花嫁の勘案

はなおくら

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 その夜、いつもの様にヴォルス様は寝室にくる。

 後ろからわたしを抱きしめて体を撫で回す。

 いつもは何も言わずに刺激だけを与えられるのだが今日は違った。

 ヴォルス様のものがわたしの陰核を直接こすり合わされる。

 後ろから胸を揉みしだかれて、耳元で囁かれる。

「そろそろ限界だろう…っ…今以上を知りたくないか?」

「んっ…っ…‼︎」

 意識が下の方へと集中する。

 このままヴォルス様と一つになれたらと考えただけで反応してしまう。

 しかしふと頭によぎったのは、昼間見た2人の姿だった。

 もう自分はここには必要がないんだ。

 ヴォルス様もいつかは出ていってもらうと言っても内心は違うに決まっている。

「…っ…!」

 首を振って彼から体を離した。

 その瞬間、苛立ちをあらわにしたヴォルス様は次の瞬間わたしの足を大きく押し開いた。

「っ…もういい!…身体に聞けば分かることだ!」

 その瞬間彼はわたしの中に入ろうとしたのを私は瞬時に両手で遮った。

 拒否することも生半可ではなかった。

「嫌です…これだけは譲れません。」

 その瞬間目に涙が流れてきた。

 気持ちとは違う事を言葉にしている。

 それでも強引にわたしの手を引き剥がそうとするのを私は強く拒否する。

「っ…なぜだ‼︎君もわたしを求めているはずだ!なぜ…。」

 ヴォルス様は項垂れてしまった。

 そんな彼の姿にわたしは、わたしは静かに口を開いた。

「もう別れましょう…もう充分です。あなたはあなたの道を…。」

「なぜそんなことを言うんだ…。」

「………。」

 これ以上ここにいても寂しくなってしまうだけだとわたしはガウンを羽織って部屋に出た。

 後ろから呼び止める彼の返事を聞かないふりをした。

 あれから数日、誰にも会う事を拒否して部屋に閉じこもった。

 何度かヴォルス様から会いたいとドア越しに言われたが敢えて返事をせずにいる。

 ここにいるべきではないと思いつつも今まで貴族として暮らしてきてどこにいけばいいのか検討もつかない。

 そうこう考えている時、ジャンさんの事を思い出した。

 彼は平民の生活も悪くはないと言っていた。

 一度街に出て考えてみてもいいかもしれない。

 私はヴォルス様がいない隙を見て、侍女に事付けをして街に出ることにした。

 街に出てみて正直何も感じることができなかった。

 心の気分のせいなのかわからない。

 とりあえず歩いてみる。

 出店で何か買ってみる。

 気が進まなかったがとりあえずやってみた。

 そうしていると少しずつ楽しいと言う感情が湧き上がってきた。

 そこからは火がついた様に好奇心に駆られた。
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