わがままな娘

59

　ロットの神妙な顔つきで、セレナを見つめた。

　セレナは一度目を閉じた。目を開いた時には覚悟を決めた。

「…ええ…お願い。」

「わかった。とりあえず座ろう。」

　2人で長椅子に腰掛けた。ロットはセレナの腰に手を回して、彼女の長い髪を触りながら話し出した。

「実はキムの事だ。彼をどうするか君の父上と話し合っていたんだ。…僕としては、このまま息の根を止めるつもりでいたんだが…父上はキャムの事を気にして…悩んでいらっしゃる…。」

　この事にセレナも悩んだ。妹キャムの事は気に入らない事も多くあったが、自分もまた相当な事をしてきたのは事実で、どうしたらいいものか考えた。

　そして頭から思い浮かんだのはキャムに会おうという事だった。

「ロット…私キャムに会ってくるわ。」

　セレナの一言にロットは焦った。

「ダメだ！君に何かあれば…僕は…。」

　そう言ってロットはセレナを抱きしめた。

「お願い…無茶はしない様にするわ…。それに屋敷にはお父様とお母様もいるのよ…？」

「嫌だ…この温もりを手放したくない…。それなら一層このまま奴らを八つ裂きにしてやる…。」

　ロットは不安定な状況になっていた。セレナが何か言いたげに口を開こうとするが、きつく抱きしめられて口を開けない。

　セレナは、声が出せない代わりに、ロットにキスを落とした。

　ロットも驚いたが、次第に身体の力が抜けていった。

　セレナは深く深くキスを落とす。頬を赤く染めて…。

　そして2人は自然と長いソファの上に横たわった。

　お互い存在を確かめるかのようにキスを深くしながら求め合った。

　しばらくして、お互い唇を離し見つめ合った。

「セレナ…。」

「ロット…必ず貴方の元に戻ってきます。何があっても…。」

　セレナの強い意志のこもった瞳に見つめられ、ロットもまた口を開く。

「わかった…そのかわり僕も馬車の中で待たせてくれ…。」

「えぇ…嬉しいわ…。」

　こうして話は纏まった。

　そしてロットは、セレナの顔を片手で包み抱き寄せた。

「ロット…。」

　セレナも、ロットの首に手を回す。

　ロットは頬を赤く染めながら口を開く。

「今日の君は魅力的すぎるよ…。あんな可愛い瞳で見られたら隠し事ができない…。」

　ロットの言葉にセレナは微笑む。余裕のない彼の顔を、自分が出していると思うもたまらなくなる。

　そして2人はまたキスを落としあった。

　お互いの温もりが心地よく、もっともっとと求め合う。

　2人とも熱くなった体を一度離して、ベッドへと移動した。

「ロット…抱いて…。」

「…セレナ…。」