わがままな娘

15

「君は魅力的だ。社交会では誰もが君に釘付けだった。知ってる？君が家を破門された時、男たちは皆、君を取り込もうと躍起になってたんだよ。僕は君がそんな奴らの中に入るなんて耐えられないよ。」

　ロットは長々と話す。セレナは気持ちは胸が熱くなるほど嬉しかったが、それでも怒りを抑えられなかった。

「貴方自分が何を言ってるかわかってるの?……お相手がいないならまだしも…貴方は責任ある立場にあるのよ?」

「わかっているさ…だからこそ彼女とは婚約を解消した。」

　セレナは驚いた。ロットは昨日のうちに手続きを済ませてしまっていたが、セレナは認められるわけが無かった。

「…何をしているの?貴方それがどう言う結果を生むか変わっているでしょう?」

「そんな事君は気にする必要ないんだ！…セレナ…私と一緒になって欲しい…。君の事をずっと見てきた…これからも共にいたい。」

　ロットの言葉に、セレナは頭を抱えていた。自分と共にいては彼のためにならない。

　セレナはそう思い、口を開いた。

「…一週間…待ってください…。」

　セレナが頼むと、ロットは眉間に皺を寄せたが渋々頷いた。

「今まで我慢してきたんだ。嬉しい知らせを待ってる。」

　それからロットはセレナを一日中部屋から出さずにいた。

　身の回りのことはアンジュではない使用人に任せて、夜は共に食事をして、ベッドに入るとセレナを優しく抱いた。

　セレナはその優しさが、嬉しくもあり苦しくもあった。だが抱かれる喜びを隠そうともがいていた。

　そして返事をする三日前、近くにいた使用人にセレナは声を掛けた。

「そこの貴方、アンジュを呼んでもらえないかしら？」

　すると使用人は言いづらそうに言った。

「ロット様からきつく言われておりますので…。」

「…そう…。」

　セレナは考えた。どうしたらアンジュに会えるだろうか…。そして思いついたのは…。

「裁縫をしたいの。この屋敷で1番上手な人を、連れてきてちょうだい。」

　使用人は困った顔をしながらも承諾した。

　そしてしばらくして戸が開かれた。目の前にアンジュが涙を浮かべて立っていた。

「アンジュ!」

　顔を見ると安心して、セレナはアンジュを抱きしめて泣いた。

　アンジュはしばらくセレナの頭を優しく撫でて落ち着くのを待った。

　2人落ち着くとソファに座り話し出した。最初に口を開いたのはアンジュだった。

「セレナ様…ご主人様の事恨まないでやってください。あの方は、先代の奥様によく似ておいでで、1人の者を愛すると徹底するところがあるのです。」