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名前は教えてくれなかったが、その人の居所を聞いた。
準備ができたら行くとだけ伝えてその人と別れた。
帰りの馬車に乗りツーリーが待っている屋敷に戻った。
問題はこれからだった。
ツーリーにこの事を話してどんな顔をするのか不安だった。
今も馬車を降りる私を今か今かと待ち構えていた様子でわたしの手を握り馬車から降ろしてくれた。
馬車を降り切るとツーリーは私を抱き寄せた。
彼が心配してくれていたのだと伺える。
「ただいま、ツーリー。」
“おかえり”
わたしの手のひらに指をなぞって返してくれる。
とりあえずツーリーと屋敷に戻り食事を済ませて今日あった事を話す事にした。
ツーリーもソワソワした様子で話を聞きたがっている。
「町は付添が説明してくれたから楽しめたわ。」
“それはよかった。”
「それでね、今日町で知り合った方が不思議な力をもってたの?」
ツーリーはわたしの手のひらに指を滑らす。
“どういう事?”
「男性の方なんだけど、その人にわたしの耳と目の事を話したら、突然頭に手を置いたの。その瞬間、相手の声が聞こえる様になったの。」
ツーリーはわたしの話を聞いてる様子だった。
「それで、わたしのことを治せないかと頼んだらできると言ってくれたの。」
するとまたツーリーはわたしの手のひらに書き出す。
“すごい!それならすぐにでも行こう!”
「それがね…。」
乗り気のツーリーにはわたしは言いにくい気持ちを押し殺して話した。
「その方がいうには呼吸と気で治すため、部屋にこもって意識を集中させないといけないみたいなの…。」
わたしがそう言い切るとツーリーは固まった。
“ならしばらく会えなくなるの?”
わたしが頷くとツーリーはわたしを抱き寄せた。
“君が治るのはすごく嬉しい。でも離れ離れになるなんて耐えれないよ…。”
惜しんでくれる彼の様子にわたしは躊躇いそうになる。
でも今行かなければこのまま目の前にいる大切な人を一生見ることも聞くこともできなくなってしまう。
それだけはわたしも耐えられない。
「ごめんね。でもわたしあなたをもう一度この目で見て声が聞きたい。」
こちらを見ている彼の顔を手で顔の一つ一つの形を確認しながら自分の決心を伝えた。
“わかった。”
ツーリーもわたしの気持ちを汲んでくれたのだろう。
「ありがとう。」
“ただし、必ず手紙を書いて欲しい。あと会える時には連絡が欲しい。”
わたしも同じつもりだったので頷いた。
「もちろんよ!絶対忘れない。」
そして私は初めて挑戦をする事になった。
準備ができたら行くとだけ伝えてその人と別れた。
帰りの馬車に乗りツーリーが待っている屋敷に戻った。
問題はこれからだった。
ツーリーにこの事を話してどんな顔をするのか不安だった。
今も馬車を降りる私を今か今かと待ち構えていた様子でわたしの手を握り馬車から降ろしてくれた。
馬車を降り切るとツーリーは私を抱き寄せた。
彼が心配してくれていたのだと伺える。
「ただいま、ツーリー。」
“おかえり”
わたしの手のひらに指をなぞって返してくれる。
とりあえずツーリーと屋敷に戻り食事を済ませて今日あった事を話す事にした。
ツーリーもソワソワした様子で話を聞きたがっている。
「町は付添が説明してくれたから楽しめたわ。」
“それはよかった。”
「それでね、今日町で知り合った方が不思議な力をもってたの?」
ツーリーはわたしの手のひらに指を滑らす。
“どういう事?”
「男性の方なんだけど、その人にわたしの耳と目の事を話したら、突然頭に手を置いたの。その瞬間、相手の声が聞こえる様になったの。」
ツーリーはわたしの話を聞いてる様子だった。
「それで、わたしのことを治せないかと頼んだらできると言ってくれたの。」
するとまたツーリーはわたしの手のひらに書き出す。
“すごい!それならすぐにでも行こう!”
「それがね…。」
乗り気のツーリーにはわたしは言いにくい気持ちを押し殺して話した。
「その方がいうには呼吸と気で治すため、部屋にこもって意識を集中させないといけないみたいなの…。」
わたしがそう言い切るとツーリーは固まった。
“ならしばらく会えなくなるの?”
わたしが頷くとツーリーはわたしを抱き寄せた。
“君が治るのはすごく嬉しい。でも離れ離れになるなんて耐えれないよ…。”
惜しんでくれる彼の様子にわたしは躊躇いそうになる。
でも今行かなければこのまま目の前にいる大切な人を一生見ることも聞くこともできなくなってしまう。
それだけはわたしも耐えられない。
「ごめんね。でもわたしあなたをもう一度この目で見て声が聞きたい。」
こちらを見ている彼の顔を手で顔の一つ一つの形を確認しながら自分の決心を伝えた。
“わかった。”
ツーリーもわたしの気持ちを汲んでくれたのだろう。
「ありがとう。」
“ただし、必ず手紙を書いて欲しい。あと会える時には連絡が欲しい。”
わたしも同じつもりだったので頷いた。
「もちろんよ!絶対忘れない。」
そして私は初めて挑戦をする事になった。
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