氷の艶やかな青年

はなおくら

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 セジャとの生活は、満ち足りたほど穏やかで幸せだった。

 心が通じ合ったおかげか、ハンナを閉じ込めることも無くなった。

 まだ外に出ていないが、ハンナはセジャが不安になるならと自ら家にいた。

 でもいつまでもこうしている訳にはいかず、2人で夕食を終えてお茶を飲む時、ハンナは口を開いた。

「セジャ、私達のことなのだけどこれからどうするの?」

「どうするとは?」

 セジャが真摯にこちらを見つめる。

「いつまでもここにいるわけにはいかないわ…。」

「はぁ…。」

 セジャは、一つ息をつき落ち着いて口を開いた。

「そうだな…。でも君は心配ない、こちらも動いているから安心してほしい。」

「そう…でもお願い…私もあなたと乗り越えたいの…。もう離れるなんて絶対に嫌…。」

 ハンナは切実に願った。

 彼の最後を見たからかもしれない。

「わかった…。」

 しばらく黙っていたセジャは、首を縦に振って頷いた。

 それから2人で話をした。

 セジャは、自分の父親から婚約破棄の話を聞かされる少し前から予兆を感じており、密かに幾つもの経営を立ち上げていた。

 この事態の際、父親を隠居させる方向に話を進めるため家臣の支持を集めていたのだという。

 セジャの説明にハンナは目を大きく見開いた。

 あまりにも壮大な話に、ついていくのがやっとであった。

「ごめんなさい…あなたがそこまで考えていたのに…私…。」

「気にしなくていい、これが僕の仕事なんだから、それに君がいるからできた事だよ。」

「ありがとう…。」

「だが…君が協力してくれるのなら心強いな。もし君がよければ僕が持っている施設に時間のある時でいい、奉仕活動として、君の持っている治癒魔法を活かして欲しい。」

「えぇ…私で役に立てる?」

「もちろん。」

「嬉しい…。」

 セジャを抱きしめると、セジャもハンナを抱きしめた。

 記憶が戻った事で、お互いの絆が強くなったように感じた。

 ここを出る事を決めて、セジャの魔法で移動する前、ハンナはセジャの気持ちを確認したくて、魔法をかけようとする彼の手を取った。

「ハンナ?」

「……本当に私でいいの?」

「もちろんだよ。」

 迷わず応えるセジャに、ハンナは握る手を強くしめた。

「来世の記憶を持ってあなたは私を愛してくれた。…でも私はあの時あなたを守れなかった…。それに、あなたのお父様の言っている事は間違っていないの…。」

「…何言ってるの?」

 冷たくなる空気を体に感じながらも口を開いた。

「貴方と夜会で隣にいた女性は、貴方の役に立つ人かもしれない…。でも…もう貴方と離れたくない…。」

 言ってる事があべこべで、彼を困らせてると分かりつつも言葉が止まらない。
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