わがままな娘

はなおくら

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「セレナ…。」

 ロットはセレナを見つめ続けた。

「僕は両親と接した事が数えるくらいしかないんだ。父親は仕事人間で、母親は父親をこよなく愛し父しか見えていないような人だった。よく父親の近くに居るだけで嫌な顔をされたよ…。」

 当時のことを思い出しているのか遠い目をして語る。

「最初は与えられたことをこなしていけば認めてもらえるかもしれない。そう思って頑張っていたんだ。だけど頑張っても頑張っても認められず、何もかもが嫌になった。いつのまにか両親に期待を持つことをやめたんだ。そんな時だった。君にであったのは。」

 セレナも彼との出会いを思い出していた。幼少期のロットは、目に光もなくどこか不気味な印象だった。それが家の事で関係しているのだと理解した。

 だが当時の自分も相当なわがままで、気に入らなければ周りに当たり散らす始末だった。同じ事を考えていたのかロットが笑った。

「君の第一印象は驚きだったよ。両親の止めも聞かずに、自分の気の向くままに生きていた。新鮮だった。」

 ロットはそう言うが当時のことを思い返しても顔が赤くなるだけだ。

「ロット…恥ずかしい…。」

「照れるところもかわいいね。」

 セレナのおでこにキスをして暖かい瞳で見つめる。

「そして君を知れば知るほど虜になったよ。君は自分を傲慢な人間だと言うが、私からしてみればそんな事思わないよ。君は優しく熱い心の女性だ。だからこそ曲がったことが嫌いなだけだろ?」

 セレナは嬉しかった。嘘でも自分をここまで評価してくれる人間は今までいただろうかと。

 彼は人を見抜く力があり、人を生かせる人間なんだと純粋にセレナは思った。

「嬉しいわ…ロット。でも私は優しい人間じゃないわ。貴方との約束を忘れて違う男の元へ行こうとしてたんだもの。」

「いや君は素晴らしい人間だ。それに幼い頃の約束を破られたと思うかも知れないが、今思えば良かったんだよ。今君が僕を見てくれる。この上なく幸せだよ。」

「ありがとう…。」

 2人は互いを抱きしめ体温を感じあった。

 そしてセレナは小指をロットの前に出した。

 ロットが不思議に小指を眺めているとセレナは真面目な顔になり言った。

「家族というものはどんな事なのか私もわかって無いと思う。でもこれから2人で幸せな家族を築きましょう?そのためにもお互いを大切に思い会う気持ちを忘れないように約束をしましょう。もし忘れてしまったなら何度も小指を絡ませて誓いましょう?」

「…あぁ…僕も誓う。幸せな家族を2人で見つけよう。」

 そう言って指の約束を交わしたのだった。


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