わがままな娘

はなおくら

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 ロットの独占的な発言でなぜか胸が熱くなった。しかしセレナにもプライドがあった。

 ここで彼の思うようにはなりたくない。その一心でロットを突き飛ばした。

「私には肩書きはもうないけれど、易々と抱けるだなんて思わないで頂戴。」

 冷たい瞳でロットを睨みつけると、ロットはやれやれと意にも返してない様子で立ち上がった。

「悪かった…セレナ…。気を取り直してお茶にしよう。」

 そう言って席につきお茶を飲み始めた。二人とも建前は冷静にいたが、本音は気が気ではなかった。

 それから数日、セレナは毎日買い物と言って街に出かけて欲しいものを山ほど買ってきていた。

 アンジュはこの事に頭を抱えていた。ロットは構わないと言うがこのままではいけないと。

 どうしたものかと悩んだ末にたどり着いたのは、セレナに得意の手芸を教えようと思い至った。

「失礼しますセレナ様。今日はどのようなご予定にするようで?」

「そうね…また買い物にでも出かけようかしら?やることもないしね…。」

「そう毎日買い物に行ってしまうと飽きが来てしまうでしょう…。今日は、買うのではなく自分の手で作ってみるのはいかがですか?」

 アンジュの言葉に、セレナは面倒だと感じたが、今まで何か自分でした事があったかと考えた時に思い当たらなかった。

 ならば一度くらいやってみてもいいなと考えていた。

「わかったわ。何をすればいいかしら?」

 するとアンジュの顔がパッと華やいだ。セレナは訝しい顔で見つめる。

 その視線を無視して、アンジュが出したのは刺繍だった。

「ではセレナ様…今回はこの布にお好きな花を刺してみましょう!」

 そういうと、セレナに道具を渡して共に布に糸を通していった。

 セレナは夢中になった。いざやってみると時間も忘れるほどだ。

「これは楽しいわね…。」

「よかったです。セレナ様は筋がいいですね。一回でこんなにもすいすいとできるなんて…。」

 セレナは褒められるとなんだか暖かい気持ちになった。

 それから何日も部屋にこもって刺繍に没頭した。

 午後になると、ロットが必ず部屋を訪れてくる。

 セレナの口からは刺繍がいかに楽しいのかわかるほど満面の笑みでロットに話して聞かせた。

 ロットは、涙が出るほど喜んだ。前までは、自分が部屋に向かえば何も発さず不機嫌な顔を見せていたが、今では嘘のように明るい笑顔を見せてくれる。

「ロット?聞いてるの?…それでね………。」

 セレナの話に耳を傾ける。

「君の生き生きした姿を見れて嬉しいよ
。」
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