わがままな娘

はなおくら

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 周りの目を気にせず、愛する者を取られまいとする彼女は不器用なりにも美しく見えていた。惚れた弱みというやつなのか。

 だが次の瞬間許せない噂話を耳にする。

「セレナ嬢もお気の毒ね…。」

「まぁ…どうしてなの?」

「知らなくて?結構有名よ?……キム様はセレナ様ではなくその妹キャム様と親密な関係と噂よ…。」

「まぁ……。」

 どこぞの貴婦人が悪気なく、噂を流し込む。怒りが沸々と湧き出る。

 片手に持っていたワインのグラスに日々が入るほど強い力で握りしめている。

 喉から手が出るほど、手に入れたい彼女を奴は大切にするどころか蔑ろにするとは…。

 だがある事を思いついた。セレナには悪いが裁判を開けば彼女は僕のものになる。

 そう考えたロットは、早急にパーティーから帰宅して事を進めた。

 ……そして現在、自分の腕の中で小さく震えながら快感に身を任せている彼女がいる。愛しくてたまらない。

「僕のレディー。僕の者だ。」

 するとセレナはくすっと笑った。ロットの考えている事が分かったからだ。

「貴方はとても独占欲が強いのね?」

「……迷惑かな?」

 不安げな彼の顔を見るとセレナはなお笑ってしまう。

「いいえ。とても嬉しいわ…。もっと貴方を感じたいの…。」

 二人は互いに抱きしめあい、お互いの思いを共有した。

 彼に愛されていると、心が満たされて幸せな気分になる。

 そして二人熱い夜も更けていった。

 あれから結婚式の日取りもどんどん決まっていった。
 色々な準備をされる中、今セレナはアンジュと共にウェディングドレスを作る手配をしていた。

「セレナ様、この様なデザインはどうですか?」

「えぇ、それも素敵ね。…どれも素敵で困るわ。」

 デザイナーから送られてきたノートを見ながらひたすら考える。
 それを見ながらセレナは青いハンカチに家紋の刺繍を施していた。

 ロットの家の伝統に従い、嫁に来た花嫁は、花婿のために青いハンカチに家紋と思いを差し込める。

 そして式当日に、教会の中へ入るのと同時にそのハンカチを持ち入り夫の胸ポケットに入れるのが習わしだった。

 セレナは楽しみだった。その日をまだかまだかと待ち望んでいた。

 そして休憩がてら再びあの黄色い花の庭へと向かった。

 付き人はロットの命令で中には入れないので、入り口に待機している。

 黄色い花の香りを嗅ぎながら、ワクワクが止まらない。
 彼と一日でも早く家族になれる事を夢見ながら瞳を閉じていた。

 そして式の参列者の事を思い出していた。キャムの事だ、両親を呼ぶからには妹も呼ばなければならない。

 痛む胸を抑えながら、他の事に意識を向けようとまた花を愛でた。

 この時、花に夢中になり背後に誰かいたのに気付かなかった。
 顔を上げた時には遅く口元を布で抑えられた。だが息をした時なにかを嗅いでしまったのか意識がそこで途切れてしまったのだった。

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