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多恵との思い出
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舞子から今回の旅行のメンバーの話を聞いたのは、舞子が旅行に出発する10日ほど前だった。
気にならないはずはない。
妹多恵の友人達である。
失踪している多恵も参加するかもしれないと、そう思い舞子の後をつけた。
舞子には、
「借金を踏み倒して逃げるんじゃないかと後をつけている」
と言った。
なにを誤解したのか、
「同じホテルにダブルで部屋を予約しておこうかしら」
と舞子は嬉しそうに笑って言った。
舞子には悪いが、清二は妹の多恵に会うことが出来たら、
「もう昔の事は気にしていない、一度両親の墓参りに一緒に田舎に帰ろう」
そういうつもりだった。
結婚式の前日に行くえをくらませたのである。
それほど久保田との結婚が嫌だったのかと、全てを無くした時、清二は多恵の気持ちを思った。
しかし、それ以上にあの時は多恵を恨んでいた。
妻も、子供も失ったのは多恵の裏切りのせいだと。
両親が自殺したのも、財産の全てを失うことになったのも全て多恵の責任だと、故郷を後に夜汽車に乗り涙が出て止まらなかった。
多恵を恨む事で乗り越えてきたようなものだ。
父が亡くなった年に近づくにつれ、多恵に悪いことをしたように思い始めていた。
家の犠牲にする所だった。
多恵を許して、元気な顔が見れればそれで良いとそう思い舞子の後をつけていた。
しかし、多恵はいなかった。
彼女達の中でも多恵は忘れられた存在になっていた。
違った意味で寂しさと年月を感じた。
清二は高知市内に入り朝を待った。
車内で一泊して高知警察署に向かうつもりだった。
が、なにぶん清二はサラ金の取り立て業という、危ない職業である。
警察の職員には信用が無い。
警察の敷居は高かった。
どうするべきか悩んでいた。
舞子と一緒に旅行していた中に一人見覚えのある顔立ちの女がいた。
一度田舎の家に遊びにきたことのあるの多恵の友人だ。
夏休みに来て、しばらく滞在した記憶があった。
彼女に話して見ることにした。
朝子以外は年は取っていたが、風貌に変わりはなかった。
朝早くめ目覚めた広美は久しぶりに朝のジョギングに出かけた。
いつも毎朝自宅近くの公園をジョギングしている。
ホテルの近くにある高知城の周りを走っていた。
今朝は朝市が出ていた。
人混みに紛れて、一人の男が広美に声をかけてかけてきた。
男は井上清二、多恵の兄だと名乗った。
広美は足を止め清二の言葉に耳を貸した。
そして足摺岬で舞子から渡されたと言って茶封筒に入った包みを渡された。
中には現金が500万円と白紙の離婚届が一枚、申し訳なさそうに入っていた。
「里香の話は本当だった」
広美はもう一度里香には話しを聞く必要があると思った。
清二と別れた広美はそれを警察に持ち込んだ。
指紋を調べてもらう為である。
4人の指紋はすでに中村の警察署で提出していた。
照合はすぐにできるだろう。
待っている間に刑事が、2人の解剖の結果を教えてくれた。
朝子と舞子は二人同時に落ちたのかと思ってたいたが、事実は違っていた。
解剖の結果、朝子の方が舞子より1時間ほど先に亡くなっていたことがわかった。
散乱していた札束からは、広美と、智恵子、百合子の指紋が採取された。
「どうして3人の指紋が落ちていた現金から出たんでしょうね、心当たりはありますか?」
なるほど刑事はこのことを私に聞きたかったのか、わざわざ検視の結果を広美だけに話すのはおかしいと思っていたが、広美も疑われていることに、今気づいた。
広美が思い当たるとすれば、智恵子が宇和島の料亭で支払いをした時、結構飲んでいたこともあり、手元がおぼつかなくなっていたこともありで、封筒からお札を出した時、現金をばらまいてしまった。
その時百合子と2人で拾った覚えがあった。
「あのお金ー」
もしかして智恵子のものでは無いかと思った。
ホテルに戻り確かめて見ることにした。
警察から帰る前に持ち込んだ封筒に残る指紋の結果も知らされた。
広美はホテルに戻りはっきり聞くことにした。
「智恵子、舞子と朝子の周りに落ちていたお金に、私と百合子の指紋があったらしいわ」
広美はストレートに聞いた。
「え?わたしの指紋が?」
百合子は驚いていた。
「あのお金、足摺のホテルで盗まれたのよ、丁度2人が殺害された夜だと思うわ。朝になくなつているのに気づいたから」
「何のためにそんな大金持ち歩いていたの?里香も智恵子もキチンと話してちょうだい」
智恵子は、
「出かけるまえに夫と口論になり、夫が女に持っていくつもりで用意していたお金を封筒ごと持ってきたのよ、いくらはいつていたかなんて知らないわ」
そう言った。
