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黙り込むセドリックにハンナは食い入る様に見つめていた。
そんな2人をタイミング悪く見ていた人間に気づかずに。
何か思い出した様に、セドリックは口を開いた。
「古い文献で読んだ事があるんだが…いや…それは…無理だね。」
「なんなの?」
藁にもすがる思い出ハンナはセドリックを凝視した。
「聖女の力で、特別な土と苗を作り出す事が出来るとされているんだ。どんなものでも効くというわけではないが…。」
「そう…。」
ハンナは気落とした。前世の自分であれば作れたかもしれないが、今の力は不安定で確実ではない。
「役に立てなくてすまない。」
「いいえ!あなたが教えてくれなければ解決しなかったわ。ありがとう。」
ハンナが笑って返すとセドリックもお礼を言って笑った。
「それよりも、恋仲のご令嬢とはどうなの?」
ハンナが聞くと、嬉しそうに表情を和らげてセドリックは堰を切ったように話し出した。
「あぁ!毎日が幸せだよ。なんだかね、ようやく会えた様な不思議な感じなんだ。彼女とは何度かデートにいく間ではあるんだが、幸せだよ。」
「そう、あなたが幸せそうで良かったわ。」
彼にはこれからも伝えるつもりはないが、お互い思い人を抱えたまま一生を生き抜いてきた。
彼が、恋人として表情を崩すことなどあり得なかった。
子供ができず、結果近しい親戚が後を継ぐ事になったわけだが、彼は最後まで自分の役目をやり遂げていた。
だからこそ今世は幸せに平穏に生きて欲しいと心の底から思った。
「君も彼といる時がとても幸せそうだね。」
突然そう言われてハンナは聞き返した。
「お似合いの2人だと思うよ。それに君を守ってくれるほど勇気のある人だ。」
「そんな…。」
彼の事を褒められて嬉しくなり、頬を染めてしまう。
「なんだか僕も安心するんだ。幸せになって欲しい。」
「…ありがとう。」
友人からのエールに涙が溢れたハンナは、セドリックに両手を出した。
セドリックもそれに応える様に2人で握手を酌み交わしてお互いの幸せを誓い合った。
いい友人がいて幸せだと実感してその雰囲気に瞳を閉じて過ごしていたその時。
「………何してるんだい?」
顔を上げると、笑顔ではあるが目が全く笑っていないセジャが立っていた。
「セジャ様‼︎」
セジャの視線の先が、ハンナとセドリックが繋がれた手元に目を向けられた。
「これは違うのよ!彼とは友人として話をしていたの!」
「そう…。」
セジャは笑っているが、そこには不機嫌さがまとわりついている様な雰囲気を醸し出していた。
そんな2人をタイミング悪く見ていた人間に気づかずに。
何か思い出した様に、セドリックは口を開いた。
「古い文献で読んだ事があるんだが…いや…それは…無理だね。」
「なんなの?」
藁にもすがる思い出ハンナはセドリックを凝視した。
「聖女の力で、特別な土と苗を作り出す事が出来るとされているんだ。どんなものでも効くというわけではないが…。」
「そう…。」
ハンナは気落とした。前世の自分であれば作れたかもしれないが、今の力は不安定で確実ではない。
「役に立てなくてすまない。」
「いいえ!あなたが教えてくれなければ解決しなかったわ。ありがとう。」
ハンナが笑って返すとセドリックもお礼を言って笑った。
「それよりも、恋仲のご令嬢とはどうなの?」
ハンナが聞くと、嬉しそうに表情を和らげてセドリックは堰を切ったように話し出した。
「あぁ!毎日が幸せだよ。なんだかね、ようやく会えた様な不思議な感じなんだ。彼女とは何度かデートにいく間ではあるんだが、幸せだよ。」
「そう、あなたが幸せそうで良かったわ。」
彼にはこれからも伝えるつもりはないが、お互い思い人を抱えたまま一生を生き抜いてきた。
彼が、恋人として表情を崩すことなどあり得なかった。
子供ができず、結果近しい親戚が後を継ぐ事になったわけだが、彼は最後まで自分の役目をやり遂げていた。
だからこそ今世は幸せに平穏に生きて欲しいと心の底から思った。
「君も彼といる時がとても幸せそうだね。」
突然そう言われてハンナは聞き返した。
「お似合いの2人だと思うよ。それに君を守ってくれるほど勇気のある人だ。」
「そんな…。」
彼の事を褒められて嬉しくなり、頬を染めてしまう。
「なんだか僕も安心するんだ。幸せになって欲しい。」
「…ありがとう。」
友人からのエールに涙が溢れたハンナは、セドリックに両手を出した。
セドリックもそれに応える様に2人で握手を酌み交わしてお互いの幸せを誓い合った。
いい友人がいて幸せだと実感してその雰囲気に瞳を閉じて過ごしていたその時。
「………何してるんだい?」
顔を上げると、笑顔ではあるが目が全く笑っていないセジャが立っていた。
「セジャ様‼︎」
セジャの視線の先が、ハンナとセドリックが繋がれた手元に目を向けられた。
「これは違うのよ!彼とは友人として話をしていたの!」
「そう…。」
セジャは笑っているが、そこには不機嫌さがまとわりついている様な雰囲気を醸し出していた。
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