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さらわれたルイ

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それはあっという間だった。

ルイは袋に詰められ運び出された。
大声を出し、
ハジメを起こそうとしたが、ハジメは全く気付かない。
セーンを起こそうとしても、ぐっすりと眠ったままである。
かろうじてルイの服の中で寝ていたテリィがルイと共にさらわれた。

袋の中でもがき、バタバタしていたが、相手は構わずルイを抱えて走るものだから体が痛くなり、自身に強化魔法をかけて痛みを止めた。

運ばれながら、どうしたものかと考えていたが、ここは弘法大師様から頂いた不死の加護を信じてみることにした。

ルイを運んだ男は目的地に着くと荒々しく投げた。


「ドサッ」



強化魔法をかけていなければ、ずいぶん痛い思いをしただろう。
幸い怪我もなくその場に転がされた。



エルフは紳士的で、こういう荒っぽい歓迎はしないと聞いている。
いったい何者が自分をさらったのか、気になった。

ルイが入った袋が投げ出された後、同じような音が二回した。
ルイ以外にも拐われた人がいた?
もしかしてハジメとセーン?


ルイは袋の中から透視魔法をかけ辺りの様子を伺っていた。
大して広くない部屋に男が3人、袋が2つ。
袋の中は見えない。
見えない?
見えないはずはない。
ルイの魔法は今♾に近いはずである。
見えないということがどういうことなのか、理解できなかった。

ルイを運んできた男は表に見張りに立った。

3人の男どもは何やら小声で話している。
もう少し大きな声で話してくれたら、聞くこともできるのだが、話し声は聞こえない。

ここは何処だろう。
ルイは広範囲に索敵魔法をかけた。
辺りには家が沢山あるし、ヒトもいる。
どうやら何処かの村の中に連れてこられたようだ。
聖魔法でまとめて消してしまうか?
それともアイテムボックスから剣を取り出して戦うか?
ルイは様子を見ながら考えていた。

1人の男が袋の口を開けてルイの顔を覗き込んだ。


「わあー!」


びっくりしたルイは大声をあげた。
その声に驚いたのか男2人がルイをみた。
見た目二人ともエルフである。
ルイを見ながら、

「運が悪かったな、客人。こんな時に来たのが悪いんだよ」

育ちの良さそうな若い方の男がルイに言った。
エルフは歳をとらないので、年齢がわからない。
この男も実際は幾つなのかわからないが、ルイの見た目では、30歳前後の様に見えた。


「此処は何処ですか?」


「ウルフの村だよ、お客さん」


「ウルフ?」


ルイはウルフと会ったのは初めてだった。
ハジメからも聞いた事はない。
目の前にいるこの男がエルフなのかウルフなのかも見分けがつかなかった。

ほかの2つの袋の口が開けられた。
若い女性と年輩の女声が顔を出した。


「マーチエンナ様、どうしてここに?」


年配の女性がルイと話している男を見て驚いた声を出した。

「これはこれは、カーナ殿、無粋な招待で申し訳ございません」

マーチエンナ様と呼ばれた男はカーナと呼んだ女性に丁寧に挨拶をしたが、次の瞬間、

「お客様を部屋へ」


冷たく言い放った。
その声で、ドアの前で見張りをしていた男が入ってくると、3人を引き連れ地下牢に押し込んだ。


「昨日町に来られたお客様ですよね、巻き込まれたのですよね、魔法使いですか?申し訳ございません」

牢に入れられた後、カーナがルイに丁寧に頭を下げて下げた。

「いいえ大丈夫ですよ、こんな事予期出来ないですし」

カーナに罪があるわけではない。
ハジメとセーンがルイを見つけてくれることを信じることにした。



一方ハジメとセーンはルイをさらったウルフ族の後を追いかけていた。
犯人は町に入りエルフに混ざりチャンスを伺っていた。

元々、似た種族であるエルフとウルフは耳を隠せば見分けがつかない。

精霊と話せるかどうかというだけが2つの種族の違いである。

しかしその性格は全く違い、ウルフ族は凶暴だ。
欲しいものは力で手に入れる。
以前はエルフの町や村が襲われる事が多かったが、最近はウルフがエルフの森に入ってこないように、見張りを立て眼を光らせていた。
事実、ここ数年ウルフ族に襲われたという話は聞いたことが無かった。



ハジメとセーンがルイを探して町を出た後、エルフの戦士が破壊された町に入った。

エルフの王都では早朝、森の入り口にある町がウルフ族に襲われたことを知らせに精霊が集まっていた。

精霊の伝達は速い。
精霊から精霊へテレパスで伝える。
見たものを頭の中で伝えるので、事実だけが伝わっていく。

王の対応は早かった。
すぐに精鋭の戦士が数人、部隊を率い町に向かった。

街につくとすぐに、彼らは精霊を使い事の次第を調べた。

ウルフは町に数人入り込んでいた。
手引きをしたのは、町の有力者でもある
「マーチエンナ、アドバン、シェラーン」
である。

1年前王都からこの辺境の町に左遷されたエルフの王の親族の一人である。

彼は王の座を狙い失脚した現王の弟の側近だった昨年、王の弟と共に王座を狙いクーデターを起こし失敗した。

王の弟はその日のうちに死刑にされたが、うまく立ち回ったマーチエンナはこの地に流される事で生きながらえた。

王座に未練があり、ウルフ族と手を結んだのだった。

エルフの王都を狙い、王座をこの手に掴むチャンスを伺っていた。
その為には精霊も、魔法使いも邪魔だった。

精霊はエルフを殺せば、自然にいなくなるが、魔法使いは厄介である。
エルフの町にいた魔法使いはルイを含めて3人。
すべてさらわれた。



















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