上 下
3 / 5

城下町

しおりを挟む
「おじさん、これなんですか?」

「おう、それはケムリ草ってんだ。そうだ、兄ちゃん試しにそれ噛んでみな。おもしれーぞ」

「ほ、ほうでふか?」

露店のおじさんから渡されたケムリ草を口にくわえ、噛んでみた。

次の瞬間、緑の草はばふー!と大量の煙を発生させた。

「ごほっ!ごほっ!にがっ、なんですかこれ!」

「ははは!それはな、つぶすと煙を吐き出す草だ。普通は片方の端をくわえて煙を吸うんだ。こう、指で挟んでくわえるとカッコいいだろ?」

煙草みたいなものだろうか。草の色は様々でそれぞれ煙の色も味も違った。

「面白いですね!こっちの赤色は辛い!あ、こっちの青色はスースーする!」

「ははは、気に入ったか!他の商品も見て行ってくれよ!」


ユキトからお使いを依頼されたジンは城下町に来ていた。早く異世界をこの目で見たかったからだ。石畳の通りは中世を思わせる街並みで、露店が多く並び活気にあふれていた。

「お姉さん!これは何ですか?」

ケムリ草の隣にあった赤茶色の筒を指差し、おじさんの隣の女性に尋ねる。

「あら!お姉さんだなんて口が上手い坊やだねぇ!それはね、魔法の筒だよ。ここの出っ張りを押すと筒に込めらめた魔法が出てくるんだよ」

「へぇ~、面白いですね!」
「どれ、お姉さんって呼んでくれた代わりに1つ見せてやるよ」

店員の女性は店の隣の開けた場所で魔法の筒を使って見せてくれた。筒の両側から火が出てきて1本の棒になった。彼女は火の棒を回しながら踊りを披露してくれた。

「おおー!すごい!キレイです!」

踊りを見ていた通行人も立ち止まり歓声が上がっていた。

「はは、私もまだまだいけるねぇ」
「本当に凄かったです。何かやられてたんですか?」

「ああ、前まで踊り子やってたんだよ。そん時あの人にもらわれちゃってねぇ」

彼女が指差す先には先ほどのケムリ草の店主。

「ええええええええええ!!あの人が旦那さんですか!?僕はてっきり親子かと」

「ぷっ、あはははは。聞いたかいアンタ!私とアンタが親子だと思ったって」
「言ってろい」
店主のおじさんはふくれていた。

「それより坊や。あんた見ない格好だけど辺境から来たのかい?」
「はい、そんなところです。王都はこんなに栄えているんですね」
「そうだねぇ、勇者様が魔族との戦いを止めてくれたお陰だよ」
「止めた?終わってはいないんですか?」
「んー、そうだねぇ。何でも魔族と交換条件を交わしたって話だけどね。まぁ長い戦争には人も魔族も懲り懲りってことさ!」
「へぇ~そういうもんなんですね」

ルミリア王国ーー勇者を召喚して人族の中心となり最前線で魔族と戦った国。その被害も大きかったという。現在の活気にあふれる街並みを見ると、人の力強さを強く感じた。

感慨深く街観察に耽っていると雑踏の中から呼び掛けられた。

「おーい、ジン!」

人混みからひょっこり現れたのは赤いローブの少女。僕より頭ひとつ小さい彼女は、右手に体より大きい杖を持っている。エレオノーラ・バンジャンス。勇者と共にパーティを組んで戦ったうちの1人、魔女っ子だ。

「あ、ノーラちゃん。どうしたの?」
「ノーラちゃんって呼ぶなぁ!ユキトがお前を呼んでるんだ。城に戻るぞ」

今、僕は城に住まわせてもらっている。客人としてもてなされ贅沢と言える生活を送っていた。

「また来てくれよ~」
「はーい!色々と教えてくれてありがとうございました!また来まーす!」

ジンはぐいぐいとノーラに引っ張られながらも店主と奥さんに挨拶をして城に向かった。
しおりを挟む
感想 0

あなたにおすすめの小説

45歳のおっさん、異世界召喚に巻き込まれる

よっしぃ
ファンタジー
2月26日から29日現在まで4日間、アルファポリスのファンタジー部門1位達成!感謝です! 小説家になろうでも10位獲得しました! そして、カクヨムでもランクイン中です! ●●●●●●●●●●●●●●●●●●●● スキルを強奪する為に異世界召喚を実行した欲望まみれの権力者から逃げるおっさん。 いつものように電車通勤をしていたわけだが、気が付けばまさかの異世界召喚に巻き込まれる。 欲望者から逃げ切って反撃をするか、隠れて地味に暮らすか・・・・ ●●●●●●●●●●●●●●● 小説家になろうで執筆中の作品です。 アルファポリス、、カクヨムでも公開中です。 現在見直し作業中です。 変換ミス、打ちミス等が多い作品です。申し訳ありません。

