わがままな娘

はなおくら

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 フカフカのベッド、目が覚めた時の感覚だ。
 はっきりとしない視界で少しぼーっとしていたが、目が慣れて部屋を見渡した。

 普通の客間の様な部屋だった。そしてどこか見覚えがあり考えていると、部屋のドアが静かに空いた。

 そこから見えた人物にセレナは目を大きくした。

「………キム様……。」

 目の前にはキムの姿があった。ここは彼の屋敷なのだろう。

 セレナは混乱する頭を落ち着けようと彼を凝視している。キムは何も言わずにセレナを見つめていた。

 セレナがいなくなった屋敷では、大騒ぎになっていた。

 いつまでも出てこないセレナを不審に思ったアンジュが、庭園の中へと入った。

 だがどこを探してもセレナが見つからない、もう一度あたりを見回すとセレナが持ち歩いていた日傘が落ちていた。

 (これは…セレナ様の…。)

 アンジュは急いで屋敷に戻った。

 血相を変えて戻ってきたアンジュに、屋敷の執事が駆け寄り事情を聞くや否や2人でロットの部屋へ急いだ。

「ご主人様!大変です!」

 焦りきっている使用人を前にロットは口を開く。

「どうしたんだ?」

「セレナ様が…セレナ様が‼︎」

 アンジュは泣きながらも日傘をロットに見せた。

「これは…‼︎」

 これだけで、ロットはセレナが連れ出された事に気がついた。

「急ぎ騎士団を集めろ‼︎」

 そういうと執事が一礼して駆け出した。ロットはアンジュを励まし他の使用人に預けた。召集をかけた場所へと向かった。

 そしてセレナは今、キムと対面している。お互い無言が続く中それを破ったのはキムだった。

「久しぶりだね…セレナ…。」

「貴方が何故…私を?」

 なぜ彼が自分をここに連れてきたのか。彼にはキャムがいるはずなのに。

「貴方にはキャムがいるはずでは?」

「………。」

 しばらく黙っていたが、おもむろに口を開いた。

「彼女の事は、婚約者だった君より愛していたよ。君たち姉妹の中であの頃彼女の方が素直で従順だったからね。」

 改めて口に出されると無知だった自分を恥じてしまう。

「だが久々の舞踏会で君を見た時驚いたよ。落ちぶれているだろうと思っていた君が、あの中で一番輝いていた。そして皮肉にも、他の男に微笑みかけ笑っている。一瞬でキャムが霞んで見えたよ。」

 この男は最低だ。セレナはそう思った。自分はロットに愛されて幸せ者なのだと理解する。

「……キャムは今どうしているのですか?」

 その質問をした途端、彼の顔つきが変わった。一瞬でこの人は狂ってると思った。

「彼女はわたしにはもういらない存在だ。だが君は違う、愛されれば愛されるほど輝きを増していく。…なのにあの男が忌々しくも、掻っ攫っていったんだ‼︎」
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