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足止め
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翌朝、宿の主人の大声で目覚めた。
「昨日の夜領主が殺された。犯人が捕まるまで街の出入り口の門が閉まるから、皆んな連泊だよー」
声は宿の中に響いた。
ルイはセーンと目を合わせた。
昨夜の影は領主の首を取りに行く所だったのだと分かった。
しかし影の正体は不明である。
しばらくカーナバイラに滞在する事になった。
「ルイ、魔法を使えば帰ることができるよ」
セーンは言ったが、ここで姿を消せば、違った意味で疑いを買う
ここは大人しく宿にいた方が良いと判断した。
昼すぎに領主の屋敷お抱えの騎士が宿泊者を確認に来た。
カーナバイラの次期領主は殺された領主の長男だ。
彼は父親を殺害した犯人を血眼になって探していた。
犯人を捕まえる事で、自分の領主としての地位を確固たるものにしようとしていた。
宿の客は冒険者ばかりである。
怪しい者はいない。
騎士はこれからスラムに向かうと話した。
ハジメはカーナバイラにルイを探しに来ていた。
今日はいつもと違い街が騒がしいと感じていた。
街中に騎士が多い。
何事かと露天の店主に尋ね、昨夜領主が殺害されたことを知った。
今動くのは良くない。
そう考えたハジメは、カーナバイラにとどまる事にした。
ルイが以前住んでいた屋敷の近くに宿を取った。
街中に宿の数は少ない。
出入り口の門が閉まった事で、宿は繁盛していた。
部屋は相部屋で、一部屋に男ばかり6人押し込まれた。
「客があればあと2人は入れるからね」
宿の主人は部屋に案内しながら言った。
宿賃はいつもより高かった。
その夜は闇夜だった。
月は雲に隠れて姿を見せず、季節の変わり目だというのに生暖かい風がふいていた。
セーンは外の気配が気になり眠れないようで、何度も窓際に行き辺りを伺っていた。
「ルイ、今夜は寝ないほうがいい」
セーンは何かを感じ取ったのかベッドに横たわるルイに言った。
「起きておく」
ルイはいつでも外に飛び出すことが出来る様にしていた。
夜半過ぎ、窓際に人影が止まった。
中の様子を伺っている。
セーンは窓の脇に隠れて様子を見ている。
ルイは咄嗟にベッドに横になった。
寝ていると思ったのか窓を開けて部屋の中に入ってきた。
一瞬だった。
セーンが躊躇わず喉元を切った。
声をあげることも出来ず侵入者は息絶えた。
駆け寄って見ると、魔人である。
唇は赤く、目元は黒い。
ひとみの色は伺うことは出来なかったが、おそらく赤い。
爪は長く、肌の色は白い、
女である。
ほかの部屋にも押し込んだ様子で、あちこちから声が聞こえる。
もしやと思ったルイは、宿の主人の部屋に転移した。
主人は魔人に懸命に抵抗していた。
見れば身体は傷だらけである。
魔人はルイに気づいていない。
後ろからルイは一撃で剣を振り下ろした。
魔人の背中は半分に切れそこから泡になり、息絶えた。
「なんなんだいコイツは」
気丈な女将は血塗れで起き上がると魔人の死体を見ていった。
「コイツは魔人、おそらくヒトが魔人になった」
ルイは女将に、魔人に触らないようにいうと今一度魔人に浄化魔法をかけた。
魔人はチリとなり消えた。
次の瞬間、空間転移魔法で誰かが部屋に入る気配を感じた。
すぐに身構えたルイだったが、向こうが早かった。
剣を構える間もなかった。
セーンも気づきすぐに女将の部屋に向かおうとしたが、宿の中は魔人だらけで間に合わない。
相当な魔力の持ち主である。
敵は魔人だけではなかった?魔物もいたのか?
ルイは女将を、いや自分を守り切れる自信がなかった。
その頃ハジメは部屋の入り口の近くで寝ていたが、遠くに魔人の気配があることに気付いた。
狭い場所で男が6人もいては、剣を使っての戦いは不利である。
部屋の中には、商人も居れば、冒険者、親子連れもいる。
ここで戦う事は出来ない。
部屋を出て宿の外で待ち構えた。
宿の屋根から窓に飛び移る影を見つけた。
「オイ!ここだ」
ハジメは大きな声で魔人に聞こえるように言った。
窓に張り付いていた魔人はハジメの声に気づき振り返ると、窓から飛び降りた。
言葉を発することなく、宿を取り囲んでいた魔人が壁を伝いながらハジメの周りに集まってくる。
「何人いるんだ、全く」
この街中にはどれだけの魔人がいるのか見当もつかなかったが、目の前の魔人は殺しておいたほうが良いと判断したハジメは、剣を抜いた。
魔法で消してしまうことは簡単だったが、魔法を使うほどのことも無いと考えた。
戦いの最中、一瞬ルイの気配を感じた。
この数人の魔人の中からだったのか?あまりに突然で気配の出所が掴めない。
この中の1人がそうなのかもしれないと魔人の様子を見ていたら、2度目の気配を感じた。
魔人の中からではない。
街中で近い。
場所も分かった。
魔人との戦いに時間をかけてはいられない。
長年探していたルイの気配である。
ハジメは辺りにいた魔人を一瞬で灰にすると、すぐに転移の魔法でルイの元に飛んだ。
ルイが魔人に襲われているのかもしれない。
