花嫁の勘案

17

「なにっ…こんなっ…！」

「くっ…気持ちよくない…？…いやか…？」

　快感を堪えた様な不安そうな彼をみて、快感と愛情が溢れてきた。

「はっ…嫌じゃないっ…気持ちいいの…！」

　そういえばヴォルス様は安心した顔を浮かべた。

　彼の熱を感じながら、余裕のない表情を浮かべる彼が、珍しくて顔を見つめる。

　目があった瞬間、私はキスがしたくて口を開けば、彼は私の顔に近づいてチュッと音を鳴らしてキスする。

　愛してる。

　人を恋うる気持ちはこうなのか、心が満たされて彼の温もりにいつまでも振れていたい。

　このどうしようもない想いをどう表現したらいいのだろうか。

「ヴォルス様…愛してます…。」

「……っ…‼︎」

　その瞬間、彼は激しく腰を動かしたその刺激にわたしは何も考えられないほど腰を揺らして果てたのだった。

　微睡の中、わたしを見つめる彼ににこりと微笑んで私は目を閉じた。

　目が覚めれば朝になっている。

　そろそろくるはずの使用人が来る気配もない。

　きっと私達のことを察してくれているのだろう。

　私はそう思って横で眠るヴォルス様を見つめた。

　まだ繋がったわけではないが、心は満たされている。

　ヴォルス様の黒髪を撫でて彼の寝息を聞く。

　この時間がいつまでも続けばいいのに。

　そんな願望が生まれてくる。

　彼の顔を両手で覆い、彼の顔を見つめる。

　眉…目…鼻…口…。

　その顔の形を見つめて愛おしさが抑えられないの。

　私は彼を祝福する気持ちで、顔の一つ一つにキスを落としていった。

　くすぐったかったかのか、ここまでされても起きる気配がない。

　眠ると幼さが残る彼の顔に最後におでこにキスを落とした。

　それにようやく目が覚めたという様に彼が目を覚ました。

「起きていたのか。」

「はい…。」

　なんだかむず痒い気持ちで返事をすると、ヴォルス様はぎゅっとわたしを抱き寄せた。

「………。」

「…………。」

　言葉を交わさずとも、心地いい気持ちになった。

　彼の鼓動を感じながら目を閉じる。

　わたしの金髪の髪を優しく撫でる彼の顔が見たくなって顔を上げれば、こちらを見つめて微笑んでくれる。

　それが嬉しくて彼の厚い胸に顔を埋めて幸せな気持ちになった。

　その時、気遣わしげなドアの音がなった。

　ヴォルス様の執務の時間が近づいているのだろう。

　ヴォルス様は一つ息を吐くと、わたしの唇にキスをくれた。

「いってくる。」

　そう言って、彼は執事からわたしが見えない様に部屋を出ていった。

　彼には聞こえないのはわかっているが、私はそっと彼に向かって、

「いってらっしゃい。」

　そう言って恥ずかしさを隠す様に、布団に入った。