氷の艶やかな青年

27

　それから2人で現実的な事は考えずに、部屋に篭り愛し合う生活が始まった。

　ふとした時、外の世界がどうなっているのか気になったが、セジャがうまくやっているのか、心配ないとだけハンナは言われていた。

「あなたは大丈夫なのですか?…それにお父様やお母様も心配されてると…。」

　不安げに俯いたハンナにセジャは頭を撫でて落ち着かせる。

「大丈夫だよ。君の両親にはここにいる事、この件には納得してもらっているんだ。」

「そうですか…。」

　そう聞いてホッとした。突然娘がいなくなる事を心配かけてしまった気がしていた為、胸の支えが取れた気がした。

　ふと、ハンナの中で、セジャに対して疑問を感じていた。

　自分自身も自分とは知らないはずの光景を目の当たりにする様になってからセジャの様子がおかしい気がしていた。

　彼と何か関係がある様な気がして、彼の顔を見つめていたが、あまりに嬉しそうにしている彼に、横槍を刺すのも気が引ける為、口を継ぐんだ。

　その夜、またもや夢の中で、あの光景が写し出された。

　幼い男の子と女の子がかけっこをして遊びまわり、笑い声を響かせていた。

「早く！早く！」

「待って…！」

　女の子が前を走りながら後ろの男の子を呼んでいる。

　映像がパッと移り変わり、夜の風景の中、さっき見た男の子と女の子が大きくなったのだろう、男性が差し出す指輪を嬉しそうに受け取る女性がいた。

「結婚してほしい…。」

「もちろんよ。」

　抱きつく2人をハンナは、良かったと微笑んで見ていた。

　その瞬間、大きな火がハンナの前を通り過ぎると、涙を流しながら女性が無理やり連れて行かれた。

「………っ…‼︎」

　女性は、誰かの名前を叫んでいるのか護衛らしき人に連れて行かれた。

　そして真っ暗な中をハンナがポツンと佇んでいた。

　涙が次から次へと流れてくる。

　身体が動けずその場に立ち尽くしていると、上から声が降り注いできた。

　ずっと一緒だった。

　そばにいられて嬉しい。

　離れたくない。

　貴方を思ってる。

　さよなら。

　ありがとう。

　また会えるよね？

　たくさんの声が降り注ぎ、たくさんの記憶が胸に舞い込んだ様で訳がわからなく、追いつかない。

「……ナ…！………ンナ‼︎…………ハンナっ‼︎」

　目が覚めると、そこはいつも過ごしている部屋だった。

　目が覚めると横で、必死の形相でこちらを呼びかけているセジャの姿があった。

　ハンナは自分の身体を見ると、汗がびっしょりかいて、目が泣いたせいなのか、痛かった。

「ハンナ…良かったっ…‼︎」

　抱きしめるセジャにハンナは呟いた。