そう思うと気が気ではなかった。
転移先の部屋ではルイが剣を構えてハジメを待っていた。
「昨日の夜領主が殺された。犯人が捕まるまで街の出入り口の門が閉まるから、皆んな連泊だよー」
声は宿の中に響いた。
ルイはセーンと目を合わせた。
昨夜の影は領主の首を取りに行く所だったのだと分かった。
しかし影の正体は不明である。
しばらくカーナバイラに滞在する事になった。
「ルイ、魔法を使えば帰ることができるよ」
セーンは言ったが、ここで姿を消せば、違った意味で疑いを買う
ここは大人しく宿にいた方が良いと判断した。
昼すぎに領主の屋敷お抱えの騎士が宿泊者を確認に来た。
カーナバイラの次期領主は殺された領主の長男だ。
彼は父親を殺害した犯人を血眼になって探していた。
犯人を捕まえる事で、自分の領主としての地位を確固たるものにしようとしていた。
宿の客は冒険者ばかりである。
怪しい者はいない。
騎士はこれからスラムに向かうと話した。
ハジメはカーナバイラにルイを探しに来ていた。
今日はいつもと違い街が騒がしいと感じていた。
街中に騎士が多い。
何事かと露天の店主に尋ね、昨夜領主が殺害されたことを知った。
今動くのは良くない。
そう考えたハジメは、カーナバイラにとどまる事にした。
ルイが以前住んでいた屋敷の近くに宿を取った。
街中に宿の数は少ない。
出入り口の門が閉まった事で、宿は繁盛していた。
部屋は相部屋で、一部屋に男ばかり6人押し込まれた。
「客があればあと2人は入れるからね」
宿の主人は部屋に案内しながら言った。
宿賃はいつもより高かった。
その夜は闇夜だった。
月は雲に隠れて姿を見せず、季節の変わり目だというのに生暖かい風がふいていた。
セーンは外の気配が気になり眠れないようで、何度も窓際に行き辺りを伺っていた。
「ルイ、今夜は寝ないほうがいい」
セーンは何かを感じ取ったのかベッドに横たわるルイに言った。
「起きておく」
ルイはいつでも外に飛び出すことが出来る様にしていた。
夜半過ぎ、窓際に人影が止まった。
中の様子を伺っている。
セーンは窓の脇に隠れて様子を見ている。
ルイは咄嗟にベッドに横になった。
寝ていると思ったのか窓を開けて部屋の中に入ってきた。
一瞬だった。
セーンが躊躇わず喉元を切った。
声をあげることも出来ず侵入者は息絶えた。
駆け寄って見ると、魔人である。
唇は赤く、目元は黒い。
ひとみの色は伺うことは出来なかったが、おそらく赤い。
爪は長く、肌の色は白い、
女である。
ほかの部屋にも押し込んだ様子で、あちこちから声が聞こえる。
もしやと思ったルイは、宿の主人の部屋に転移した。
主人は魔人に懸命に抵抗していた。
見れば身体は傷だらけである。
魔人はルイに気づいていない。
後ろからルイは一撃で剣を振り下ろした。
魔人の背中は半分に切れそこから泡になり、息絶えた。
「なんなんだいコイツは」
気丈な女将は血塗れで起き上がると魔人の死体を見ていった。
「コイツは魔人、おそらくヒトが魔人になった」
ルイは女将に、魔人に触らないようにいうと今一度魔人に浄化魔法をかけた。
魔人はチリとなり消えた。
次の瞬間、空間転移魔法で誰かが部屋に入る気配を感じた。
すぐに身構えたルイだったが、向こうが早かった。
剣を構える間もなかった。
セーンも気づきすぐに女将の部屋に向かおうとしたが、宿の中は魔人だらけで間に合わない。
相当な魔力の持ち主である。
敵は魔人だけではなかった?魔物もいたのか?
ルイは女将を、いや自分を守り切れる自信がなかった。
その頃ハジメは部屋の入り口の近くで寝ていたが、遠くに魔人の気配があることに気付いた。
狭い場所で男が6人もいては、剣を使っての戦いは不利である。
部屋の中には、商人も居れば、冒険者、親子連れもいる。
ここで戦う事は出来ない。
部屋を出て宿の外で待ち構えた。
宿の屋根から窓に飛び移る影を見つけた。
「オイ!ここだ」
ハジメは大きな声で魔人に聞こえるように言った。
窓に張り付いていた魔人はハジメの声に気づき振り返ると、窓から飛び降りた。
言葉を発することなく、宿を取り囲んでいた魔人が壁を伝いながらハジメの周りに集まってくる。
「何人いるんだ、全く」
この街中にはどれだけの魔人がいるのか見当もつかなかったが、目の前の魔人は殺しておいたほうが良いと判断したハジメは、剣を抜いた。
魔法で消してしまうことは簡単だったが、魔法を使うほどのことも無いと考えた。
戦いの最中、一瞬ルイの気配を感じた。
この数人の魔人の中からだったのか?あまりに突然で気配の出所が掴めない。
この中の1人がそうなのかもしれないと魔人の様子を見ていたら、2度目の気配を感じた。
魔人の中からではない。
街中で近い。
場所も分かった。
魔人との戦いに時間をかけてはいられない。
長年探していたルイの気配である。
ハジメは辺りにいた魔人を一瞬で灰にすると、すぐに転移の魔法でルイの元に飛んだ。
ルイが魔人に襲われているのかもしれない。
そう思うと気が気ではなかった。
転移先の部屋ではルイが剣を構えてハジメを待っていた。
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