花嫁の勘案

はなおくら

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 固まる彼の首に私は手を回して自分から口付けをした。

 びくりと驚からている事に気づいていたが、恥ずかしさを隠すように目を瞑った。

 しばらくして次の事にどうすればいいのかわからず、唇も離せないまま固まってしまった。

 このあとどうすればいいんだろう。

 頭の中が、パニックを起こしている。

 ヴォルス様からもアクションがない。

 自分からしておいてなんだがどうすればいいのかわからないが、一つわかった事はキスがこんなにも気持ちのいいものなのだと実感した。

 小説の主人公はこんな甘い気持ちになっているのかと。

 ヴォルス様とは結婚式でキスを交わしていたが、緊張のあまり記憶にない。

 だからわたしにとってこれが初めてのキスなのだ。

 ずっとこうするわけにもいかず、わたしは勢いで唇を離して、上に羽織っていた上着を素早く脱いだ。

 そして止まらない震えに耐えつつ言った。

「抱いてください…。」

 目の前では、固まるヴォルス様がハッとしたような顔をして言った。

「何してる?…やめろ。」

 そう言って床に落としたわたしの上着を拾い上げてきせようとしてきた。

 それにわたしはかっとなった。

「待ってください。抱いてくださればっ…あなたもわたしを愛してくれるはずですっ…‼︎」

 必死に訴えるわたしにヴォルス様は気のせいか耳が真っ赤になっていた。

「…君にこんな情熱的な面があるとは…。」

「……っ…!」

 はしたないと幻滅されただろうか?

 そんなことを思いつつわたしは、彼の胸に縋りついた。

 ヴォルス様の顔を見つめると彼は息を吐いて言った。

「わかった…君に協力しよう…しかし段階を踏んでからだ。」

「ヴォルス様っ!」

 嬉しくなって彼の体を抱きしめると、彼もぎこちなくではあるがわたしを抱きしめ返してくれた。

 そして、上着を再び着せなおしてくれた。

「とりあえず今日は寝よう。協力する為君のいう通りにしよう…。」

「ありがとうございますっ…!」

 嬉しくなったわたしは、部屋から出ようとした時だった。

「送ろう。」

 ヴォルス様は私の手を握ってくれた。

 彼に部屋に送ってもらうのはこれが初めてなので、胸に温かいものが広がった。

 わたしの部屋の前までつくと、ヴォルス様はわたしの手を離そうとしたので、私は彼の手を掴み言った。

「…お休み…のキスをくれませんか?」

 彼の顔の前で目を閉じて待った。

「…おやすみ。」

 おでこに柔らかな感覚が広がった。

 目を開けるとヴォルス様は背を向けて歩き出していた。

 わたしは今日起こした行動に後悔はなかった。
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