料理屋「○」~異世界に飛ばされたけど美味しい物を食べる事に妥協できませんでした~

斬原和菓子
ファンタジー
ここは異世界の中都市にある料理屋。日々の疲れを癒すべく店に来るお客様は様々な問題に悩まされている 酒と食事に癒される人々をさらに幸せにするべく奮闘するマスターの異世界食事情冒険譚

【本編完結済み/後日譚連載中】巻き込まれた事なかれ主義のパシリくんは争いを避けて生きていく ~生産系加護で今度こそ楽しく生きるのさ~

みやま たつむ
ファンタジー
【本編完結しました(812話)/後日譚を書くために連載中にしています。ご承知おきください】 事故死したところを別の世界に連れてかれた陽キャグループと、巻き込まれて事故死した事なかれ主義の静人。 神様から強力な加護をもらって魔物をちぎっては投げ~、ちぎっては投げ~―――なんて事をせずに、勢いで作ってしまったホムンクルスにお店を開かせて面倒な事を押し付けて自由に生きる事にした。 作った魔道具はどんな使われ方をしているのか知らないまま「のんびり気ままに好きなように生きるんだ」と魔物なんてほっといて好き勝手生きていきたい静人の物語。 「まあ、そんな平穏な生活は転移した時点で無理じゃけどな」と最高神は思うのだが―――。 ※「小説家になろう」と「カクヨム」で同時掲載しております。

あなたは異世界に行ったら何をします?~良いことしてポイント稼いで気ままに生きていこう~

深楽朱夜
ファンタジー
13人の神がいる異世界《アタラクシア》にこの世界を治癒する為の魔術、異界人召喚によって呼ばれた主人公 じゃ、この世界を治せばいいの?そうじゃない、この魔法そのものが治療なので後は好きに生きていって下さい …この世界でも生きていける術は用意している 責任はとります、《アタラクシア》に来てくれてありがとう という訳で異世界暮らし始めちゃいます? ※誤字 脱字 矛盾 作者承知の上です 寛容な心で読んで頂けると幸いです ※表紙イラストはAIイラスト自動作成で作っています

私は心を捨てました 〜「お前なんかどうでもいい」と言ったあなた、どうして今更なのですか?〜

月橋りら
恋愛
私に婚約の打診をしてきたのは、ルイス・フォン・ラグリー侯爵子息。 だが、彼には幼い頃から大切に想う少女がいたーー。 「お前なんかどうでもいい」 そうあなたが言ったから。 私は心を捨てたのに。 あなたはいきなり許しを乞うてきた。 そして優しくしてくるようになった。 ーー私が想いを捨てた後で。 どうして今更なのですかーー。 *この小説はカクヨム様、エブリスタ様でも連載しております。

平凡冒険者のスローライフ

上田なごむ
ファンタジー
26歳独身動物好きの主人公大和希は、神様によって魔物・魔法・獣人等ファンタジーな世界観の異世界に転移させられる。 平凡な能力値、野望など抱いていない彼は、冒険者としてスローライフを目標に日々を過ごしていく。 果たして、彼を待ち受ける出会いや試練は如何なるものか…… ファンタジー世界に向き合う、平凡な冒険者の物語。

異世界楽々通販サバイバル

shinko
ファンタジー
最近ハマりだしたソロキャンプ。 近くの山にあるキャンプ場で泊っていたはずの伊田和司 51歳はテントから出た瞬間にとてつもない違和感を感じた。 そう、見上げた空には大きく輝く2つの月。 そして山に居たはずの自分の前に広がっているのはなぜか海。 しばらくボーゼンとしていた和司だったが、軽くストレッチした後にこうつぶやいた。 「ついに俺の番が来たか、ステータスオープン!」

特殊部隊の俺が転生すると、目の前で絶世の美人母娘が犯されそうで助けたら、とんでもないヤンデレ貴族だった

なるとし
ファンタジー
 鷹取晴翔(たかとりはると)は陸上自衛隊のとある特殊部隊に所属している。だが、ある日、訓練の途中、不慮の事故に遭い、異世界に転生することとなる。  特殊部隊で使っていた武器や防具などを召喚できる特殊能力を謎の存在から授かり、目を開けたら、絶世の美女とも呼ばれる母娘が男たちによって犯されそうになっていた。  武装状態の鷹取晴翔は、持ち前の優秀な身体能力と武器を使い、その母娘と敷地にいる使用人たちを救う。  だけど、その母と娘二人は、    とおおおおんでもないヤンデレだった…… 第3回次世代ファンタジーカップに出すために一部を修正して投稿したものです。

処理中です...