花嫁の勘案

はなおくら

文字の大きさ
上 下
34 / 45

34

しおりを挟む
「ニアとは、ナタリアと婚約する前に知りあったんだ。孤児院で育ったのは聞いてるか?」

「…はい。」

「彼女は孤児院に入ったばかりで誰とも仲良く慣れなかった。だからぼくは彼女が慣れるまで協力したんだ。」

「そうでしたか…。だから愛称で呼び合っていたんですね…。」

「あぁ…君には嫌な思いをさせたな…すまない…。これからはこういうことは起きることはないだろう。…だから信じて欲しい…ぼくが愛してるのは君だけだ。」

「ヴォルス様…。」

 初めて彼に告白された気がする。

「私でいいんですか?家同士で結婚した相手です…今なら…。」

「ナタリア、それ以上は聞く気はない。初めは義務だったが、今は違う…君がいない生活なんて考えられない。」

 私は嬉しくなって目から涙が溢れた。

 本当に彼は私を受け入れてくれたのだと実感する。

「ヴォルス様…私も…あなたを愛しています…。」

「ナタリアっ!」

 私の告白にヴォルス様は抱き寄せてくれた。

 彼の暖かい胸に包まれてようやく安心した気持ちを迎えた気がする。

「ナタリア…。」

 顔を上げればヴォルス様にキスをされた。

 先ほどの長いキスから少し晴れた唇に甘い痛みが走る。

 その感覚が心地よく感じている。

「ヴォルス様…私…あなたが好きです。もう素直になっていいんですね。」

「ナタリア…君の気持ちが聞けて嬉しいよ…もうこれからは私に何でも話してくれ…離れていかないで欲しい。」

「…はい…。」

 わたしは自らヴォルス様の手を取り、彼のベッドに腰掛けた。

 そこからは彼も隣に座るわたしの肩を優しく押してベッドの中に沈む。

「ナタリア…もう我慢できそうもない…。」

「わたしもです…。」

 彼の唇がわたしのうなじから方へと往復する。

 柔らかい感触にわたしは目を閉じて感じた。

 するとゴツゴツとした手がわたしの胸に触れて優しく揉まれる。

「…っ…‼︎」

 自然と声が出てしまうのを唇を噛み締めて我慢した。

 ヴォルス様はそんなわたしの口に指を入れた。

「噛むな…。」

 彼の指を離そうと口を開けるが、一向に出ていくことはなかった。

 むしろわたしの口の中を撫で回す。

 その上胸を刺激されてわたしは声を我慢することができなかった。

「あっ…ヴォル…ス…様…ふぁ…!」

 恥ずかしさといやらしさに体が熱くなってくる。

 そんなわたしの顔を嬉しそうに彼は見つめてきた。

 やがて指が離れると彼は私の手を上げさせて脇の下をいやらしく舐め出した。

 初めて事に恥ずかしくなってわたしは首を振った。

「ヴォルス様…そこは見ないでくださいっ…恥ずかしいです…。」
しおりを挟む

あなたにおすすめの小説

秘事

詩織
恋愛
妻が何か隠し事をしている感じがし、調べるようになった。 そしてその結果は...

エリート警察官の溺愛は甘く切ない

日下奈緒
恋愛
親が警察官の紗良は、30歳にもなって独身なんてと親に責められる。 両親の勧めで、警察官とお見合いする事になったのだが、それは跡継ぎを産んで欲しいという、政略結婚で⁉

一途なエリート騎士の指先はご多忙。もはや暴走は時間の問題か?

はなまる
恋愛
 シエルは20歳。父ルドルフはセルベーラ国の国王の弟だ。17歳の時に婚約するが誤解を受けて婚約破棄された。以来結婚になど目もくれず父の仕事を手伝って来た。 ところが2か月前国王が急死してしまう。国王の息子はまだ12歳でシエルの父が急きょ国王の代理をすることになる。ここ数年天候不順が続いてセルベーラ国の食糧事情は危うかった。 そこで隣国のオーランド国から作物を輸入する取り決めをする。だが、オーランド国の皇帝は無類の女好きで王族の女性を一人側妃に迎えたいと申し出た。 国王にも王女は3人ほどいたのだが、こちらもまだ一番上が14歳。とても側妃になど行かせられないとシエルに白羽の矢が立った。シエルは国のためならと思い腰を上げる。 そこに護衛兵として同行を申し出た騎士団に所属するボルク。彼は小さいころからの知り合いで仲のいい友達でもあった。互いに気心が知れた中でシエルは彼の事を好いていた。 彼には面白い癖があってイライラしたり怒ると親指と人差し指を擦り合わせる。うれしいと親指と中指を擦り合わせ、照れたり、言いにくい事があるときは親指と薬指を擦り合わせるのだ。だからボルクが怒っているとすぐにわかる。 そんな彼がシエルに同行したいと申し出た時彼は怒っていた。それはこんな話に怒っていたのだった。そして同行できる事になると喜んだ。シエルの心は一瞬にしてざわめく。 隣国の例え側妃といえども皇帝の妻となる身の自分がこんな気持ちになってはいけないと自分を叱咤するが道中色々なことが起こるうちにふたりは仲は急接近していく…  この話は全てフィクションです。

