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ハンナとセジャは苗と土の前に立っていた。
土と苗は、誰でも手に入れられるものを用意していた。
ハンナは、見様見真似で苗に手を翳した。
苗は心なしかハンナの治癒魔法で、元気を取り戻した様だが違う様子だった。
「どうすればいいのかしら…。」
その横では、セジャが何冊か古い本を読んでいた。
「何が正解なのか…。」
2人で悪戦苦闘していた。
そんな日々が何日も続いた。
少しの休憩にと、ハンナとセジャは神殿を訪れる事にした。
神殿を案内するという見習いに断りを入れて、2人で女神に祈りを捧げた。
その瞬間、部屋が光に包まれた。
気がつくとあたり一面真っ白な光の空間にあり、隣に並んでいたセジャは、いなかった。
「我が愛し子よ。」
呼ばれた先へ視線を向けると、そこには先ほどまで祈りを捧げていた女神と同じ姿の女人が立っていた。
「ようやく会えましたね。」
「あなたは…。」
その時ハンナの脳内で、とある記憶が鮮明に流れ出した。
それは、自分が当時崇め祈りを捧げていた人物だった。
「………。」
混乱と目の前の女神の姿に、言葉を失った。
女神は、察したように笑みを浮かべると口を開いた。
「本来私には決まった名前はありません。あなた方は私をエイメと呼びますね。」
「…はい…。」
その神々しさに、見惚れて言葉を返すと、また女神エイメは口を開いた。
「あなたが今していることの手助けをしましょう。といってももうすでにあなたに持っている物です。」
「…私に持っている物ですか?」
「えぇ、あなたが持っている物…それに私が力を加えるだけ…。」
女神エイメは、ハンナに近づき優しく抱きしめた。
抱きしめられたハンナは、懐かしいような心地いい涙が流れた。
「ありがとうございます。ですが何故たすけてくださるのですか?」
ハンナの言葉に、女神エイメは悲しげに目を伏せて語り出した。
「私達神族は、あなた方が生きる遥か前にいた存在、役目を終えて旅立つ時残された物たちが神殿を構え私を神格化したのです。」
ハンナは悲しげな表情を浮かべるエイメに耳を傾けた。
「本来人は自分で考え尊重し、平穏を保ち幸せを見つけるものだと私は思います。ですが時代が重ねていくほどに、神殿は都合のいい聖女というものを作り出してしまった。それがどういう事かわかりますか?」
「………。」
ハンナには女神が言いたい事がわかった。
「あなたが察するように、私の代わりを作る事により、人は考えなくなりその者に依存してしまうのです。聖女は生きながらの生贄と言えるでしょう。」
女神は涙を流し、その涙がハンナのおでこに伝って落ちた。
土と苗は、誰でも手に入れられるものを用意していた。
ハンナは、見様見真似で苗に手を翳した。
苗は心なしかハンナの治癒魔法で、元気を取り戻した様だが違う様子だった。
「どうすればいいのかしら…。」
その横では、セジャが何冊か古い本を読んでいた。
「何が正解なのか…。」
2人で悪戦苦闘していた。
そんな日々が何日も続いた。
少しの休憩にと、ハンナとセジャは神殿を訪れる事にした。
神殿を案内するという見習いに断りを入れて、2人で女神に祈りを捧げた。
その瞬間、部屋が光に包まれた。
気がつくとあたり一面真っ白な光の空間にあり、隣に並んでいたセジャは、いなかった。
「我が愛し子よ。」
呼ばれた先へ視線を向けると、そこには先ほどまで祈りを捧げていた女神と同じ姿の女人が立っていた。
「ようやく会えましたね。」
「あなたは…。」
その時ハンナの脳内で、とある記憶が鮮明に流れ出した。
それは、自分が当時崇め祈りを捧げていた人物だった。
「………。」
混乱と目の前の女神の姿に、言葉を失った。
女神は、察したように笑みを浮かべると口を開いた。
「本来私には決まった名前はありません。あなた方は私をエイメと呼びますね。」
「…はい…。」
その神々しさに、見惚れて言葉を返すと、また女神エイメは口を開いた。
「あなたが今していることの手助けをしましょう。といってももうすでにあなたに持っている物です。」
「…私に持っている物ですか?」
「えぇ、あなたが持っている物…それに私が力を加えるだけ…。」
女神エイメは、ハンナに近づき優しく抱きしめた。
抱きしめられたハンナは、懐かしいような心地いい涙が流れた。
「ありがとうございます。ですが何故たすけてくださるのですか?」
ハンナの言葉に、女神エイメは悲しげに目を伏せて語り出した。
「私達神族は、あなた方が生きる遥か前にいた存在、役目を終えて旅立つ時残された物たちが神殿を構え私を神格化したのです。」
ハンナは悲しげな表情を浮かべるエイメに耳を傾けた。
「本来人は自分で考え尊重し、平穏を保ち幸せを見つけるものだと私は思います。ですが時代が重ねていくほどに、神殿は都合のいい聖女というものを作り出してしまった。それがどういう事かわかりますか?」
「………。」
ハンナには女神が言いたい事がわかった。
「あなたが察するように、私の代わりを作る事により、人は考えなくなりその者に依存してしまうのです。聖女は生きながらの生贄と言えるでしょう。」
女神は涙を流し、その涙がハンナのおでこに伝って落ちた。
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