花嫁の勘案

はなおくら

文字の大きさ
上 下
11 / 45

11

しおりを挟む
 快感の余韻に浸りながらわたしは、乱れを整えて布団に入り眠りに落ちた。

 ある日、ヴォルス様が支援している養護施設に夫婦で偵察に訪れていた。

 そういう日は、動きやすい格好をして私は子供達と食事や洗濯、そして施設で育てている野菜の世話を手伝っている。

 可愛い子供たちが嬉しそうに微笑んで一緒にしてくれるので私にとっても癒しのひとときとなっている。

 私がそのように過ごしている間、ヴォルス様は園長や面倒を見ている大人達の話を聞いたりと施設の運営に耳を傾けている。

 ヴォルス様はいつも子供たちが喜ぶようにと大きなお肉の塊を持って訪問するため子供達もヴォルス様に懐いている。

 今お昼時でそのお肉で何を作るか話し合っている時だった。

 その中にいた女の子が口を開いた。

「昔ね、お父さんとお母さんと暮らしてた頃お母さんがお父さんのお誕生日に手料理を作ってみんなで食べてたの!だから今回はヴォルス様の好きなものを作るのはどうかな?」

「「いいね!」」

 女の子の言葉にみんなが嬉しそうに声を上げた。

 期待の眼差しで私の方に目を向けられてわたしは困った。

 というのもヴォルス様の好きなものを気にしてなかったから。

 何気ないことなのだが大切な事に気付かされた。

 みんなが見守る中、わたしは記憶を頼りに頭を巡らせているとヴォルス様はジャガイモを甘く煮詰めたものを好んで食べている事に気がついた。

 私はさっきとっきてきたジャガイモとお肉をを煮詰めたものを作る事にした。

 早速子供達に話をすると、子供たちは嬉しそうに頷き、みんなで料理を始めたのだった。

 料理をしながら子供たちのおかげで大事な事に気付かされたとわたしは感謝した。

 そしてお昼時、子供たちが食卓の準備をするなか、私はヴォルスや他の先生たちを呼びに部屋を出た。

 公園の方へ向かうと、ヴォルス様と若い女の先生達が頬を染めながら嬉しそうに彼の周りを囲んでいる。

 ヴォルスも笑顔で対応している。

 そんな光景に嫉妬してしまい、私は大人気ないと自分を叱りつけて集まりの場へと近づいた。

「皆さん、お昼の用意ができましたよ!」

 そう呼びかけると先生達は元気な返事をして先に食堂へ向かった。

 ヴォルス様の方を見て、私は声をかけた。

「子供達と作った料理です。子供達もヴォルス様に召し上がっていただくのを楽しみにしてますよ。」

「それは楽しみだ。」

 ヴォルス様は嬉しそうに頷くと、行こうかと歩き出した。

 わたしはその隣について食卓へと向かったのだった。

しおりを挟む

あなたにおすすめの小説

秘事

詩織
恋愛
妻が何か隠し事をしている感じがし、調べるようになった。 そしてその結果は...

エリート警察官の溺愛は甘く切ない

日下奈緒
恋愛
親が警察官の紗良は、30歳にもなって独身なんてと親に責められる。 両親の勧めで、警察官とお見合いする事になったのだが、それは跡継ぎを産んで欲しいという、政略結婚で⁉

一途なエリート騎士の指先はご多忙。もはや暴走は時間の問題か?

はなまる
恋愛
 シエルは20歳。父ルドルフはセルベーラ国の国王の弟だ。17歳の時に婚約するが誤解を受けて婚約破棄された。以来結婚になど目もくれず父の仕事を手伝って来た。 ところが2か月前国王が急死してしまう。国王の息子はまだ12歳でシエルの父が急きょ国王の代理をすることになる。ここ数年天候不順が続いてセルベーラ国の食糧事情は危うかった。 そこで隣国のオーランド国から作物を輸入する取り決めをする。だが、オーランド国の皇帝は無類の女好きで王族の女性を一人側妃に迎えたいと申し出た。 国王にも王女は3人ほどいたのだが、こちらもまだ一番上が14歳。とても側妃になど行かせられないとシエルに白羽の矢が立った。シエルは国のためならと思い腰を上げる。 そこに護衛兵として同行を申し出た騎士団に所属するボルク。彼は小さいころからの知り合いで仲のいい友達でもあった。互いに気心が知れた中でシエルは彼の事を好いていた。 彼には面白い癖があってイライラしたり怒ると親指と人差し指を擦り合わせる。うれしいと親指と中指を擦り合わせ、照れたり、言いにくい事があるときは親指と薬指を擦り合わせるのだ。だからボルクが怒っているとすぐにわかる。 そんな彼がシエルに同行したいと申し出た時彼は怒っていた。それはこんな話に怒っていたのだった。そして同行できる事になると喜んだ。シエルの心は一瞬にしてざわめく。 隣国の例え側妃といえども皇帝の妻となる身の自分がこんな気持ちになってはいけないと自分を叱咤するが道中色々なことが起こるうちにふたりは仲は急接近していく…  この話は全てフィクションです。

