氷の艶やかな青年

はなおくら

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 それから、学園では大きな話題となった。

 氷のプリンスが、誰にも気にも止められなかった子爵家の令嬢と婚約したということは真っ先に広がる。

 今まで気にも止められずそれに慣れていたハンナは、落ち着かない気持ちになった。

 誰も声をかけてこないが、姿をみればヒソヒソと話をされる。

 気にしない様にと、なんでもない顔を浮かべて過ごしていると、机の前に三つの影が出た。

 顔を上げると、気に入らないと顔を歪める令嬢が3人立っていた。

「少し付き合ってもらえるかしら?」

 端にいた令嬢に腕を掴まれて、逃げられない状態で、ついていくしかなかった。

 誰もいない裏庭に連れて行かれると、パッと突き飛ばされた。

「この婚約はどういうことなの…?」

 怒りを隠そうともしない。この人は侯爵件の御令嬢だ。

 爵位が上であり、あまりの圧に応えることなどできずにいた。

「それは…。」

「まぁいいわ!本当に気に入らない。セジャ様があんたみたいな子爵家の娘を、婚約者に選ぶなんて、ありえないわ!」

 そういうとハンナの方を足で蹴り飛ばした。

「きゃっ!」

 あまりの痛みに言葉を返さない。

 他の令嬢もこちらに近づいてこようとしたその時だった。

「……何をしている。」

 ぞくっとするほど声色が聞こえた。

 令嬢3人がそーっと振り返ると、そこには怒りで手を振るわせているセジャが立っていた。

「セジャ様!私は貴方が不憫に思ってこの者に、話をしていたのです!」

「不憫…?」

「えぇ…こんななんのとりえもないむ…っ!」

「今何を言おうとしている?」

「あ…そ…それは…。」

 勢いよく話していた令嬢は、セジャの冷ややかな視線に言葉を詰まらせた。

「僕は彼女を愛している。とっととどこかへいけ…二度と姿を見せるな。」

 三人の令嬢はセジャの高圧な視線に怯えてしまいそそくさと逃げて言った。

 その光景を見ていたハンナは痛む肩を抑えた。

「セジャ様…申し訳ありません…。」

 痛みながら謝るハンナにセジャはすぐさま駆け寄った。

「すまない…辛い想いをさせてしまったね。…こんな怪我までさせて…。」

 ハンナの腫れた肩を見て、セジャは抑えが効かなくなったのが、体がメラメラと燃え上がり炎の魔力が暴走していた。

ハンナは慌てて、セジャの頬を包み込んだ。

「セジャ様、落ち着いてください。私は大丈夫ですから!」

 大丈夫だとセジャに笑って見せると、セジャの背中から出た炎をスッと消えていった。

「すまない…医務室に行こう!」

「ありがとうございます。」

ハンナはセジャに抱えられて医務室へと急いだ。

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