わがままな娘

はなおくら

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 ロットが部屋を出てしばらくして、近くのソファーに腰掛けた。

 ロットが何を考えているかわからないが、何もせずに今まで通り過ごせるのだから、よしとしよう。

 そう考えていた矢先、ドアの外から声がした。

「セレナ様、今日からお世話になるメイドでございます。」

 しわがれた声が聞こえてきた。

 怪しく思ったが、自分付きの使用人ならこき使ってやろうと顔を不敵な笑みを浮かべて姿を待った。

 すると部屋に入ってきたのは、腰がやや曲がった老女だった。そして杖をついていた。

 これにはセレナも呆気に取られてしまった。すると老女は口を開いた。

「今日からお世話させていただくアンジュと申します。」

 アンジュは、雰囲気が柔らかく温厚な人柄にセレナは捉えた。

「そう…よろしく…。でももう少し若い人がいいわね。だから下がっていいわよ!」

 セレナは、ロットにイラつきを覚えていた。よりにもよって何故老女なのか。

 すると、今までお辞儀をしていたアンジュの目の色が変わった。

「ひとつ言わせていただきます。貴方は現在この家のゲストです。どんなご要望にもお応えしますが、礼儀は大切にしていただきますよう。」

「なっ…何をっ‼︎」

 セレナが怒鳴り声をあげようとするとアンジュはかぶせて続けた。

「ご主人様からは、とても大切なゲストとして、信頼をおける私を選んでくださいました。どうか慣れてくださいませ。」

 アンジュに言葉を凌駕され、返す言葉もなかった。

「わかったわ。ここに滞在してる間よろしくね…。」

 苦々しげに答えると、アンジュは満面の笑みを浮かべて言った。

「はい!誠心誠意お支えいたしますとも…‼︎」

 こうしてここでの生活が始まった。ここに滞在しても何もやる事が無く、街へと買い物に行こうとアンジュに伝え、共に街を出た。

 そこには、何故かロットも同行していた。

「なんであんたがくるのよ?」

「君が出かけると聞いてね。」

 セレナは不満満々だったが、首を横に向け言った。

「今日は身の回りのものを買いたいの…時間かかるわよ?」

「いいよそのつもりだ。」

 セレナが、素っ気なくはいうのも気にしないかのように、ロットは、嬉しそうな顔を浮かべて答える。

 その様子を、控えていたアンジュはほっと安心した顔をしていたが、二人は気付いていなかった。

 店に着き、中に入るとセレナは瞳を輝かせた。どれも目移りしてしまうほどのドレスに満たされた気持ちになった。

「君はどんなものが好みなのかな?」

「…そうね。こう言ったものをよく着るわ。」
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