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「ツーリー!」

 彼の執務室に入り、彼の元へ駆け寄った。

 ツーリーも嬉しそうにわたしの体を抱きしめてくれる。

「ナナ、式の準備もあるのに一緒に入れなくてすまないな…。」

 申し訳なさそうにしている彼が可愛らしく思えて首を横に振った。

「気にしないで。…あのね、あなたに聞きたいことがあるの。」

「聞きたい事?」

 ツーリーはわたしをソファに座らせるとその横に座ってわたしの手を握った。

「何かあったのか?」

 心配そうに見つめられ、わたしは申し訳ない気持ちになりつつ口を開いた。

「あのね…スノア令嬢の件で話があるの…。」

「…彼女に何かされたのか?」

 鋭い目つきに変わったツーリーに慌てて否定した。

「違うわ!わたしは突然耳と目が聞こえず見えなくなって、実際スノア令嬢に何をされたのかはっきりと見ていないから…あの時何があったのか知りたいの…。それにあれから彼女の姿を見ていないわ。会いたいわけじゃないけど何があったか知りたいの!」

 ツーリーをまっすぐ見つめて願った。

 ツーリーは言うつもりはなかったのかもしれないが、わたしのお願いに口を開いた。

「先に言っておくと僕は君が傷つく姿は見たくないんだ。…けど君が知りたいことを隠すのも気が引ける。辛かったら言って欲しい。」

 彼の本音にわたしは頷いた。

 ツーリーもこの話をするのは嫌だと思いつつも私と分かち合おうとしてくれる姿勢が嬉しかった。

 それからツーリーは話し始めた。

 スノア令嬢に毒薬を飲まされた私をすぐツーリーが見つけ出してくれていた。

 その横でスノア令嬢が真っ青な顔で私の心配をしていた為ツーリーは疑うことをやめた。

 するとスノア令嬢が連れていた護衛が近くの医師の所まで連れて行くと言うのを聞いて断り自分の屋敷に連れ帰ろうとした時、タイミング悪く国王陛下に呼ばれてしまい、彼女に任せてしまったのだと言う。

 戻ってみれば私の行方もスノア令嬢の行方も分からなくなってしまい、騙されていたのに気がついたとのことだった。

「すまなかった…疑わなければならないのに隙を見せてしまった…。」

 その時の後悔を思い出すように彼は項垂れてしまった。

 わたしはそんな彼の頭を優しく撫でた。

 彼は少し笑って話を続けた。

 わたしをすぐさま捜索していた時、スノア令嬢の母がわたしの居場所を教えてくれたのだと言う。

 彼女の母は、娘を許して欲しいと頼んだようだがツーリーはそれを断り、今スノア令嬢とその父親は牢獄に入れられているとの事だった。
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