わがままな娘

はなおくら

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 朝の仕事を終えてロットは、急足でセレナの部屋へと向かう。

 途中の廊下で考えていた。泣きながら拒む彼女を余計に傷つけた。

 しかし嫌われても、気持ちを抑えることが出来ずに強引にキスをした。

 彼女も抵抗を見せながらも応じた為、期待してしまう。またそんな姿を見たいとセレナの部屋の前に着いた。

 中に入ると、セレナはおらず、使用人が立っていた。

「…彼女はどこにいった?」

 セレナが移動する際ついて回る使用人がいた為、低い声で問う。

 使用人達はビクッとしたが、恐る恐る答えた。

「庭園に…向かわれました…。私達にはここにいる様に言われて…。」

 そう聞いたロットは使用人達を、冷静に叱った。

「私はお前達に彼女の付き人兼護衛として頼んだんだ。今日は多めに見るが次からは、たとえ彼女がいいと言ってもついていく様に…。」

 使用人は下を向いて、皆で頭を下げた。その様子を横目にロットは庭園へと向かった。

 彼女は薔薇が好きだからそこにいるだろうと思ったが、どこにもいなかった。

 ロットは焦った。

(まさか…出て行ってしまったのか‼︎)

 すぐに探し出そうと袴を返した時、後ろからアンジュに声をかけられた。

「ご主人様!こちらです。」

「アンジュ?どうした?それよりセレナがいないんだ!」

 焦るロットにアンジュが口を開いた。

「セレナ様の所へお連れします。」

「どこにいるのかしってるのか⁈」

 せがむロットにアンジュは、ゆっくりと庭の奥へと向かって行った。

「…ここは…。」

 立ち止まったところは、ロットのよく知る場所だった。

 アンジュは入り口に指を指す。

「私はここでお待ちしています。いってらっしゃいませ。」

 アンジュに見送られ中へと入っていく。

 ここはロットがセレナにだけ教えた秘密の場所。使用人には掃除や花の世話以外は立ち入り禁止にしていたところだ。

 彼女との思い出の場所だからだ。彼女は忘れているのだろう…。

 諦めにも似た気持ちで、歩いているとセレナが横たわっているのを見つけた。

 その光景は、聖女の様だった。黄色い花の絨毯の上にのそべり、日の光が彼女だけを照らしている。

 このままでは、雲の上の天使の世界へと行ってしまいそうな気になってしまう。

 見惚れていたが、一歩一歩セレナに近づく。見下ろすと彼女は眠っていた。

 その横にそっと座り、しばらく顔を眺めた。

 時が止まった様な、懐かしい気持ちになる。ロットの目には幼いセレナがここを走り回りながら自分の名前を呼ぶ。

 手を伸ばすと、幼い彼女は、花を摘んでこちらへと駆け寄ってくる。
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