【R18】純粋無垢なプリンセスは、婚礼した冷徹と噂される美麗国王に三日三晩の初夜で蕩かされるほど溺愛される

奏音 美都
恋愛
数々の困難を乗り越えて、ようやく誓約の儀を交わしたグレートブルタン国のプリンセスであるルチアとシュタート王国、国王のクロード。 けれど、それぞれの執務に追われ、誓約の儀から二ヶ月経っても夫婦の時間を過ごせずにいた。 そんなある日、ルチアの元にクロードから別邸への招待状が届けられる。そこで三日三晩の甘い蕩かされるような初夜を過ごしながら、クロードの過去を知ることになる。 2人の出会いを描いた作品はこちら 「純粋無垢なプリンセスを野盗から助け出したのは、冷徹と噂される美麗国王でした」https://www.alphapolis.co.jp/novel/702276663/443443630 2人の誓約の儀を描いた作品はこちら 「純粋無垢なプリンセスは、冷徹と噂される美麗国王と誓約の儀を結ぶ」 https://www.alphapolis.co.jp/novel/702276663/183445041

散りきらない愛に抱かれて

泉野ジュール
恋愛
 傷心の放浪からひと月ぶりに屋敷へ帰ってきたウィンドハースト伯爵ゴードンは一通の手紙を受け取る。 「君は思う存分、奥方を傷つけただろう。これがわたしの叶わぬ愛への復讐だったとも知らずに──」 不貞の疑いをかけ残酷に傷つけ抱きつぶした妻・オフェーリアは無実だった。しかし、心身ともに深く傷を負ったオフェーリアはすでにゴードンの元を去り、行方をくらましていた。 ゴードンは再び彼女を見つけ、愛を取り戻すことができるのか。

続・上司に恋していいですか?

茜色
恋愛
営業課長、成瀬省吾(なるせ しょうご)が部下の椎名澪(しいな みお)と恋人同士になって早や半年。 会社ではコンビを組んで仕事に励み、休日はふたりきりで甘いひとときを過ごす。そんな充実した日々を送っているのだが、近ごろ澪の様子が少しおかしい。何も話そうとしない恋人の様子が気にかかる省吾だったが、そんな彼にも仕事上で大きな転機が訪れようとしていて・・・。 ☆『上司に恋していいですか?』の続編です。全6話です。前作ラストから半年後を描いた後日談となります。今回は男性側、省吾の視点となっています。 「ムーンライトノベルズ」様にも投稿しています。

極悪家庭教師の溺愛レッスン~悪魔な彼はお隣さん~

恵喜 どうこ
恋愛
「高校合格のお礼をくれない?」 そう言っておねだりしてきたのはお隣の家庭教師のお兄ちゃん。 私よりも10歳上のお兄ちゃんはずっと憧れの人だったんだけど、好きだという告白もないままに男女の関係に発展してしまった私は苦しくて、どうしようもなくて、彼の一挙手一投足にただ振り回されてしまっていた。 葵は私のことを本当はどう思ってるの? 私は葵のことをどう思ってるの? 意地悪なカテキョに翻弄されっぱなし。 こうなったら確かめなくちゃ! 葵の気持ちも、自分の気持ちも! だけど甘い誘惑が多すぎて―― ちょっぴりスパイスをきかせた大人の男と女子高生のラブストーリーです。

とまどいの花嫁は、夫から逃げられない

椎名さえら
恋愛
エラは、親が決めた婚約者からずっと冷淡に扱われ 初夜、夫は愛人の家へと行った。 戦争が起こり、夫は戦地へと赴いた。 「無事に戻ってきたら、お前とは離婚する」 と言い置いて。 やっと戦争が終わった後、エラのもとへ戻ってきた夫に 彼女は強い違和感を感じる。 夫はすっかり改心し、エラとは離婚しないと言い張り 突然彼女を溺愛し始めたからだ ______________________ ✴︎舞台のイメージはイギリス近代(ゆるゆる設定) ✴︎誤字脱字は優しくスルーしていただけると幸いです ✴︎なろうさんにも投稿しています 私の勝手なBGMは、懐かしすぎるけど鬼束ちひろ『月光』←名曲すぎ

処理中です...