28 / 32
28話 ただの腹ペコかいっ!!!!
しおりを挟む
あれから5日程経過し、移動販売でフルリスの街を渡り歩いてようやく在庫に底が見えてきた。
「よっしゃぁ~~~!!!! あと少しぃ~~~!!!!」
連日の激込み具合が多少落ち着き、休憩を挟みつつ残りの食材の下処理に取りかかる。
ある程度終わったら開店準備をし、試食用のサンダーラビットのトマト煮込みのスープと別のホワイトソースの2種類とジャーマンポテト(※ピンサンドベアの馬鈴薯焼き)を用意する。
そしてピンサンドベアの串焼きとセットでサンドして食べる用のパンも追加しオープンする。
お客さんにオーダーされればトッピングも可能な仕様になっており、人気の高い注文の一つだった。
昼のピークが過ぎ日が傾いてきた頃、ピンサンドベアの肉がなくなりかけてきて、横にあるスープとその他の加工品でラストにしようと在庫の点検をしていると、毎日違う場所でやってるというのにいつも足繁く通ってくれる常連さんが来た。
「おう、兄ちゃん。ピンサンドベアの串焼きとバゲット、それからチーズとオニオンも3つずつ頼む! あとスープの容器少し足りなくなってるぜ」
「いつもありがとうございます。 本当だ、あとで補充しますね」
「いやぁー、もう殆どないじゃないか。 繁盛して何よりだな!! 毎日違うとこにいるもんだから探すのが一苦労だぜ」
「あはは、それはお手間をお掛けしてすいません。 ですが本日でピンサンドベアの在庫がなくなりそうなので試しにブロックも買っていきませんか? お得ですよ?」
「ハハハハッ!! 全く商売上手にも程があるぜ!! 作ってくれるかみさんが居ないんじゃ買ってもしゃーないだろ」
「あ……それは、無粋なことを言ってすいません」
「いやいや、アンタは悪かぁねぇよ!! でもそうか、今日でこんな上手いもん食えるのも最後なんてな……」
「……ちなみに、干し肉として加工してある肉もあるんですが、晩酌のお供としてお一ついかがです?」
常連の男性は一瞬呆気にとられ、次の瞬間大声で笑い出す。
「ハハハハハッ!! ハッ、ハハハッ、ヒィ~~~ッ!! 兄ちゃんアンタも大概だな」
「ここまで来たら完売させたいので、どなたにでも売り付け……ウェルカムですよ~!」
「ハハハッ、いい心構えだな!! はぁ~ しゃあねぇなぁ~ ブロックと干し肉一つずつ貰うとするか。 肉はただ焼けば食えるんだろ?」
「はい、あとはあればコショウなどで香り付けするとアクセントになって酒にも合いますよ」
「おう、そうか! もう直接兄ちゃんから買えないのは残念だが、ちびちび味わうとするよ」
「はい、こちらこそ。 ご満足いただけて幸いです、いつもご利用いただきましてありがとうございました」
片手をあげギリギリまで手を振る気前のいいお客さんを最後に、ピンサンドベアの商品は完売。
残るはサンダーラビットのスープが各々5、6食程度か。
加工された肉はほとんどが売れて、意外と薬草系の商品も全て売れた。
単純にスパイスや味付けでブレンドした香草系のものは売れると思ったが、まさか薬草の方まで需要があるとは思わなかった。
ピコンッ ピリュリリランッ ピュルリン!
【一般の方々は通常の薬草や薬といった高価なものが手に入りにくい分、調理などに使われる香草や薬草などで病気や持病、怪我などの対応をしております】
「あっ、そうなんだ? 冒険者やってたくせに知らなかったわ~」
ピコンッ ピリュルンッ ピポポンッ!
【バカは風邪を引か……いえ、なんでもありません】
「言いたいことがあるならはっきり言えや 買うよ? 喧嘩買うよ???」
ピンッ
【…………】
「無視すんなよぉぉぉ~~~!!」
ピコンッ ピュリパポンッ パピィンッ!
【そんなことより片付けを】
「あ、話そらした! んもぉ~、しょうがないわねぇ……って、あれ?」
目線の少し先にはこの街では珍しい特徴的な耳と白金色の髪を持つエルフと思われる青年がおり、フラフラとした足取りでこちらに向かってきていた。
この店に用があるのだと察し、覚束ない足取りの青年に急いで駆け寄り話しかける。
「大丈夫ですか?」
「っ……た」
「え?」
「やっと見つけました……」
そういうと彼は力尽きたかのようにこちらに倒れ込み、遠目で見たよりもスラリと高い身長と長い手足を玲奈に身体を預け軽く気を失ったようだった。
「えっ、えぇ……」
流石の玲奈も困惑し、とりあえず休憩に使っていた木箱を並べ簡易ベッドを作り彼を横にさせた。
「めっちゃ睫毛なげぇわ」
魔属で、森の大賢者とも呼ばれる誇り高い種族のエルフ。滅多に魔属の住まう大陸の森から出たがることのないエルフがなぜこんな辺鄙な街でうろついてるのか気になるとこだったが、とりあえず非常事態だし状態表示で身体の不調を確認する。
「……ん?」
確認していくがなにも異常はない。
病気や怪我、急性的な疾患も無いようだ。
その時どこからともなく盛大な低い、響くような音がなった。
「は?」
よく見てみると胃腸の辺りが強く収縮してる。もしや、これは____
「ただの腹ペコかいっ!!!!」
「よっしゃぁ~~~!!!! あと少しぃ~~~!!!!」
連日の激込み具合が多少落ち着き、休憩を挟みつつ残りの食材の下処理に取りかかる。
ある程度終わったら開店準備をし、試食用のサンダーラビットのトマト煮込みのスープと別のホワイトソースの2種類とジャーマンポテト(※ピンサンドベアの馬鈴薯焼き)を用意する。
そしてピンサンドベアの串焼きとセットでサンドして食べる用のパンも追加しオープンする。
お客さんにオーダーされればトッピングも可能な仕様になっており、人気の高い注文の一つだった。
昼のピークが過ぎ日が傾いてきた頃、ピンサンドベアの肉がなくなりかけてきて、横にあるスープとその他の加工品でラストにしようと在庫の点検をしていると、毎日違う場所でやってるというのにいつも足繁く通ってくれる常連さんが来た。
「おう、兄ちゃん。ピンサンドベアの串焼きとバゲット、それからチーズとオニオンも3つずつ頼む! あとスープの容器少し足りなくなってるぜ」
「いつもありがとうございます。 本当だ、あとで補充しますね」
「いやぁー、もう殆どないじゃないか。 繁盛して何よりだな!! 毎日違うとこにいるもんだから探すのが一苦労だぜ」
「あはは、それはお手間をお掛けしてすいません。 ですが本日でピンサンドベアの在庫がなくなりそうなので試しにブロックも買っていきませんか? お得ですよ?」
「ハハハハッ!! 全く商売上手にも程があるぜ!! 作ってくれるかみさんが居ないんじゃ買ってもしゃーないだろ」
「あ……それは、無粋なことを言ってすいません」
「いやいや、アンタは悪かぁねぇよ!! でもそうか、今日でこんな上手いもん食えるのも最後なんてな……」
「……ちなみに、干し肉として加工してある肉もあるんですが、晩酌のお供としてお一ついかがです?」
常連の男性は一瞬呆気にとられ、次の瞬間大声で笑い出す。
「ハハハハハッ!! ハッ、ハハハッ、ヒィ~~~ッ!! 兄ちゃんアンタも大概だな」
「ここまで来たら完売させたいので、どなたにでも売り付け……ウェルカムですよ~!」
「ハハハッ、いい心構えだな!! はぁ~ しゃあねぇなぁ~ ブロックと干し肉一つずつ貰うとするか。 肉はただ焼けば食えるんだろ?」
「はい、あとはあればコショウなどで香り付けするとアクセントになって酒にも合いますよ」
「おう、そうか! もう直接兄ちゃんから買えないのは残念だが、ちびちび味わうとするよ」
「はい、こちらこそ。 ご満足いただけて幸いです、いつもご利用いただきましてありがとうございました」
片手をあげギリギリまで手を振る気前のいいお客さんを最後に、ピンサンドベアの商品は完売。
残るはサンダーラビットのスープが各々5、6食程度か。
加工された肉はほとんどが売れて、意外と薬草系の商品も全て売れた。
単純にスパイスや味付けでブレンドした香草系のものは売れると思ったが、まさか薬草の方まで需要があるとは思わなかった。
ピコンッ ピリュリリランッ ピュルリン!
【一般の方々は通常の薬草や薬といった高価なものが手に入りにくい分、調理などに使われる香草や薬草などで病気や持病、怪我などの対応をしております】
「あっ、そうなんだ? 冒険者やってたくせに知らなかったわ~」
ピコンッ ピリュルンッ ピポポンッ!
【バカは風邪を引か……いえ、なんでもありません】
「言いたいことがあるならはっきり言えや 買うよ? 喧嘩買うよ???」
ピンッ
【…………】
「無視すんなよぉぉぉ~~~!!」
ピコンッ ピュリパポンッ パピィンッ!
【そんなことより片付けを】
「あ、話そらした! んもぉ~、しょうがないわねぇ……って、あれ?」
目線の少し先にはこの街では珍しい特徴的な耳と白金色の髪を持つエルフと思われる青年がおり、フラフラとした足取りでこちらに向かってきていた。
この店に用があるのだと察し、覚束ない足取りの青年に急いで駆け寄り話しかける。
「大丈夫ですか?」
「っ……た」
「え?」
「やっと見つけました……」
そういうと彼は力尽きたかのようにこちらに倒れ込み、遠目で見たよりもスラリと高い身長と長い手足を玲奈に身体を預け軽く気を失ったようだった。
「えっ、えぇ……」
流石の玲奈も困惑し、とりあえず休憩に使っていた木箱を並べ簡易ベッドを作り彼を横にさせた。
「めっちゃ睫毛なげぇわ」
魔属で、森の大賢者とも呼ばれる誇り高い種族のエルフ。滅多に魔属の住まう大陸の森から出たがることのないエルフがなぜこんな辺鄙な街でうろついてるのか気になるとこだったが、とりあえず非常事態だし状態表示で身体の不調を確認する。
「……ん?」
確認していくがなにも異常はない。
病気や怪我、急性的な疾患も無いようだ。
その時どこからともなく盛大な低い、響くような音がなった。
「は?」
よく見てみると胃腸の辺りが強く収縮してる。もしや、これは____
「ただの腹ペコかいっ!!!!」
176
お気に入りに追加
1,683
あなたにおすすめの小説
旦那様が多すぎて困っています!? 〜逆ハー異世界ラブコメ〜
ことりとりとん
恋愛
男女比8:1の逆ハーレム異世界に転移してしまった女子大生・大森泉
転移早々旦那さんが6人もできて、しかも魔力無限チートがあると教えられて!?
のんびりまったり暮らしたいのにいつの間にか国を救うハメになりました……
イケメン山盛りの逆ハーです
前半はラブラブまったりの予定。後半で主人公が頑張ります
小説家になろう、カクヨムに転載しています
10歳で記憶喪失になったけど、チート従魔たちと異世界ライフを楽しみます(リメイク版)
犬社護
ファンタジー
10歳の咲耶(さや)は家族とのキャンプ旅行で就寝中、豪雨の影響で発生した土石流に巻き込まれてしまう。
意識が浮上して目覚めると、そこは森の中。
彼女は10歳の見知らぬ少女となっており、その子の記憶も喪失していたことで、自分が異世界に転生していることにも気づかず、何故深い森の中にいるのかもわからないまま途方に暮れてしまう。
そんな状況の中、森で知り合った冒険者ベイツと霊鳥ルウリと出会ったことで、彼女は徐々に自分の置かれている状況を把握していく。持ち前の明るくてのほほんとしたマイペースな性格もあって、咲耶は前世の知識を駆使して、徐々に異世界にも慣れていくのだが、そんな彼女に転機が訪れる。それ以降、これまで不明だった咲耶自身の力も解放され、様々な人々や精霊、魔物たちと出会い愛されていく。
これは、ちょっぴり天然な《咲耶》とチート従魔たちとのまったり異世界物語。
○○○
旧版を基に再編集しています。
第二章(16話付近)以降、完全オリジナルとなります。
旧版に関しては、8月1日に削除予定なのでご注意ください。
この作品は、ノベルアップ+にも投稿しています。
抱かれたい騎士No.1と抱かれたく無い騎士No.1に溺愛されてます。どうすればいいでしょうか!?
