花嫁の勘案

はなおくら

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 ヒソヒソと話をしているが、丸聞こえだった。

 やはり他人から見ても2人はお似合いなのだと思うと寂しい気持ちになった。

 わたしは余計に辛くなってしまい会場を後にしようとした時だった。

「っ…‼︎」

 俯いていたせいで前の人とぶつかってしまった。

「すみません、よそ見をしておりました。」

「いえ…わたしの不注意でっ……。」

 顔を上げると色黒の男性が立っていた。

 おそらく貴族ではないのだと伺えた。

「怪我はないですか?」

 そう言って男性はわたしの手を掬い上げてくれた。

 周りを見ればヴォルス様やニア様はいない。

「えぇ…ごめんなさいね。わたしはこれで…。」

 わたしは早々に会場を出てバルコニーにでたのだった。

 バルコニーでは風に当たりながら1人になれたので気持ちが落ち着いてくる。

 手入れされた庭園を眺めている時だった。

 顔の横にワイングラスが見えた。

 横を向けば先ほどの男性が立っていた。

「失礼…よろしければご一緒しても?」

「…ありがとうございます。…少しなら…。」

 そう言うと男性はわたしの隣に立ちながら手すりに寄りかかった。

「こちらにはどなたと?」

 わたしが質問すると男性はにこりと笑った。

「大したものではありません。突然大金が入ったので孤児院に寄付したらお礼にと招待されたんです。僕はただの平民ですから。」

「そうでしたか…それはいい事をなさいましたね。きっとそうした分だけあなたにもいいことが起きますよ。」

「えぇ…本当に起きた様です。」

 そう言って男性はワインを一口飲んだ。

「あっ!お名前をお伺いしてませんでしたね。よろしければ教えていただけますか?」

「あぁ…僕はジャンといいます。苗字は…平民なのでありません。」

「ジャンさんですか。わたしは…。」

「知ってますか、シュリット子爵夫人のナタリア様ですよね?」

 わたしが名乗る前にそう告げられる。

「ナタリアと気軽に呼んでください。」

「いえそんな恐れ多いですから。」

 遠慮気味に言うジャンにわたしはにこりと微笑んだ。

「気にしないでください。」

 そういうと、ジャンは遠慮気味に言った。

「では…ナタリア様と…。」

「えぇ…。」

 2人で会話を楽しんでいた時、ふと会場に目をやると、ヴォルス様の腕をニアが手を回して歩いている。

 どちらが夫人か分かったものではない。

 わたしは会場から目を逸らした時だった。

「ご婦人は子供の頃何をして遊んでいましたか?」

「え…?」

 そんな事を聞かれて驚いた。

「そうねぇ…わたしは刺繍や貴族の稽古で遊ぶと言うのはなかったかもしれないわ。」

 そういうとジャンはにこりと笑った。

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