400年目の再会

キラ

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合戦の合図

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ジルの放った魔法弾は真っ暗な闇の中、まるで昼間の太陽の様に明るく光り、大きな爆発音を放った。
それはヒト族と悪魔との戦いの始まりの合図でもあった。

城壁門の前に立っていたジュールとバンダナにも勿論その音は大きく聞こえると共に、光は眩いばかりに届いた。


「ジュール、始まったわ」

バンダナは武者振るいがするのか、少し自身に震えを感じていた。
ついさっきまで、これが夢だったら良かったのにと思っていた所だ。

ジルという月から来たという魔法使いの話を信じて、ルナと共に前線を任せたのだったが、不安はあった。
もし彼が、あちらのスパイだったら、、、。
前戦に一緒にいるルナは、、、
見殺しにする様なものだ。

しかし、ルナはそんなバンダナの心配をよそに、自分からジルと前線で戦う事を宣言し共に行った。

知り合いの様であり、そうでもない様であり、不思議な関係の二人だと思った。
以前、命ガラガラの所を彼に助けてもらったからだろうかと思う所もあった。

しかし今となってはそんなことはどうでも良い。

ルナとジルが撃ち漏らした悪魔を此処で仕留めなければ、、その思いで一杯だった。

魔法弾の眩しい光を見て、改めて気持ちが引き締まった。

ジュールは王族だ。
もしもの時には、なんとしても生かして逃さなければならない。

ジュールは命をかけて戦うつもりの様だったが、バンダナは違っていた。

危なくなったらジュールを逃す。
たとえ、その為に城壁門を破られる事になっても、そうする。
そう決めていた。

その事はルナに話した。
ルナは何も聞かずに、バンダナの気持ちをわかってか黙ってうなづいた。

バンダナは男勝りに見えるが、心は年頃の娘である。
ずいぶん前からジュールに淡い恋心を抱いていた。

王族であるジュールとの結婚など、地方伯爵の三女に生まれたバンダナにはありえない話だ。
ジュールと知り合いになれただけでも、驚きなのに、これ以上望む事など出来ない。

自分の胸にしまっておくつもりだ。

しかし気になっていたことがあった。
ルナもジュールを愛しているのでは無いかと言うことだ。

この世界がこの後どうなるかわからないと知った時、思い切ってルナに聞いてみた。

「ジュールの事どう思っている?」

ルナの返事はあっさりしたものだった。

「バンダナの気持ちとは違うと思う、良い友人だ」

ドキッとして、ホッとして、ルナがバンダナの気持ちに気づいていたのかと思うと、恥ずかしくて顔が熱く感じられた。

「ジュールに告白したら?」

冷やかしで言っているのではない事はルナの顔を見ていればわかる。
顔をピクリとも動かさず、真面目にバンダナに言った。

「ムリッ!」

バンダナは話を遮った。

女としての自信は全くない。
それには自信がある。
ジュールに女として勝負をかけるほど馬鹿では無い。

これまで剣一筋に生きてきたのだ。
今更手のひらを返した様に女らしくなど出来るはずがない。
女らしさで勝負するのなら誰にも勝てるわけはない。
彼の周りには素敵な女性が沢山いる。
その中に混ざってしまえば、劣等感の塊だ。

ジュールの隣に胸の大きな、顔立ちの良い可愛い甘え上手の女の子が立っていたら、笑ってその場をやり過ごし、後で誰もいないところで泣くのだろう。
が、今の所そんな心配をしなくて良いのが嬉しい。

それどころでは無い状況だから。


「バンダナ、どうかした?」

一人で考え込んでいるバンダナにジュールが覗き込む様にして聞いた。

「えっ、いやなんでもない」

ドキッとした。が、今夜が闇夜でジュールからバンダナの顔が見えなくてよかった。
きっと顔が赤いだろう。

熱った顔を隠して、ジュールに返事をした。


はるか向こうの草原の中の光の中を、バラバラと黒いものが落ちていくのが見えた。

戦いが始まった。

バンダナは気を引き締め目を見張った。
ジュールが片手を上げて合図をすると、用意していた松明に火が灯った。

障壁門の前は松明の灯りで、昼間の様に明るくなった。


日の出までが勝負。
ジルにそう言われた事を思い出した。

















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