梅雨の様なこんな雨の日に

はなおくら

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「君が一生懸命生きてきた証だよ。」

「ツーリー…ありがとう。」

 準備も終わりとうとう婚約披露宴の日がやってきた。

 彼とお揃いのドレスに身を包み、彼の腕に手を回した。

「この日をどれだけ待ったか…。」

 感極まるツーリーにわたしは笑った。

「でも2回目よ?」

「だからだよ。」

 ツーリーはわたしを抱きしめた。

「もう離れない…君と生きていきたい。」

「わたしもよ。」

 幸せな空間に身を包んだ。

 そして私たちは、たくさんの人が集まるホールへと足を踏み入れた。

 顔は笑顔ではあるが目からは、好奇なものを見るような者もいれば無関心な者も多い。

 そんな中に入り、私たちはまずこの国の国王陛下にお会いすることになっている。

 今の国王陛下はツーリーと同じで前国王陛下を亡くされて、苦労したのだ。

「本日はお越しくださり光栄です。陛下、婚約者のナナ・エバン伯爵令嬢です。」

「お初にお目にかかります。この度はお越しいただきありがたき幸せにございます。」

 ツーリーに続いて礼をした。

「其方がツーリーが探していた令嬢だな。会える事を楽しみにしていたよ。」

 陛下の話しではわたしのことを知っていたのだと伺えた。

「認知いただきありがとうございます。」

「いつも冷静な宰相が其方のこととなると感情的になるからな。宰相と其方には深い縁があるのだろう…幸せになってもらいたい。」

 陛下の心優しい言葉に胸が熱くなった。

「感謝の言葉しかありません。ありがとうございます。」

「では陛下、また王城で…。」

「そうだな。」

 そうして私たちはその場を後にした。

 そして遠くに立つエバン伯爵夫妻に向かった。

 夫妻は嬉しそうに手を叩いて喜んでくれた。

 知り合ってまもないというのに、わたしに愛情を注いでくれる事がありがたかった。

「お父様、お母様きてくださってありがとうございます。」

「当たり前のことだ。ナナ、何かあれば私たちを頼りなさい。いつでも味方になろう。」

「そうよ、本当におめでとう。宰相様、娘をお願いしますね。また2人で遊びに来てください。」

 わたしは2人の顔を見れて緊張がほぐれた気持ちになった。

「もちろんだ。お二人も何かあればいつでも屋敷に来て欲しい。」

 ツーリーがそういうとお父様とお母様は礼を尽くした。

 立場は変わっても、忠臣としての義務を果たそうとしている姿に尊敬の念を抱いた。

「ではまた後ほどお会いしましょう。」

 そう言って私たちは他の来客の相手を務めた。

 ツーリーと一緒にいる時は誰もがわたしに笑いかけて何事もなかったが、1人になると違った。

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