お風呂で溺死したら異世界転移!? まぁ、なんとかなるか!!

鯨クジラ

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17話 アンタは、何者だ?

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 以前ギルドの依頼でとある村で譲って貰った木の実を自分用にも何個か頂戴し、自身のスキル生成で作成した模倣で複製して、絞り出した液体を抽出し、その木の実の効果を拡張と調合で生成して目の前の怪我人の傷口に当てる。

 この実は麻酔に近い役割を果たす木の実で、直で触ると手の痺れが生じる。

 だがこの木の実を解析した結果、私の魔法やポーションなどで直接傷や怪我を修復するより、怪我を治した直後の精神や神経ダメージへの軽減が期待できた為、怪我の度合いが大きければ魔法やポーションを使用する前に使うようにしている。

 テレポートで駆けつけたあと、眼前には左腕がちぎれ落ちそうになりつつも狂ったように戦闘を続けている血まみれの冒険者と思われる男性がいた。

 彼の元へ駆け寄り、少し手荒だがこれ以上は命の危険だと判断して彼を状態維持と昏睡結界を使用して眠らせ、体長約10mはあるであろう岩の鎧で身体を覆うような首の長い魔獣の急所に狙い定め、一撃で仕留める。

 魔獣が攻撃を仕掛けようとしたが時既に遅く、魔獣自身が一撃で仕留められたことに気づかずその場で倒れ霧消していった。

 残った魔獣の核を摘出し、辺りに蔓延する膨大な魔獣の魔力残滓を浄化し、ついでに前回ガナス平野で失態したことを思い出して自分の魔力の形跡も消していく。

 今回はぶっちゃけ急いでたから普通にバレちゃアカンタイプのスキル魔法で一点集中で仕留めちゃったからバレると不味い。

 それらが片付き再び男性の元へと駆け寄り、容態を確認していく。

 やはり左腕は取れ掛かっており、他には下腹部にも魔獣の攻撃を食らったのか肉が抉られむしろよくここまで耐えたものだと感心すら覚えた。

 あのレベルの魔獣を一人で相手取っていたなら、かなり実力ある冒険者だと思い至り、少し考えて治癒魔法を使ったことがバレると後々めんどうかもしれないのでありったけのポーションを傷口に掛け、回復ポーションを少しずつ時間を掛けて口に含ませる。

 呼吸も安定し顔色も良くなったことを確認して、彼が起きる前に安全な場所に移動して他の生存者の元へポーションを配りに行こうとマップを頼りに山を下った。

 普通に持ち上げられるけど、単純に自分より身体のデカい男一人抱えるのが手間で途中普通にテレポートで移動した。





 比較的被害の少ない集落の民家を借り他の住民を誘導して怪我の治療や被害状況の確認をし、あたかも荷物として持ってきた装いでこっそり作った鞄から荷物を出すフリをしながらスキルで生成した食べ物や薬などを支給して回った。

 流石に治癒魔法を大っぴらに使うことも出来ないので、シャルネさんに以前教えて貰った一般的な魔薬を調合していき怪我の大きな人にはポーションを、軽度なら調薬を渡していき、いつの間にか辺りは暗くなっており、あの魔獣と戦っていた彼の存在を思い出してそちらへ足を運んだ。





 彼を預かって貰ってる民家の元に行き、家主に挨拶を済ませて中へ入ると彼は既に起き上がっていて、こちらを真っ直ぐと見据えて口を開いた。

「アンタは、何者だ?」

「開口一番がそれって……すっかり元気で安心しました」

「はぐらかすな」

 随分と威勢のいい挨拶を貰って、彼の近くにあった椅子に腰かける。

「私もようやく一段落付いたところなので少し休憩させてください。 話はそれからでもいいですか?」

「チッ………………あん時は、助かった。 恩に着る」

 彼はこちらを睨み付けるように見据えると、不意に窓の外に視線を移し少しの間無言の時間が続いた。

 ツンデレかって。





######





 目が覚めたとき、あの魔獣__瓦石竜プレツィヌスの攻撃で腕が捥げ、肉が剥き出しになった腹を晒し、どう足掻いても死は免れないあの戦況の中、一筋の希望になったあの少年の声を思い出した。

 死を覚悟し、もうこのままあの少年に委ねようと俺は意識を飛ばすと、いつの間にか運ばれていた民家で遅い来るはずの痛みかないことを不思議に思い、失くしたはずの左腕と剥き出しの腹を覗く。

 すると右手は繋がり腹はなにもなかったかのように傷跡一つ残らず綺麗に塞っており愕然とした。

 アイツは一体、何者なんだ。

 そこで、一つの可能性が思い当たる。





 もしや、もしやするとアイツが__





 深い呼吸を一つして、上半身を起き上がらせる。

 怪我も治り、身体の調子も問題ない、あの魔獣を倒すだけの実力に深く被ったフードから出されたあの脳裏まで残る低いとも高いとも取れない優しげな声。

 耳を澄ますと外から誰かの話し声が聞こえ、その一つについ今しがた考えていた少年の声も混ざっていた。

 ドアが静かに開き、部屋の中へ音も立てずに入る華奢な少年に向き直る。

「__アンタは、何者だ?」





######




 あ~~~、焦るわぁ~~~。
 そらそうなるわな、腕もお腹も治ってるもんね!!?! なんなら魔獣も倒してたもんねわたし!!!!

 どんなに魔法の形跡消そうと、見られて直して集落の復旧手伝ってたらそりゃ誰でもそうなるわ!!!! 私のアホ~~~っ!!!!!!

 まぁ、疲れてたのは本当だし、ぶっちゃけ起きた男性の眼光が鋭すぎてむしろ魔獣と戦ってるあの狂気的な姿が可愛く思えてきたよ。

 あっ、疲れたってのは身体的とかそういうのじゃなくてメンタル的なあれ。

 流石にね? さっすがにねぇ?? 私も日本ならグロ規制タイプのR18な場面に遭遇するなんて思わなくてさ……うら若き10代の乙女には中々来るものがありまして。

 おい誰だ私をそんな目で見るヤツ。
 魔獣は殺せても人の死体は見れねぇのかって? 

 見れねぇよ!!!!

 出てこいやお前をしばいて私は泣いてやる。

 そういやなんか最近眼光鋭い強面な男の人ばっかりに会うな!!?!

 まぁ、冒険者なんて強面集団だけどさぁ~~~

 今回はもうぶっちゃけ男性の名前もランクもスキルも全部分かっちゃってるのよ。

 いやね? 覗き見する気は勿論なかったよ???

 でも、流石に周辺の被害を減らすためにも魔獣の属性とか見ておきたいじゃん????

 あんだけ図体も魔力も強くて万が一にも呪属性の魔法でも持ってて、死に際に呪詛でも残されたらたらひとたまりもないし。

 マジで!!!!
 本気と書いてガチで!!!!

 というのも、今回の魔獣は初めて相手するやつで勝手知らぬ相手で被害が大きかったのもありざっくり情報だけ入手して殺してしまいたかったのが本音である。

 そんで、この男性__Aランク冒険者のゲルグ・モーラントさんになんて説明するかなぁ。

 助けて、シャルネさん…………。
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