプロット版はカクヨムで公開しています
国王陛下には愛する女性がいた。
彼女は陛下の初恋の相手で、陛下はずっと彼女を想い続けて、そして大切にしていた。
私は、そんな陛下と結婚した。
国と王家のために、私達は結婚しなければならなかったから、結婚すれば陛下も少しは変わるのではと期待していた。
でも結果は……私の理想を打ち砕くものだった。
そしてもう一つ。
私も陛下も知らないことがあった。
彼女のことを。彼女の正体を。

悪役令嬢カテリーナでございます。
くみたろう
恋愛
………………まあ、私、悪役令嬢だわ……
気付いたのはワインを頭からかけられた時だった。
どうやら私、ゲームの中の悪役令嬢に生まれ変わったらしい。
40歳未婚の喪女だった私は今や立派な公爵令嬢。ただ、痩せすぎて骨ばっている体がチャームポイントなだけ。
ぶつかるだけでアタックをかます強靭な骨の持ち主、それが私。
40歳喪女を舐めてくれては困りますよ? 私は没落などしませんからね。

甘すぎるドクターへ。どうか手加減して下さい。
海咲雪
恋愛
その日、新幹線の隣の席に疲れて寝ている男性がいた。
ただそれだけのはずだったのに……その日、私の世界に甘さが加わった。
「案外、本当に君以外いないかも」
「いいの? こんな可愛いことされたら、本当にもう逃してあげられないけど」
「もう奏葉の許可なしに近づいたりしない。だから……近づく前に奏葉に聞くから、ちゃんと許可を出してね」
そのドクターの甘さは手加減を知らない。
【登場人物】
末永 奏葉[すえなが かなは]・・・25歳。普通の会社員。気を遣い過ぎてしまう性格。
恩田 時哉[おんだ ときや]・・・27歳。医者。奏葉をからかう時もあるのに、甘すぎる?
田代 有我[たしろ ゆうが]・・・25歳。奏葉の同期。テキトーな性格だが、奏葉の変化には鋭い?
【作者に医療知識はありません。恋愛小説として楽しんで頂ければ幸いです!】

彼の親に振り回されました
しがと
恋愛
高校生で出会い一緒の時間を過ごしていくことでお互いに惹かれあっていった男女。告白直前まで行くものの、彼の父親によって2人の間に大きな距離ができてしまう。高校、大学を卒業した後もお互い想い合っていたが、彼女は彼を諦める決意をする。しかし、2人の友人の協力もあって、ついに再会して……。

【完結】私を裏切った前世の婚約者と再会しました。
Rohdea
恋愛
ファルージャ王国の男爵令嬢のレティシーナは、物心ついた時から自分の前世……200年前の記憶を持っていた。
そんなレティシーナは非公認だった婚約者の伯爵令息・アルマンドとの初めての顔合わせで、衝撃を受ける。
かつての自分は同じ大陸のこことは別の国……
レヴィアタン王国の王女シャロンとして生きていた。
そして今、初めて顔を合わせたアルマンドは、
シャロンの婚約者でもあった隣国ランドゥーニ王国の王太子エミリオを彷彿とさせたから。
しかし、思い出すのはシャロンとエミリオは結ばれる事が無かったという事実。
何故なら──シャロンはエミリオに捨てられた。
そんなかつての自分を裏切った婚約者の生まれ変わりと今世で再会したレティシーナ。
当然、アルマンドとなんてうまくやっていけるはずが無い!
そう思うも、アルマンドとの婚約は正式に結ばれてしまう。
アルマンドに対して冷たく当たるも、当のアルマンドは前世の記憶があるのか無いのか分からないが、レティシーナの事をとにかく溺愛してきて……?
前世の記憶に囚われた2人が今世で手にする幸せとはーー?

白い結婚は無理でした(涙)
詩森さよ(さよ吉)
恋愛
わたくし、フィリシアは没落しかけの伯爵家の娘でございます。
明らかに邪な結婚話しかない中で、公爵令息の愛人から契約結婚の話を持ち掛けられました。
白い結婚が認められるまでの3年間、お世話になるのでよい妻であろうと頑張ります。
小説家になろう様、カクヨム様にも掲載しております。
現在、筆者は時間的かつ体力的にコメントなどの返信ができないため受け付けない設定にしています。
どうぞよろしくお願いいたします。
初恋は溺愛で。〈一夜だけのはずが、遊び人を卒業して平凡な私と恋をするそうです〉
濘-NEI-
恋愛
友人の授かり婚により、ルームシェアを続けられなくなった香澄は、独りぼっちの寂しさを誤魔化すように一人で食事に行った店で、イケオジと出会って甘い一夜を過ごす。
一晩限りのオトナの夜が忘れならない中、従姉妹のツテで決まった引越し先に、再会するはずもない彼が居て、奇妙な同居が始まる予感!
◆Rシーンには※印
ヒーロー視点には⭐︎印をつけておきます
◎この作品はエブリスタさん、pixivさんでも公開しています
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる