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16話 ミャクレグの実
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母さんは元々身体が弱くて、脚もあまり良くなかったから普段家から出ることはなく、父さんが死んで兄弟三人で母さんを支えようって決めた。
兄弟の中で一番年下な僕は普段は母さんや畑の世話をして過ごしていた。
その日は夕飯に出す分のパンが少なくて、夕食の準備をしてる母さんに一言告げてコインを握りしめて急いで買い物に出掛けた。
いつものパン屋のおばさんが1個パンをおまけしてくれて、お礼をいって店を出た。
辺りがオレンジ掛かってきたから早く家へ戻ろうと早足で歩いてると、道を逸れた茂みの奥にここら辺では見かけない僕の6つ上の兄さんと同じくらいのちょっと青み掛かったグレーの髪の男の子がいた。
僕はなんとなくその子の近くに行って声をかけてみたんだ。
「どうしたの? となりの村の子? そこになにかあるの?」
その子がこちらに振り向き、すこし驚いた様子で僕を見てきた。
「……こんにちは、君はおつかいかな? 私も"おつかい"を頼まれてるんだ。 君はなにを買ったの?」
「こんにちは! うん、僕もおつかいでね、パンを買ってきたんだ~ 今日のごはんでね、夕食の分がすこし足りなかったから一人で買ったの」
「あははっ、そっか偉いね。 ところで、この村にある黄色い木の実で、ミャクレグってやつ知らないかな? 私はそれを探してるんだ」
男の子はこれくらいのって指を丸くして伝えてきて、たしかミャークの実を他のとこだとミャクレグって言うっていつか兄さん達が言ってたからその子の手を引っ張って引き連れる。
「ミャクレグの実、僕の家の畑になってるよ! 分けてあげるからついてきて」
家に帰ってパンを置いて、母さんにお客さんが来てるから畑の木の実を分けてあげていいか聞いたら普段見たことのない硬い表情でその子を家に上げるよう言われて、少し不安になった僕はなにか悪いことをしたんじゃないかと思って恐る恐るその子を呼びに行った。
「お邪魔します。 ミャクレグの実を少し分けて欲しいのですが、よろしいでしょうか?」
「構わないけど……あれをなにに使うの? あの実は触ると手が痺れてしまうわよ?」
「ありがとうございます。 実はギルドで依頼された任務で探し回ってたんですけど、なかなか見つからなくて……本当に助かります」
「えっ!? あら、そうなの……私てっきり……ごめんなさいねっ、そうだ夕飯一緒にいかが?」
「いえいえ、そんな。 急にお邪魔したのに悪いですし木の実だけ頂戴したらお暇します」
「そう? ならエル、畑につれていってあげて」
先程とは打って変わっていつも通りの母に、なにが起こったのか良く分からずに男の子を連れて畑に案内した。
「これだよ! 触ると危ないから気をつけてね」
「ありがとう」
小さな麻布をひっくり返して何個かミャクレグの実を採って、マントの内側にあった腰掛け鞄に閉まった。
「じゃあ僕もう行くね!」
「待って、これお礼に」
「なぁに、これ?」
「こっちは砂糖を溶かして固めたお菓子、こっちは君のお母さんに」
「お砂糖!? やったぁ~~~っ!! お兄ちゃんありがとう」
「うん、お母さんにもよろしく伝えて」
「はーい、バイバイお兄ちゃん!! あれっ?」
透明な黄色の塊が入った小さな紙袋と、もう1つはなにか飲み物?で、綺麗な薄いオレンジ色の液体を受け取っているうちに、その子は居なくなってた。
驚いて畑の隅々まで探したけど結局見つからなくて、そのまま家へ戻る。
「ただいまー」
「おかえり、さっきの子は帰っちゃったの?」
「うん。 あっ、これ! あの子が母さんにってくれたよ~ あとお砂糖のお菓子もくれちゃった!!」
「えぇっ!? そんな高級品……あら、これは……」
「なんか母さんによろしくって」
「そうなの、だったら後で頂こうかしら」
それから夕食の支度を終え、兄さん達も帰ってきて今日あった出来事を話して、透明な黄色の塊を口に入れる。
兄さん達にも分けてあげると、こんな高級品一生に一度食えるかだなって笑いながら甘いお菓子を口の中手転がした。
母さんは突然立ち上がって、僕も兄さん達も驚いて母さんを見つめると聞き取れないくらい小さな声でなにかを呟いた。
「母さんどこか具合悪いのか? 部屋に戻ろう。 アル、片付け頼む」
「あぁ、分かった」
「____治った」
「え?」
僕たち三人は一瞬その言葉の意味が分からず誰ともなく母に聞き返すと「__脚が、治ったわ」と母さん本人も驚いた様子で自身の足元に目を向けていた。
それから前まで引きずって歩いていた脚を普通に動かし、身体の調子もいままでで一番いいとのことで僕たち三人と母さんもみんな喜んだ。
それから母さんは父さんがいないから街で仕事をすることはできないけど、近所の手芸工房で手伝いをしながら暮らしている。
僕らが大人になって、母さんの保護が出きるようになったら母さんも普通に外で働けるようになる。
早く大人になりたいなぁ~~~!!
