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25話 美味しいんじゃないですか

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 ある日の朝、鎖骨当たりに妙な痣が出来ていてどこかにぶつけた覚えもないし、あの人だって案外夜の方も手荒なことはしないから触っても痛くはないし、そのままにしておいたの。

 そうしたら日に日にその痣は増え広がり、とうとう彼にも気づかれた。





「アメリア、お前それどうしたんだ」

「んー、それが覚えがないのよ。 気味が悪いわ」

「妙なアザだな……明日傷に効く薬を買ってくる」

「ゲルグ ありがとう、助かるわ」





 次の日彼は約束通り薬を買ってきてくれて、塗り薬と飲み薬があったから日に二度飲み、様子をみた。

 だが数日が立って悪化していく痣と、最初に無かった痛みや熱が出て、明らかにおかしいと思っていたところ、彼は形相を変えて慌てた様子で私の元へと訪れた。

「ゲル……グ、ごめんなさいね……こんな、格好で」

「……いッ」

「え?」

「すまない……アメリアッ……すまないっ…………!!!!」

 普段泣き言ひとつ溢さない彼が、私のために涙し子どものように抱きついてきて、ただならぬ予感がした。

 でも、それ以上に彼を悲しませたくなくて__





「大丈夫よ、大丈夫」





 だから一つ、私は覚悟を決めた__





 口が悪くて不器用で、優しくて寂しがり屋で、変なところで真面目で優柔不断なこの人を、絶対に一人ぼっちになんてさせない。





「なにがあっても私はあなたのことを愛してるんだから」





 絶対に独りでなんて逝ってなんかやらないわ。





######





 あの人が……あの人がもうすぐ私のところに帰ってくる。

 楽しみ、凄く楽しみなの……ずっとずっと待ち遠しかった。

 あの人は妙な虫に着かれやすいから私がちゃんと払い除けてあげないと。

 でも……最近あの人の態度がそっけない気がするのは彼の周りにうろつくあのウジ女のせいよ。

 きっと私を気にかけてわざとそっけない態度を取ってるんだわ。

 それもこれもきっと、あのウジ女が無い力を使って報復してくるのを気にかけてるんだわ。

 あの人は優しいからそうせざるを得ないのね。

 フフフッ、不器用なひと。





 でも__絶対に彼は私のところに帰ってくるわ。





 あんなウジ女なんかより、魔力も多くて珍しい呪魔法と傀儡スキルを持った私こそがあの人にふさわしいの。





 だから、あんなクソ女なんて____





「いつ消えたって構いはしないわ」




 だって、私があの人の一番であることは代わりないもの。





######





 レーナが転移の魔法を施したクォーツの魔道具を手渡してきた時はかなり肝を冷やした。

 レーナが言っていたことが本当なら石そのものは大して値が張るものではないはずだが……輝きを放つそれは褐色に近い俺の小麦の肌の上では妙に輝いていて、どんなに値が張る鉱物でも見劣りするような強さと美しさが兼ね備わっている。

 普段そういったものに関心などないが、複雑な魔法が組み込まれたこの魔道具……レーナが作ったこれだけは目が離せなかった。

 普通に下ろせば数ネリ~数百キュルは下らない。下手を打てば素人目にも分かる国宝級の代物だ。

 それをポンっと渡してくるアイツの気が知れない。

 ……だが、そんなレーナのお陰でなんとか呪いを打開できそうなのがなんとも恨めがましい。





 アメリアの為なら奴隷にでも堕ちてもいいと思ったが____





「はっ……アイツ見てると、そんな気すら起きねぇわ」





 俺の命よりも大事なアメリアを助けるって言うんだ、アイツの言う通り下手に身を投げなくて良かったと心の底からそう思う。





「…………リィームを頼むぞ」





 ちびの頃は可愛げのあったガキだったが、いまはもう……あの女を妹分として見れない。

 自分の代わりにレーナがどうにかあの女自身の呪いを解いてくれると願うばかりだが……仮にも長年世話した妹分を思うと無力な自分が情けない。

 だか、それでもアイツより……アメリアの方が一等大事なのには変わりがないんだ。





######





 ガウル王国まで足を運ぶ道中、玲奈は立ち寄った町で屋台の一角を陣取っていた。





「うぉ~~~!!!! この肉うめぇぇぇ!!!! 兄ちゃん、あと5本くれ!!!!」

「私も3本!!」

「僕にも!!」

「ただいま焼き上げていますので、少々お待ちください」





 なぜこうなったかと言うと、時間を遡ること二日前____





「あ~、なんかスキルで作る料理……おいしいけど、なんかなぁ~~~」





 わざわざ少し遠回りをして、人目につきにくい獣道を歩みながら玲奈は出くわした魔獣や森の獣たちをなぎ倒していきながら食べるものについて考える。

「んー、実際あんまり獣の肉とか下ろす分には捌くけど自分が食べる分にはあんまりチャレンジしたこと無いんだよなぁ……表示ちゃーん、これ美味しいかなぁ?」

 ピコンッ ピンピピンッ コンッ!

【美味しいんじゃないですか】

「ねぇ~、ごめんって。 もう機嫌直してよ~……この間ほんと、マジ無視した訳じゃなくて!! ゲルグさんと話夢中になっただけなんだよ~~~ いやでも……あの、ちゃんと反省してます」

 ピコンッ ピュンピュピュン ピュリンッ!

【別に怒っているわけではありませんので、お気になさらず】

「気にするってばぁ~~~」

 ピコンッ ピピリンッ ピルロンッ!

【そちらのサンダーラビットは血抜きの際、頸動脈から毒が漏れだす可能性があるので注意が必要ですが味はすり下ろした魚に近く、美味です。 ピンサンドベアは独特な臭いが強く、下処理を入念に油を取り除いた調理法が望ましいです。 味はベーコンに近いかと】

「マジ!!? 熊いいな、熊!! でもデカいし、数が多すぎるんだよなぁ……70頭だよ~~~ ど~う~し~よ~う~っ♪」

 ピコンッ ピピンッ ピリヌンッ!

【……調理加工し、残り分を販売なされば良いかと】

「それだ、ナイス表示ちゃん~!! あ、許可証貰わないと」

 ピコンッ ピピピリン キュプッ!

【そちらは必要ありません。 強いて言うなれば、以前働いた食堂又はレストランでの証明書を掲示すればそ、ちらを店のブランドとして提示することが可能です】

「ふーん? そんなもんなんだ。 ここは保健所とかないんだね」

 ピコンッ リリップィン プィ

【検査や検問が必要なものは貴族街での販売や、貿易街に準ずる場所、個人店として営業している店のみですね。 露店での販売はそれに該当しません】

「ふーん? なるなる。 まぁ、そもそもこの世界って意外とファンタジー作品とかでよく見かける露店販売そのものが少ないもんね。 あったとしても、まだまだ駆け出しのお店とか資金集め的なやつか……」

 そこまで考えて、軽く手持ちの素材や魔獣の肉などを思い浮かべる。

 いくら生活魔法で収納が可能とは言え、ここ半年くらい放置してる肉や魚、香草などの食べ物類をこれ以上放置するのは気持ち的によろしくない。

 まぁ、収納したらその状態で保存されるし気のせいなのは分かるけど、私の精神衛生上よろしくない。

 もうほんと、一刻も早く消費しちゃいたい。





「ん~っ!! んじゃ、次の街で屋台でも出してみようかなぁ。 そうだ、なんなら売れるまで帰れまてん的な」





 とこのように、いつものようにノリで決めノリで商品を作り、ノリで販売を始めた玲奈であった。





######

通貨

▲ペリト▶️1~999円
▲テペ▶️千円~

○ネリ▶️一万円~
○キュル▶️百万円~
○ゼネ▶️千万~
○オリバ▶️億~

▲一般通貨(一般に普及してる通貨)
○商業通貨&貴族通貨(額の大きい通貨)
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