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お使いお願い!

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時が止まった。

地球じゃない?じゃあどういうことだ。ここは本当の夢の国?それともいつの間にか月にできたディ○ニーランド?

思考がぐるぐる回る僕を尻目に笑いながら彼は続けた。

「ここは……そうだな。わかりやすく言えば、異世界だ。君が思い描いている夢の国なんかじゃない」

「……?」

「うん。混乱するのも分かるよ。僕もある日突然、この世界に召喚されたからね」

それからユキトさんは色々と教えてくれた。
ユキトさんも三年前に召喚されて勇者として魔族と戦っていたこと。

一応、魔族との決着はついて今は少し平和になったこと。

そして……

「え、帰る方法あるんですか!」

なんと地球に帰る方法があるらしい。それは是非とも帰りたい。地球にはまだまだ見てない国がいっぱいあるんだ。

「それで、その方法というのは?」

そこまで聞いて彼はため息をついた。

「いやぁそれがね。伝説の秘宝とかを触媒にして超転移魔法を使う予定だったんだけど……誰かが勝手に召喚に使ったみたいで。はは」

「え、魔法があるんですか!……ってそうか魔族もいるぐらいだしな。でもそれならまた触媒を使って魔法を使えばいいんじゃ?」

ユキトは困ったように指でポリポリと頬をかいた。

「伝説の秘宝はこの世界の均衡を保つものでもある。だから使ったらあるべき場所に戻っちゃうんだ。だからもう一回集めないといけないって事なんだ」

「なるほど!じゃあその伝説の秘宝を探せばいいってことですね!」

ジンがそう言った所でユキトは立ち上がった。そしてグイグイ詰め寄ってきて、
「うんうん!集めないといけないんだよ。じゃあジン君、頼めるかな!」

少し大人びて見えた彼は今、少年のようにキラキラした目で僕を見つめている。

「えーっと、その、僕より勇者であるユキトさんの方が適任だと思います」

僕が誘いをやんわり断ると彼は近づけた顔を離し、両手を広げて劇を始めた。

「ああ!できることなら僕もついて行きたい!しかし……魔族との戦いで負ったこの傷が、それを許してくれない!ああ、故郷が恋しい!ちら」

「もうなんですか、その小芝居。僕は行きませんよ。大体、海外旅行の途中だったんです。僕も早く旅に戻りたいですよ」

…………いや待てよ。

これめっちゃチャンスじゃないか?
普通は絶対見れない異世界の国や文化を体験できて、しかも未知の自然と生き物も見れる!

あれ、これ得得プランだ。
そう思った瞬間に、

「やっぱり行きます」

と、即答していた。

「え、いいの?ダメ元で頼んでみたんだけど」
「はい!もうこちらから頼みたいぐらいです!旅行ついでに取ってきますよ!」

声高らかに宣言した。どうやらユキトさんも満足のようでウンウンと頷いている。

「よし!じゃあ決まりだ!秘宝のお使い頼んだよ!」
「任せてください!」

こうして僕の異世界での壮大なお使いが始まった。

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