でも、あのときなんで母さんがあの男の子にミャクレグの実をあげるのを渋っていたのかは結局分からず終いだった____
兄弟の中で一番年下な僕は普段は母さんや畑の世話をして過ごしていた。
その日は夕飯に出す分のパンが少なくて、夕食の準備をしてる母さんに一言告げてコインを握りしめて急いで買い物に出掛けた。
いつものパン屋のおばさんが1個パンをおまけしてくれて、お礼をいって店を出た。
辺りがオレンジ掛かってきたから早く家へ戻ろうと早足で歩いてると、道を逸れた茂みの奥にここら辺では見かけない僕の6つ上の兄さんと同じくらいのちょっと青み掛かったグレーの髪の男の子がいた。
僕はなんとなくその子の近くに行って声をかけてみたんだ。
「どうしたの? となりの村の子? そこになにかあるの?」
その子がこちらに振り向き、すこし驚いた様子で僕を見てきた。
「……こんにちは、君はおつかいかな? 私も"おつかい"を頼まれてるんだ。 君はなにを買ったの?」
「こんにちは! うん、僕もおつかいでね、パンを買ってきたんだ~ 今日のごはんでね、夕食の分がすこし足りなかったから一人で買ったの」
「あははっ、そっか偉いね。 ところで、この村にある黄色い木の実で、ミャクレグってやつ知らないかな? 私はそれを探してるんだ」
男の子はこれくらいのって指を丸くして伝えてきて、たしかミャークの実を他のとこだとミャクレグって言うっていつか兄さん達が言ってたからその子の手を引っ張って引き連れる。
「ミャクレグの実、僕の家の畑になってるよ! 分けてあげるからついてきて」
家に帰ってパンを置いて、母さんにお客さんが来てるから畑の木の実を分けてあげていいか聞いたら普段見たことのない硬い表情でその子を家に上げるよう言われて、少し不安になった僕はなにか悪いことをしたんじゃないかと思って恐る恐るその子を呼びに行った。
「お邪魔します。 ミャクレグの実を少し分けて欲しいのですが、よろしいでしょうか?」
「構わないけど……あれをなにに使うの? あの実は触ると手が痺れてしまうわよ?」
「ありがとうございます。 実はギルドで依頼された任務で探し回ってたんですけど、なかなか見つからなくて……本当に助かります」
「えっ!? あら、そうなの……私てっきり……ごめんなさいねっ、そうだ夕飯一緒にいかが?」
「いえいえ、そんな。 急にお邪魔したのに悪いですし木の実だけ頂戴したらお暇します」
「そう? ならエル、畑につれていってあげて」
先程とは打って変わっていつも通りの母に、なにが起こったのか良く分からずに男の子を連れて畑に案内した。
「これだよ! 触ると危ないから気をつけてね」
「ありがとう」
小さな麻布をひっくり返して何個かミャクレグの実を採って、マントの内側にあった腰掛け鞄に閉まった。
「じゃあ僕もう行くね!」
「待って、これお礼に」
「なぁに、これ?」
「こっちは砂糖を溶かして固めたお菓子、こっちは君のお母さんに」
「お砂糖!? やったぁ~~~っ!! お兄ちゃんありがとう」
「うん、お母さんにもよろしく伝えて」
「はーい、バイバイお兄ちゃん!! あれっ?」
透明な黄色の塊が入った小さな紙袋と、もう1つはなにか飲み物?で、綺麗な薄いオレンジ色の液体を受け取っているうちに、その子は居なくなってた。
驚いて畑の隅々まで探したけど結局見つからなくて、そのまま家へ戻る。
「ただいまー」
「おかえり、さっきの子は帰っちゃったの?」
「うん。 あっ、これ! あの子が母さんにってくれたよ~ あとお砂糖のお菓子もくれちゃった!!」
「えぇっ!? そんな高級品……あら、これは……」
「なんか母さんによろしくって」
「そうなの、だったら後で頂こうかしら」
それから夕食の支度を終え、兄さん達も帰ってきて今日あった出来事を話して、透明な黄色の塊を口に入れる。
兄さん達にも分けてあげると、こんな高級品一生に一度食えるかだなって笑いながら甘いお菓子を口の中手転がした。
母さんは突然立ち上がって、僕も兄さん達も驚いて母さんを見つめると聞き取れないくらい小さな声でなにかを呟いた。
「母さんどこか具合悪いのか? 部屋に戻ろう。 アル、片付け頼む」
「あぁ、分かった」
「____治った」
「え?」
僕たち三人は一瞬その言葉の意味が分からず誰ともなく母に聞き返すと「__脚が、治ったわ」と母さん本人も驚いた様子で自身の足元に目を向けていた。
それから前まで引きずって歩いていた脚を普通に動かし、身体の調子もいままでで一番いいとのことで僕たち三人と母さんもみんな喜んだ。
それから母さんは父さんがいないから街で仕事をすることはできないけど、近所の手芸工房で手伝いをしながら暮らしている。
僕らが大人になって、母さんの保護が出きるようになったら母さんも普通に外で働けるようになる。
早く大人になりたいなぁ~~~!!
でも、あのときなんで母さんがあの男の子にミャクレグの実をあげるのを渋っていたのかは結局分からず終いだった____
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