わがままな娘

はなおくら

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「君は完璧だ。この雰囲気の中堂々と笑みを浮かべているんだ。…自信を持って。」

 セレナに励ましの言葉を投げかけてきた。

 ロットの言葉に力が湧いてくるようだった。不思議と何も気にならなくなった。

「ありがとうロット…貴方はすごいわ!」

 小声でそう返すと、ロットは笑みを深めて頷いた。

 すると、見知らぬ紳士が声をかけてきた。

「これはこれは伯爵!久しぶりだね…君とはどれくらいぶりだろうな…。」

「そうですね…もう一年はたつでしょうか?」

 セレナは感心した。さっきまで自分と話していたのに、知人が来た瞬間さっと態度を変えて笑顔を浮かべて立ち回っていた。

 それから簡単に挨拶を済ませると知人は去っていった。

「貴方とさすがね…。」

「慣れだよ。君だって慣れたものだったじゃないか。」

 ロットに褒められると、悪い気がしなかった。

 そうして楽しく談笑していた時、ロットの顔が強張った。

「どうしたの?」

 セレナがロットの視線の先に目をやると、元婚約者のキムとキャムが腕を組んでこちらに向かっていた。

 驚きロットに腕を絡めると、ぎゅっとしがみついた。

 彼も寄り添いながら大丈夫だと言わんばかりに肩に力を入れた。

「お姉様、お久しぶりです。お元気そうで何よりで…。」

「………。」

 控えめの笑顔を浮かべながら声をかけてくるキャムとは対象に、キムは何も言わずにセレナを見つめていた。

 キムの視線に嫌悪感を感じながらも、言葉を返した。

「えぇ…本当に。」

 するとキャムは突然目に涙を浮かべだす。

「私…お姉様の事が心配で夜も寝れなかったのです。どこで何をしているのかもお父様やお母様に聞いても分からないと仰るし…。」

 キャムの言葉に聞き耳を立てていた周りの紳士や淑女は、彼女を優しい人間と捉えたのだろう。その分セレナに厳しい目が行く。

 その視線を無視して聞いているとキャムは続けた。

「ロット様もひどいですわ。私たち幼なじみなのに、お姉さまの居場所も教えてくださらないなんて…。」

 あくまで悪気が無いかのように、ロットを非難した。

 これにはセレナも怒りを覚えた。しかしここで怒り出しては昔の自分と同じだ。

 グッと堪えて何も言わなかった。しかしそれをロットは冷静な言葉で返した。

「ご心配と迷惑をかけたね。しかしおかしいな?君のご両親にはセレナの居所はちゃんと伝えたはずなのだが…」

 そう言った後、セレナに優しい笑みを浮かべる。両親が自分の居場所を知っている事を知らなかったがセレナも微笑み返した。

 すると聖女のような笑みを浮かべていたキャムの表情が一気に変わり出した。

「そうでしたのね、それにしても婚約関係にあったキム様にまで、何も無いなんて少し薄情すぎませんか?」
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