花嫁の勘案

5

　今わたしはヴォルス様の部屋に訪れている。

　ヴォルス様は執務の空き時間に会う事になった。

「それでどうするつもりなんだ？」

　ヴォルス様に問いかけられてわたしは、昨日読んだ小説からヒントをとり紙に書き出していた。

「この順番にやっていこうと思うんです。」

「これはっ…！」

　ヴォルス様は驚きながらも、真剣に紙に書かれた表を見てくれる。

「まずはお出かけをして、手を繋いで歩くことから始めようと思うんです。」

　私はまた紙を取り出して、男女が出かける場所をリストにした。

　場所の説明をしていると、突然ヴォルス様が笑い出した。

　彼の笑った顔を見るのは初めての事で私は恥ずかしくなった。

「…笑わないでください…。」

「済まないっ…！あまりにも必死だからな。」

　その言葉に腹が立って言い返した。

「私は！一生懸命やってるのに！」

　彼の顔を逸らして怒る私に、またくすくすと笑い声が聞こえてきた。

　今のヴォルス様は笑顔を見せてくれるようになり、数日前までの態度とは打って変わって私はびっくりする。

「こんなに笑顔を見せる方なんですね…。」

　そう呟くとどこか気まずげな顔をしながらヴォルス様言った。

「君が面白くてついな。」

「そんなっ…！」

　言い返そうとヴォルス様の方を見つめると、ヴォルス様は出かけ先のリストを持って立ち上がった。

「この紙は預かるよ。こちらで調整をかける事でいいかな？」

「…はい。」

　そう言ってヴォルス様は、おいてあるお茶を一気に飲み干すとそのまま執務室へと戻って行った。

　まだ一回目ではあるが、ヴォルス様と打ち解けられたようでほっこりとした気持ちになった。

　数日後には、執事がヴォルス様とのお出かけの予定表を手渡してきた。

　これはなんだか事務的な気がしたが、わがままは言えない。

　紙に書いてある予定に従って準備を進めたのだった。

　当日、私達は近くにある大きな植物園に来ていた。

　ここではたくさんの植物が栽培されており、奥には大きな花畑が季節ごとに彩られている。

　男女の逢瀬には定番となっているところだった。

　馬車を降りて私達は2人並んで植物を見て回る。

「ここにくるのは久しぶりだな。」

「そうなんですね。とても気持ちいいところです。
　」
　会話はこの前打ち解けたために、スラスラと出るが手を繋ぐタイミングがわからない。

　いつの間にか植物の場所を通り過ぎて、いつの間にか花畑の奥へと来ていた。

　あたりを見回すと花畑の所々に大きな木がありその下に座れるスペースが有る。

　わたし達は空いているスペースに腰掛ける事にした。