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城下町

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「おじさん、これなんですか?」

「おう、それはケムリ草ってんだ。そうだ、兄ちゃん試しにそれ噛んでみな。おもしれーぞ」

「ほ、ほうでふか?」

露店のおじさんから渡されたケムリ草を口にくわえ、噛んでみた。

次の瞬間、緑の草はばふー!と大量の煙を発生させた。

「ごほっ!ごほっ!にがっ、なんですかこれ!」

「ははは!それはな、つぶすと煙を吐き出す草だ。普通は片方の端をくわえて煙を吸うんだ。こう、指で挟んでくわえるとカッコいいだろ?」

煙草みたいなものだろうか。草の色は様々でそれぞれ煙の色も味も違った。

「面白いですね!こっちの赤色は辛い!あ、こっちの青色はスースーする!」

「ははは、気に入ったか!他の商品も見て行ってくれよ!」


ユキトからお使いを依頼されたジンは城下町に来ていた。早く異世界をこの目で見たかったからだ。石畳の通りは中世を思わせる街並みで、露店が多く並び活気にあふれていた。

「お姉さん!これは何ですか?」

ケムリ草の隣にあった赤茶色の筒を指差し、おじさんの隣の女性に尋ねる。

「あら!お姉さんだなんて口が上手い坊やだねぇ!それはね、魔法の筒だよ。ここの出っ張りを押すと筒に込めらめた魔法が出てくるんだよ」

「へぇ~、面白いですね!」
「どれ、お姉さんって呼んでくれた代わりに1つ見せてやるよ」

店員の女性は店の隣の開けた場所で魔法の筒を使って見せてくれた。筒の両側から火が出てきて1本の棒になった。彼女は火の棒を回しながら踊りを披露してくれた。

「おおー!すごい!キレイです!」

踊りを見ていた通行人も立ち止まり歓声が上がっていた。

「はは、私もまだまだいけるねぇ」
「本当に凄かったです。何かやられてたんですか?」

「ああ、前まで踊り子やってたんだよ。そん時あの人にもらわれちゃってねぇ」

彼女が指差す先には先ほどのケムリ草の店主。

「ええええええええええ!!あの人が旦那さんですか!?僕はてっきり親子かと」

「ぷっ、あはははは。聞いたかいアンタ!私とアンタが親子だと思ったって」
「言ってろい」
店主のおじさんはふくれていた。

「それより坊や。あんた見ない格好だけど辺境から来たのかい?」
「はい、そんなところです。王都はこんなに栄えているんですね」
「そうだねぇ、勇者様が魔族との戦いを止めてくれたお陰だよ」
「止めた?終わってはいないんですか?」
「んー、そうだねぇ。何でも魔族と交換条件を交わしたって話だけどね。まぁ長い戦争には人も魔族も懲り懲りってことさ!」
「へぇ~そういうもんなんですね」

ルミリア王国ーー勇者を召喚して人族の中心となり最前線で魔族と戦った国。その被害も大きかったという。現在の活気にあふれる街並みを見ると、人の力強さを強く感じた。

感慨深く街観察に耽っていると雑踏の中から呼び掛けられた。

「おーい、ジン!」

人混みからひょっこり現れたのは赤いローブの少女。僕より頭ひとつ小さい彼女は、右手に体より大きい杖を持っている。エレオノーラ・バンジャンス。勇者と共にパーティを組んで戦ったうちの1人、魔女っ子だ。

「あ、ノーラちゃん。どうしたの?」
「ノーラちゃんって呼ぶなぁ!ユキトがお前を呼んでるんだ。城に戻るぞ」

今、僕は城に住まわせてもらっている。客人としてもてなされ贅沢と言える生活を送っていた。

「また来てくれよ~」
「はーい!色々と教えてくれてありがとうございました!また来まーす!」

ジンはぐいぐいとノーラに引っ張られながらも店主と奥さんに挨拶をして城に向かった。
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