里香は、
武士とのことを話し、離婚届と引き換えに朝子に渡すつもりだったと答えた。
「里香のお金見つかったの」
気にならないはずはない。
妹多恵の友人達である。
失踪している多恵も参加するかもしれないと、そう思い舞子の後をつけた。
舞子には、
「借金を踏み倒して逃げるんじゃないかと後をつけている」
と言った。
なにを誤解したのか、
「同じホテルにダブルで部屋を予約しておこうかしら」
と舞子は嬉しそうに笑って言った。
舞子には悪いが、清二は妹の多恵に会うことが出来たら、
「もう昔の事は気にしていない、一度両親の墓参りに一緒に田舎に帰ろう」
そういうつもりだった。
結婚式の前日に行くえをくらませたのである。
それほど久保田との結婚が嫌だったのかと、全てを無くした時、清二は多恵の気持ちを思った。
しかし、それ以上にあの時は多恵を恨んでいた。
妻も、子供も失ったのは多恵の裏切りのせいだと。
両親が自殺したのも、財産の全てを失うことになったのも全て多恵の責任だと、故郷を後に夜汽車に乗り涙が出て止まらなかった。
多恵を恨む事で乗り越えてきたようなものだ。
父が亡くなった年に近づくにつれ、多恵に悪いことをしたように思い始めていた。
家の犠牲にする所だった。
多恵を許して、元気な顔が見れればそれで良いとそう思い舞子の後をつけていた。
しかし、多恵はいなかった。
彼女達の中でも多恵は忘れられた存在になっていた。
違った意味で寂しさと年月を感じた。
清二は高知市内に入り朝を待った。
車内で一泊して高知警察署に向かうつもりだった。
が、なにぶん清二はサラ金の取り立て業という、危ない職業である。
警察の職員には信用が無い。
警察の敷居は高かった。
どうするべきか悩んでいた。
舞子と一緒に旅行していた中に一人見覚えのある顔立ちの女がいた。
一度田舎の家に遊びにきたことのあるの多恵の友人だ。
夏休みに来て、しばらく滞在した記憶があった。
彼女に話して見ることにした。
朝子以外は年は取っていたが、風貌に変わりはなかった。
朝早くめ目覚めた広美は久しぶりに朝のジョギングに出かけた。
いつも毎朝自宅近くの公園をジョギングしている。
ホテルの近くにある高知城の周りを走っていた。
今朝は朝市が出ていた。
人混みに紛れて、一人の男が広美に声をかけてかけてきた。
男は井上清二、多恵の兄だと名乗った。
広美は足を止め清二の言葉に耳を貸した。
そして足摺岬で舞子から渡されたと言って茶封筒に入った包みを渡された。
中には現金が500万円と白紙の離婚届が一枚、申し訳なさそうに入っていた。
「里香の話は本当だった」
広美はもう一度里香には話しを聞く必要があると思った。
清二と別れた広美はそれを警察に持ち込んだ。
指紋を調べてもらう為である。
4人の指紋はすでに中村の警察署で提出していた。
照合はすぐにできるだろう。
待っている間に刑事が、2人の解剖の結果を教えてくれた。
朝子と舞子は二人同時に落ちたのかと思ってたいたが、事実は違っていた。
解剖の結果、朝子の方が舞子より1時間ほど先に亡くなっていたことがわかった。
散乱していた札束からは、広美と、智恵子、百合子の指紋が採取された。
「どうして3人の指紋が落ちていた現金から出たんでしょうね、心当たりはありますか?」
なるほど刑事はこのことを私に聞きたかったのか、わざわざ検視の結果を広美だけに話すのはおかしいと思っていたが、広美も疑われていることに、今気づいた。
広美が思い当たるとすれば、智恵子が宇和島の料亭で支払いをした時、結構飲んでいたこともあり、手元がおぼつかなくなっていたこともありで、封筒からお札を出した時、現金をばらまいてしまった。
その時百合子と2人で拾った覚えがあった。
「あのお金ー」
もしかして智恵子のものでは無いかと思った。
ホテルに戻り確かめて見ることにした。
警察から帰る前に持ち込んだ封筒に残る指紋の結果も知らされた。
広美はホテルに戻りはっきり聞くことにした。
「智恵子、舞子と朝子の周りに落ちていたお金に、私と百合子の指紋があったらしいわ」
広美はストレートに聞いた。
「え?わたしの指紋が?」
百合子は驚いていた。
「あのお金、足摺のホテルで盗まれたのよ、丁度2人が殺害された夜だと思うわ。朝になくなつているのに気づいたから」
「何のためにそんな大金持ち歩いていたの?里香も智恵子もキチンと話してちょうだい」
智恵子は、
「出かけるまえに夫と口論になり、夫が女に持っていくつもりで用意していたお金を封筒ごと持ってきたのよ、いくらはいつていたかなんて知らないわ」
そう言った。
里香は、
武士とのことを話し、離婚届と引き換えに朝子に渡すつもりだったと答えた。
「里香のお金見つかったの」
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