ゆきりん(安室 雪)
恋愛
ヴァンクリーフ騎士団には見目麗しい抱かれたい男No.1と、絶対零度の鋭い視線を持つ抱かれたく無い男No.1いる。
そんな騎士団の寮の厨房で働くジュリアは何故かその2人のお世話係に任命されてしまう。どうして!?
貧乏男爵令嬢ですが、家の借金返済の為に、頑張って働きますっ!
異世界転生してしまったがさすがにこれはおかしい
増月ヒラナ
ファンタジー
不慮の事故により死んだ主人公 神田玲。
目覚めたら見知らぬ光景が広がっていた
3歳になるころ、母に催促されステータスを確認したところ
いくらなんでもこれはおかしいだろ!
逃げて、追われて、捕まって
あみにあ
恋愛
平民に生まれた私には、なぜか生まれる前の記憶があった。
この世界で王妃として生きてきた記憶。
過去の私は貴族社会の頂点に立ち、さながら悪役令嬢のような存在だった。
人を蹴落とし、気に食わない女を断罪し、今思えばひどい令嬢だったと思うわ。
だから今度は平民としての幸せをつかみたい、そう願っていたはずなのに、一体全体どうしてこんな事になってしまたのかしら……。
2020年1月5日より 番外編:続編随時アップ
2020年1月28日より 続編となります第二章スタートです。
**********お知らせ***********
2020年 1月末 レジーナブックス 様より書籍化します。
それに伴い短編で掲載している以外の話をレンタルと致します。
ご理解ご了承の程、宜しくお願い致します。
美醜逆転異世界で、非モテなのに前向きな騎士様が素敵です
花野はる
恋愛
先祖返りで醜い容貌に生まれてしまったセドリック・ローランド、18歳は非モテの騎士副団長。
けれども曽祖父が同じ醜さでありながら、愛する人と幸せな一生を送ったと祖父から聞いて育ったセドリックは、顔を隠すことなく前向きに希望を持って生きている。けれどやはりこの世界の女性からは忌み嫌われ、中身を見ようとしてくれる人はいない。
そんな中、セドリックの元に異世界の稀人がやって来た!外見はこんなでも、中身で勝負し、専属護衛になりたいと頑張るセドリックだが……。
醜いイケメン騎士とぽっちゃり喪女のラブストーリーです。
多分短い話になると思われます。
サクサク読めるように、一話ずつを短めにしてみました。
転生幼女のチートな悠々自適生活〜伝統魔法を使い続けていたら気づけば賢者になっていた〜
犬社護
ファンタジー
ユミル(4歳)は気がついたら、崖下にある森の中にいた。
馬車が崖下に落下した影響で、前世の記憶を思い出す。周囲には散乱した荷物だけでなく、さっきまで会話していた家族が横たわっており、自分だけ助かっていることにショックを受ける。
大雨の中を泣き叫んでいる時、1体の小さな精霊カーバンクルが現れる。前世もふもふ好きだったユミルは、もふもふ精霊と会話することで悲しみも和らぎ、互いに打ち解けることに成功する。
精霊カーバンクルと仲良くなったことで、彼女は日本古来の伝統に関わる魔法を習得するのだが、チート魔法のせいで色々やらかしていく。まわりの精霊や街に住む平民や貴族達もそれに振り回されるものの、愛くるしく天真爛漫な彼女を見ることで、皆がほっこり心を癒されていく。
人々や精霊に愛されていくユミルは、伝統魔法で仲間たちと悠々自適な生活を目指します。
幼女に転生したらイケメン冒険者パーティーに保護&溺愛されています
ひなた
ファンタジー
死んだと思ったら
目の前に神様がいて、
剣と魔法のファンタジー異世界に転生することに!
魔法のチート能力をもらったものの、
いざ転生したら10歳の幼女だし、草原にぼっちだし、いきなり魔物でるし、
魔力はあって魔法適正もあるのに肝心の使い方はわからないし で転生早々大ピンチ!
そんなピンチを救ってくれたのは
イケメン冒険者3人組。
その3人に保護されつつパーティーメンバーとして冒険者登録することに!
日々の疲労の癒しとしてイケメン3人に可愛いがられる毎日が、始まりました。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる