氷の艶やかな青年

はなおくら

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 セジャに言われたその瞬間、目の前にはセジャがいるはずなのに、とある映像が流れてくる。

 泣いて別れを惜しむ自分らしき女性が、彼の手を取り涙ながらに伝える。

「あなたの側にいることは…もう叶いません…ならばこの想いは決して忘れません…どうか来世…私を見つけてください…。その時には………。」

 次の言葉を聞こうとした瞬間、現実に引き戻された。

「……何これ……?」

 戸惑い動揺する私の目の前で、俯いているセジャは立ち上がると、目を合わせないまま口を開いた。

「……わかりました…あなたがそう言うのなら、こちらにも考えがあります…。」

 ハンナの返事も待たずにセジャは屋敷を後にした。

「おわっ……た……。」

 片割れをなくした様な喪失感しかなかった。

 何も考えられずに、部屋に戻った。

 彼を失った事を忘れたくて、本を読んだりして、現実を忘れようとした。

 その日は遅くまで本を読み続けて明け方近くまでなっていた。

 勢いのままベッドに入ると、疲れていたのか気を失った様に眠りについた。

 そのせいだったのか、誰かが窓の鍵を開けて部屋に入ってくることにも気が付かなかった。

 部屋に入った黒い影は何も言わずに、ハンナをしばらく見つめたまま立っていたが、程なくして身体を抱えて窓の外へと飛んで連れていった。

 ハンナが手を覚ますと、そこには窓もなく扉が一つしかない木造の部屋が見えた。

 辺りを見ればシンプルなベッドに、机と椅子が二つ並べてあるだけの何気ない部屋が見えた。

「ここはどこ?」

 咄嗟のことで驚き恐怖心を抱えたまま辺りを見回した。

 ベッドを降りて、目の前の扉に手を掛けるが、外から鍵がかかっていてこちらからは、入れない事に気がついた。

「あのっ!」

 声をあげてみたり、壁を叩いて見るがなんの反応も無かった。

 途方にくれて、ベッドへと腰掛けた。

 どれくらい時間が過ぎたのかわからないが、唯一のドアから鍵を開けて誰かが入ってきた。

 相手の姿を確認した時、ハンナは安堵した。

「セジャ様…。」

「おはよう、調子の方はどうかな?」

「大丈夫です。それより…ここはどこなのでしょうか?」

 セジャの登場に安堵して、ここの場所を聞くと、かれは妙に嬉しそうにハンナに近づき手の甲にキスした。

「安心して、ここは君と僕の特別な場所だよ。もう誰も、僕たちを邪魔する者はいない…ようやく結ばれるんだ…。」

 ハンナはセジャの瞳を見つめると、彼の様でいて彼ではない様な気がしてしまう。

「セジャ様…しっかりなさってください。それにこんな事をしては…あなたが…。」

 ハンナは心配しての言葉だったのだが、セジャはそれに怒り出した。
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