わがままな娘

はなおくら

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「ロット、明日の朝にこれを読んでほしいの。」

 渡された手紙を受け取る。

「…これは?」

「明日のお楽しみ、期待しててほしいの。」

 そう言ってセレナは揚々と笑うと布団に潜った。ロットも楽しそうにしているセレナを見て、仕方ないと言った気持ちで眠りについた。

 翌朝、ロットが目を覚ますと隣にセレナの姿が見えなかった。

 一度どうしたのかと焦ったが、昨日言われた通り手紙の封を切った。

“おはよう。よく眠れた?私が隣にいなくて焦ったんじゃない?実は貴方にお願いがあるの、内容は朝食を済ませたらわかるわ。”

 どういうことなのだろうと悩んだロットだったが、とりあえずとベッドから降りて身支度を済ませ朝食を取った。

 その間も屋敷の者たちは何も言う事もなかった。

 朝食を終えた頃、執事から今日の予定を聞かされた。

「おはようございます。今日から5日間の予定を全てキャンセルにしております。」

「どう言う事だ?」

 ロットの視線に執事はたじろいだが、言葉を返す。

「セレナ様から頼み事との事です。業務のことはご安心ください。全てこちらで済ませております。」

「…そうか、わかった。」

 ロットは、執事の仕事にも驚きだがまさか用事がセレナからの頼みに何かワクワクした気になっていた。

 それから執事が言葉を続ける。

「ご主人様、これからご準備ください。荷物等は馬車に積んでおりますので、乗車お願いします。」

 ロットは急ぎ準備を済ませ、馬車に乗り込んだ、そして動き出した。

 目の前の執事を、見るが何も言わずに澄ましした顔をしている。

 どれくらいそうしていたか、馬車が止まり外を見ると、セレナと共に過ごした別荘だった。

 御者達が、ズンズンと中に入り荷物を片すと素早く馬車に待機した。

 その速さに唖然としていると、執事が口を開いた。

「ご主人様、私達はこれで…。中でセレナ様がお待ちです。」

 セレナと聞くと空いていた口が閉じ嬉しくなった。

 馬車が動き出すのを後目に、屋内へと入っていった。

 すると中にはお腹をそそられる匂いがする。

 奥の部屋の机を見ると大きなビーフステーキに青物のサラダ、ホタテのスープが並べられていた。

 見栄えはどこか歪ではあるが、ロットのお腹をくすぐるものだった。

 そして奥には、髪を簡単に上に一つ結ばれており、紺色のワンピースに白いエプロン姿のセレナの後ろ姿があった。

 ロットは思わず見惚れていた。彼女はいつも胸元の空いた派手なドレスを好んできていた。しかし今は、素朴な動きやすい姿がいつもと違った魅力を出していた。
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