わがままな娘

はなおくら

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 セレナは、シャンノンの腕を組み庭園を共に歩いていた。

 途中近くの使用人に上着を預けた。上着を脱いだ姿のセレナを見ると、シャンノンは視線を逸らした。

 その様子にセレナは安心した。そしてわざと胸を押し付けるようにして、シャンノンの腕に手を絡ませた。

「シャンノン様はリリス様とどう言うご関係ですの?」

 二人の間にやきもちを焼いたフリをして聞く。しかしシャンノンは全てお見通しだった。

「セレナ様…こんな事もうやめましょう…貴方の目的は分かっています。貴方はこんな事をするような方ではない。」

 セレナは驚いたがやめられない、ロットの為に婚約を失敗させたくなかった。

「何をおっしゃってるの?私はシャンノン様が気になりますの…。」

 そう言って恥じらったフリをしたがシャンノンには通用しなかった。

「もうやめてください。そんな事をされても胸が痛むだけです…。」

 そうまで言われると、何もかも面倒くさくなりセレナは観念した。

「分かりましたわ…シャンノン様は鋭いですね…。」

 セレナははぁと息を吐いた。そしてまた口を開いた。

「…なら仕返しに…。シャンノン様もリリス様を思われているのでは?」

 するとシャンノンも観念したかのように言った。

「えぇ…彼女を愛してる。ですが私は隣に寄りそうだけでいいのです…彼女が幸せならそれで…。」

「貴方は素敵な方ですね。」

 本心だった。好きな相手の幸せを願って自分を犠牲にできることは中々できることではない。

「この件では何もできませんが、シャンノ様が幸せになる事を願っております。」

 そう言ってセレナが微笑むとシャンノンも微笑み笑った。

 そして二人でただの友人として話して歩いていた時、セレナが段差につまずき転けそうになったのをシャンノンが支えた。

 二人は淡々としており、何もなかったように笑い合っていた。

 しかしタイミングが悪かった。ロットとリリスが二人の元に歩いている時に、その光景を見ていた。

ロットとリリスの視線からからは、二人がキスをして笑い合っている風に写っていた。

 リリスは目を見開いたまま固まっていたが、ロットは歩き出すとシャンノンからセレナを引き剥がし抱きしめた。

「……今日はここで失礼する…。」

 ロットはシャンノンを睨むと、戸惑うセレナの手を取り歩き出した。

 セレナは二人に挨拶する間もなく連れて行かれ馬車に乗せられた。

 馬車が動き出してもロットは何も言わない。セレナは何がなんだか分からずに。

「…ロット?」

 と声をかけても返答がなく。ロットの屋敷まで無言のままだった。
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