花嫁の勘案

はなおくら

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 座ってみる景色はとても綺麗で、花の香りが漂い心地いい気持ちになった。

 気の緩んだ表情をするヴォルス様を見てここに来て良かったと思える。

 下を見れば彼が、ベンチに手を置いている。

 わたしは前を向きながら恐る恐る彼の、小指に自分の小指を触れさせた。

 ビクッとした動きに驚かせてしまったと反省して手を引っ込めた。

 ヴォルス様は前を向いたままなんの反応もない。

 私はまた恐る恐る手を伸ばして、今度は手の甲に手を浮かせて重ねた。

 これだけでトクンと胸がなった気がする。

 手を繋ぐことも自然にできず、緊張で深呼吸を繰り返した。

 そのまま置けばいいがなかなかできない。

 一度落ち着かせようと、手を引こうとした時だった。

 ぐいっと手を握られる。

 顔を上げれば悪戯な顔をしたヴォルス様いた。

「突然なんて…驚きます…。」

 恥ずかしくて、効かない反論をするとヴォルス様は笑った。

「君がなかなか進まないからな。」

「……。」


 そう言われると返し用がない。

 でもこれで小さな一歩かもしれないが、ヴォルス様のリードのおかげで手を繋ぐことができた。

 彼のでは暖かくてホッとする。

 2人で前を見つめたまま、手をぎゅっと握り合った。

「せっかくだから…このままで帰ろう。」

 横を見ると耳を真っ赤に染めるヴォルス様が私の手を引いて歩き出す。

 そんな彼に頼もしさを感じながらわたしは返事の代わりに手を握りしめて彼について行った。

 屋敷に戻ると、執事が驚いた顔をしつつ夕食の席に案内してくれた。

 食事のテーブルは広いため名残惜しいが、手を離そうとした時ヴォルス様はわたしの席に歩いて行った。

 そこで手を離された。

 なんだか、寂しい気持ちになりながら立っていると、ヴォルス様は驚く執事を尻目に椅子を引いてくれた。

「早く座れ。」

 そう言われてわたしは慌てて席に着いたのだ。

「ありがとうございます。」

 彼の変化に不思議に思いつつ、ヴォルス様が席に着くのを待つ。

 食事が運び込まれてわたしは疑問に思う事を声かけた。

「あの…ヴォルス様?」

「なんだ?」

「その…あなたは誰ですか?」

 わたしの問いにびっくりした表情を浮かべるヴォルス様に苦笑いしかない。

「何を言い出すんだ。」

「だって…今までになかった事ばかりでなんだが驚いてしまって…。」

 わたしがそういう時ヴォルス様は呆れたようなため息を吐いた。

「協力すると言っただろう?」

「そうですけど…。」

「何か不満があるのか?」

 わたしは手と首を横に振った。

「いえいえ!とても嬉しいですけどなんだか、急に優しくなった気がして…。」
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