【R18】純粋無垢なプリンセスは、婚礼した冷徹と噂される美麗国王に三日三晩の初夜で蕩かされるほど溺愛される

奏音 美都
恋愛
数々の困難を乗り越えて、ようやく誓約の儀を交わしたグレートブルタン国のプリンセスであるルチアとシュタート王国、国王のクロード。 けれど、それぞれの執務に追われ、誓約の儀から二ヶ月経っても夫婦の時間を過ごせずにいた。 そんなある日、ルチアの元にクロードから別邸への招待状が届けられる。そこで三日三晩の甘い蕩かされるような初夜を過ごしながら、クロードの過去を知ることになる。 2人の出会いを描いた作品はこちら 「純粋無垢なプリンセスを野盗から助け出したのは、冷徹と噂される美麗国王でした」https://www.alphapolis.co.jp/novel/702276663/443443630 2人の誓約の儀を描いた作品はこちら 「純粋無垢なプリンセスは、冷徹と噂される美麗国王と誓約の儀を結ぶ」 https://www.alphapolis.co.jp/novel/702276663/183445041

若社長は面倒くさがりやの彼女に恋をする

真矢すみれ
恋愛
祖父の懇願によって、5歳で家業の総合商社を継ぐことを決めた牧村幹人(35歳)。 「せめて結婚相手だけは自由に選ばせてあげたい」という母の気遣いで、社長となった今でも『運命の相手』との出会いを求めて決まった相手を作らずにいた。 そんなある日、幹人は街角で出会い頭にぶつかった相手に一目惚れをする。 幹人に一目惚れされた若園響子(29歳)。 脳外科医として忙しく働く響子は、仕事に追われて恋愛してる暇もなく、嫁に行くより嫁が欲しいくらいの毎日を送っていた。 女子力低め、生活力ギリギリ人間キープの響子は幹人の猛烈アタックに押され気味で……。 ※「12年目の恋物語」のスピンオフ作品です。(単独で問題なく読めます)

散りきらない愛に抱かれて

泉野ジュール
恋愛
 傷心の放浪からひと月ぶりに屋敷へ帰ってきたウィンドハースト伯爵ゴードンは一通の手紙を受け取る。 「君は思う存分、奥方を傷つけただろう。これがわたしの叶わぬ愛への復讐だったとも知らずに──」 不貞の疑いをかけ残酷に傷つけ抱きつぶした妻・オフェーリアは無実だった。しかし、心身ともに深く傷を負ったオフェーリアはすでにゴードンの元を去り、行方をくらましていた。 ゴードンは再び彼女を見つけ、愛を取り戻すことができるのか。

続・上司に恋していいですか?

茜色
恋愛
営業課長、成瀬省吾(なるせ しょうご)が部下の椎名澪(しいな みお)と恋人同士になって早や半年。 会社ではコンビを組んで仕事に励み、休日はふたりきりで甘いひとときを過ごす。そんな充実した日々を送っているのだが、近ごろ澪の様子が少しおかしい。何も話そうとしない恋人の様子が気にかかる省吾だったが、そんな彼にも仕事上で大きな転機が訪れようとしていて・・・。 ☆『上司に恋していいですか?』の続編です。全6話です。前作ラストから半年後を描いた後日談となります。今回は男性側、省吾の視点となっています。 「ムーンライトノベルズ」様にも投稿しています。

極悪家庭教師の溺愛レッスン~悪魔な彼はお隣さん~

恵喜 どうこ
恋愛
「高校合格のお礼をくれない?」 そう言っておねだりしてきたのはお隣の家庭教師のお兄ちゃん。 私よりも10歳上のお兄ちゃんはずっと憧れの人だったんだけど、好きだという告白もないままに男女の関係に発展してしまった私は苦しくて、どうしようもなくて、彼の一挙手一投足にただ振り回されてしまっていた。 葵は私のことを本当はどう思ってるの? 私は葵のことをどう思ってるの? 意地悪なカテキョに翻弄されっぱなし。 こうなったら確かめなくちゃ! 葵の気持ちも、自分の気持ちも! だけど甘い誘惑が多すぎて―― ちょっぴりスパイスをきかせた大人の男と女子高生のラブストーリーです。

処理中です...