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28話 ただの腹ペコかいっ!!!!

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 あれから5日程経過し、移動販売でフルリスの街を渡り歩いてようやく在庫に底が見えてきた。

「よっしゃぁ~~~!!!! あと少しぃ~~~!!!!」

 連日の激込み具合が多少落ち着き、休憩を挟みつつ残りの食材の下処理に取りかかる。

 ある程度終わったら開店準備をし、試食用のサンダーラビットのトマト煮込みのスープと別のホワイトソースの2種類とジャーマンポテト(※ピンサンドベアの馬鈴薯焼き)を用意する。

 そしてピンサンドベアの串焼きとセットでサンドして食べる用のパンも追加しオープンする。

 お客さんにオーダーされればトッピングも可能な仕様になっており、人気の高い注文の一つだった。

 昼のピークが過ぎ日が傾いてきた頃、ピンサンドベアの肉がなくなりかけてきて、横にあるスープとその他の加工品でラストにしようと在庫の点検をしていると、毎日違う場所でやってるというのにいつも足繁く通ってくれる常連さんが来た。

「おう、兄ちゃん。ピンサンドベアの串焼きとバゲット、それからチーズとオニオンも3つずつ頼む! あとスープの容器少し足りなくなってるぜ」

「いつもありがとうございます。 本当だ、あとで補充しますね」

「いやぁー、もう殆どないじゃないか。 繁盛して何よりだな!! 毎日違うとこにいるもんだから探すのが一苦労だぜ」

「あはは、それはお手間をお掛けしてすいません。 ですが本日でピンサンドベアの在庫がなくなりそうなので試しにブロックも買っていきませんか? お得ですよ?」

「ハハハハッ!! 全く商売上手にも程があるぜ!! 作ってくれるかみさんが居ないんじゃ買ってもしゃーないだろ」

「あ……それは、無粋なことを言ってすいません」

「いやいや、アンタは悪かぁねぇよ!! でもそうか、今日でこんな上手いもん食えるのも最後なんてな……」

「……ちなみに、干し肉として加工してある肉もあるんですが、晩酌のお供としてお一ついかがです?」

 常連の男性は一瞬呆気にとられ、次の瞬間大声で笑い出す。

「ハハハハハッ!! ハッ、ハハハッ、ヒィ~~~ッ!! 兄ちゃんアンタも大概だな」

「ここまで来たら完売させたいので、どなたにでも売り付け……ウェルカムですよ~!」

「ハハハッ、いい心構えだな!! はぁ~ しゃあねぇなぁ~ ブロックと干し肉一つずつ貰うとするか。 肉はただ焼けば食えるんだろ?」

「はい、あとはあればコショウなどで香り付けするとアクセントになって酒にも合いますよ」

「おう、そうか! もう直接兄ちゃんから買えないのは残念だが、ちびちび味わうとするよ」

「はい、こちらこそ。 ご満足いただけて幸いです、いつもご利用いただきましてありがとうございました」

 片手をあげギリギリまで手を振る気前のいいお客さんを最後に、ピンサンドベアの商品は完売。

 残るはサンダーラビットのスープが各々5、6食程度か。

 加工された肉はほとんどが売れて、意外と薬草系の商品も全て売れた。

 単純にスパイスや味付けでブレンドした香草系のものは売れると思ったが、まさか薬草の方まで需要があるとは思わなかった。

 ピコンッ ピリュリリランッ ピュルリン!

【一般の方々は通常の薬草や薬といった高価なものが手に入りにくい分、調理などに使われる香草や薬草などで病気や持病、怪我などの対応をしております】

「あっ、そうなんだ? 冒険者やってたくせに知らなかったわ~」

 ピコンッ ピリュルンッ ピポポンッ!

【バカは風邪を引か……いえ、なんでもありません】

「言いたいことがあるならはっきり言えや 買うよ? 喧嘩買うよ???」

 ピンッ

【…………】

「無視すんなよぉぉぉ~~~!!」

 ピコンッ ピュリパポンッ パピィンッ!

【そんなことより片付けを】

「あ、話そらした! んもぉ~、しょうがないわねぇ……って、あれ?」





 目線の少し先にはこの街では珍しい特徴的な耳と白金色の髪を持つエルフと思われる青年がおり、フラフラとした足取りでこちらに向かってきていた。

 この店に用があるのだと察し、覚束ない足取りの青年に急いで駆け寄り話しかける。

「大丈夫ですか?」

「っ……た」

「え?」

「やっと見つけました……」

 そういうと彼は力尽きたかのようにこちらに倒れ込み、遠目で見たよりもスラリと高い身長と長い手足を玲奈に身体を預け軽く気を失ったようだった。

「えっ、えぇ……」

 流石の玲奈も困惑し、とりあえず休憩に使っていた木箱を並べ簡易ベッドを作り彼を横にさせた。

「めっちゃ睫毛なげぇわ」

 魔属で、森の大賢者とも呼ばれる誇り高い種族のエルフ。滅多に魔属の住まう大陸の森から出たがることのないエルフがなぜこんな辺鄙な街でうろついてるのか気になるとこだったが、とりあえず非常事態だし状態表示で身体の不調を確認する。

「……ん?」

 確認していくがなにも異常はない。
 病気や怪我、急性的な疾患も無いようだ。

 その時どこからともなく盛大な低い、響くような音がなった。

「は?」

 よく見てみると胃腸の辺りが強く収縮してる。もしや、これは____

「ただの腹ペコかいっ!!!!」
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