氷の艶やかな青年

はなおくら

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 部屋にこもっている間、セジャが何度も会いにきてくれていたが、顔を出せずにいた。

 もし今あってしまえば、二度と会えなくなる様な気がして、なかなか勇気が出て来ない。

 長い間待っていて、用事のあるギリギリまで部屋で待っていてくれていると聞いた時には、胸が張り裂けそうになるほど辛く、涙が止まらなかった。

 申し訳なくなり、セジャが帰る頃窓のカーテンに身を隠しながら、彼の姿を見送った。

 セジャもハンナの部屋の窓を見つめていて、バレてはいないだろうと、彼の顔を見つめてまた涙が溢れた。

 それからしばらくして、たくさん泣いてもう涙も枯れた頃、ようやくセジャに会う決心がついた。

 彼に最後に会うのだと、自分の瞳の色と同じ、茶色の慎ましやかなドレスを身に纏い、少し派手なメイクをしてもらった。

 セジャが待っているという部屋のドアをノックすると、返事はなくすぐにドアが開いた。

 そこには、目の下にクマができるほどの真っ青な顔をしたセジャの姿があった。

「ハンナ…!」

 セジャからの抱擁に、安心してしまった。

「セジャ様…とりあえず中に入りましょう。」

 キリッとそう声をかけると、セジャは眉を寄せながらも、ハンナと部屋の中に入った。

 使用人が紅茶を入れ終わり部屋から出ると、セジャは立ち上がりハンナの隣に座った。

「君に会いたかった…。父から婚約破棄の事を聞いて、居ても立っても居られなくてね。君は気にしなくていい…僕がなんとかするから…。」

 優しい言葉に嬉しくなる。

 でも彼に迷惑をかけたくなくて首を振った。

「どうして…。」

「セジャ様、私はあなたにお会いしたのは別れを告げるためです。」

 彼の目を見て言えなかった。

 目を見たら自分の本音が伝わってしまいそうで怖かった。

「本気…?」

「はい。」

 沈黙が続く。

 もうここに、いることがいたたまれないと立ちあがろうとしたその時、ガシッと手を掴まれた。

 その瞬間、無理やり座らされ、両肩に手を置かれた。

 その力は凄まじく痛みが発生した。

「っ…。」

 痛みにハンナが耐えていると、今まで黙っていたセジャが顔を上げた。

 そこには、冷たい眼差しで、どこか悲しげのある瞳でハンナを見ている。

「………君は…また僕を捨てるんだね……あんなに…約束したのに…。」

「えっ…?」

 身に覚えのない事を言われて訳がわからない。

「もう離れないって、辛いのは今世だけ…次こそは…僕のものになると…君は言っていたのに……。忘れた……?」

 セジャを見ると、冷たい眼差しから涙を流していた。
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