わがままな娘

27

　話を逸らして再び口を開いたキャムにセレナは嫌気がさしてきた。

「いい加減になさい。それに今私はロット様の婚約者なのよ?少しは礼儀を弁えて下さいな。」

　あくまで冷静に落ち着いて返事を返した。

　この一言で周りの者達はセレナを見る目が変わり賛同した。

「今は異なりますが、久しぶりの姉妹に会えてよかったです。ではこれで…。」

　そう言ってセレナが礼をするとロット合わせて頭を下げて去った。

　そしてバルコニーに向かう。セレナはロットに申し訳ない事をしたと思い謝罪した。

「ロット…ごめんなさい…。私の家の事で嫌な気にさせてしまつまたわね…。」

　そう言うとロットは首を振る。

「君が謝る事じゃ無いよ。例に反した事を受けたのは君なんだから、自分を責めないで。」

　そう言って抱き寄せられる。彼に抱き寄せられるとどこかホッとして自分の居場所に変えれたようなきになる。

「ありがとう…ロット。大好きよ…。」

「いいんだ。何か飲み物をとってくるよ。」

「えぇ…ありがとう。」

「まってて…。」

　そう言って会場に入っていく。セレナはバルコニーから空を眺めてロットの帰りを待っていた。

「やぁ…セレナ。」

　そう声をかけられ振り向くとキムの姿があった。

　セレナは気が進まなかったが、顔に笑顔を貼り付け言った。

「ご無沙汰しております。その節はどうも…。」

　そう言ってドレスの裾を上げてお辞儀すると、上から声が聞こえた。

「そんな他人行儀にしないでくれ。」

「……恐れ入ります。」

　セレナからしてみれば、今更なんのようなのかと思っていると、ロットは口を開いた。

「今日の君は見違えるほど素敵だね。淑女の鏡のようだ。」

　その言葉を無視して言った。

「キム様、私の立場でなんですが義妹との婚約おめでとうござます。」

　そう言うと彼は強引に話に入ってきた。

「君は美しい…。」

　そう言って腰に手を回してくる。

「やめて下さい‼︎」

　彼の胸を無理やり押そうとするがびくともせず腕の中に収まってしまう。

　セレナは体がゾクっとした。いっときも早く抜け出して、ロットの元へ行きたいと抵抗するが、なかなか抜け出せない。

　困り果てていると、目の前がさっと動いた。

　気づけば誰かの腕の中にいた。だが考えることもなく肌が記憶している。なによりも愛おしい人の所に戻れたと。

「どう言うつもりだ?セレナは私の婚約者ですよ?」

　ロットは怒っていた。今まで聞いたことがないほど低い声で、殺気を纏っている。

　これにはキムも澱んでいた。ロットの視線が耐えられなかったのか、何も言わずに去っていった。