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12話 物凄い爆発音

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 囁く切り株亭から出発して、途中までは歩いてたけど人目のつかない辺りまで来たところでギフトの超高速(テレポート)でとある村の手前まで行く。

 ナルル村__ここは、優秀な魔法薬学や魔石加工を施す小人族やドワーフ族が集まる村だ。

 その内の村外れにある小さな家、おとぎ話のようなおどろおどろしい雰囲気は全く感じさせない、どこかメルヘンチックな石造りの赤い三角屋根の家を訪ねる。

「こんにちは~ シャルネさん、いらっしゃいますか?」





 ドドドッッッ ドコーーーーンッ!!!!





「はぁっ!?!?」

 物凄い爆発音がしたと思ったら私の頭一つ低いドアから独特の香りのする煙を出しながらゆっくりと彼は這いつくばって出てきた。

「れ、レーナぁ……お、お久しぶりですぅ……」

 全身透明なピンク色の液体を纏わりつけ、半べそかきながら出てきたのはこの村で一番の魔法薬学の精通者シャルネ・ピュリス。

 艶のあるチョコレート色の髪は顎の辺りで切り揃えられており、こぼれ落ちそうな程涙を湛えたタレ目がちな大きな瞳は綺麗な濃いアンバー色で、可愛らしい印象とは裏腹にれっきとした成人男性(小人族)である。

 私を唯一この世界で女性であり異世界人だと知っている人物だ。

「まーた魔法の実験してたんですか?」

「ぅ……ん、あの……ここじゃなんだし、家に上がってくださぃ……」

 彼に進められて中へと進むと、部屋も物の見事にどろっどろのぐっちゃぐちゃになっていた。

「うわぁ、今回もまた酷いことに」

「うっ……だって、上手くいくと思って…………うぅ………………」

「まぁまぁ、次はなんとかなりますって」

 彼を慰めつつクリーンで部屋を清掃し、ついでに彼の汚れも取る。

「あ、ありがとうございます……ズズッ……相変わらず、レーナの魔法と魔力の保有量は見事ですね…………お、俺もそれくらい欲しかったぁ…………っう……ぅぅ…………」

「あー、まぁ……私は多いだけか取り柄なので専門的なことはさっぱり」

 それにしても、魔法薬学に精通しつつも彼自身は本人曰く一般の魔力量に毛が生えた程度と言っているだけあり、いざ魔法を使うとなるとこうして失敗することが多い。

 だからたまに、私の魔力を蓄積させた石を渡しに行く。

 彼曰く、私の魔力は質が良く純度や応用性が高いため普通の蓄積魔力石を買うよりもよっぽど良いらしい。

「うぅ……丁度、レーナの魔力石も無くなりかけてたので良かったです…………代金は、本当にいつも通りで良いんですか?」

「はい、あんまり貰ったところで私には使うアテもないので」

「なんでそんなに謙虚なんですかぁ~~~ ぅ"ぁあ"ぁ"ぁんッ」

「え?! 今の泣く要素ありました!?」

 彼との出会いは、4年前私が冒険者として活動を始めたばかりまで遡る____





 最初の登録はみんな等しくGランクからなので、チマチマ薬草を集めたり民間の依頼をこなし日銭を稼いでいたときだった。

 ギルドも、その日の任務も薬草採取で特別珍しい薬草ではないがその土地ゆえと他の冒険者が出払っているのもあり、初めて少し遠出の任務となった。

 沼地が近く、所々に水溜まりのような底無し沼がいくつもあり普段はEランク以上の者しか立ち入らないところに彼は居た__というか、沈んでた。

「ゴポポッ、ウプ……ッあ!! た、助けてっ 助けてくださいぃ~~~っ!!!!」

 顔と片腕だけを覗かせ、焦りながらもがく姿の彼の近くに寄り声をかけた。

「落ち着いて、体を動かさないで いま引き上げます」

 日本に居たとき、私の地元は結構な田舎で親や先生に常日頃、子どもの頃から水溜まりは必ず避けて歩けといわれるほど危険な沼がいくつもあった。

 だからもし足を掬われたときは焦らずにゆっくりと沈まないように抜け出すことも教えられた。

 だけどここはファンタジーな世界、私はいくつもの魔法とギフトも所持してるし、感知で約5メートルほどの深さだと分かったから、前もって決めていたバレてもオッケーな所持している土魔法で彼の足元に足場を作り、そこから押し上げ水魔法で彼の泥の汚れを落として風魔法で乾かしていく。

「ゴホッ、ゴホッ……う"、うぇぇ……っ」

「大丈夫ですか? よかったらこれでうがいしてください」

「ぅ"っ……ありがとうございます……」

 口の中に泥が入ったのだろう、私が水魔法で水を生成すると彼はそここら口をゆすいでは吐き出し、ゆすいでは吐き出し、それを何度か繰り返してようやく落ち着いたようだった。

「ほ、本当に……ありがとうございますッ……お、俺……本当に死んじゃうかと思ってぇ」

 泣きじゃくりながら私にお礼を告げる彼は、落ち着かない様子で名乗り上げた。

「っ……お、俺は小人族のシャルネ・ピュリスです……ま、魔薬師で…………サリュー苔を取りに来てて…………グスッ」

「私はれい……ローイズ・ウィリアンです、リュリック草の採取に来ました」

 彼の言うサリュー苔が何か全く分からないが、私も依頼できたことを伝えると幾分か安堵した様子だった。

「ぁ、あの……もし、あの……余計なお世話だったらすいません……リュリック草はここを戻った先にある森にあります…………あぁえっと! 上から……あの、すいませんっ……」

 彼は魔薬師というだけあって中々に博識なようだが、いかんせん自信が無さすぎる。

「そうなんですね、ありがとうございます 私は冒険者登録したてで……まだ右も左も分からなかったんです 助かります」

「あっ、あ……その、よかった……俺には、これしか出来ないので…………」

 彼はそういうと、持っていた鞄をギュッと抱きしめ、酷く悲しそうな顔をする。

「充分すごいじゃないですか、私なんてこれとこれどっちがなんの草って言われても全く分からないてすよ」

「そ、それはペテ草とヤノ草ですね……まぁ、雑草ですけど…………」

「ほら、そういうとこ 一つでも秀でたら充分ですよ んで、サリュー苔ってなんですか? 私も探すの手伝いますよ」

「えっ!!? い、いえ……そんな、俺……ウィリアンさんを雇うほど金ないし……」

「いや、これは私の自己満足なので 是非勉強がてらピュリスさんとサリュー苔を探したいなと……ダメですか?」

「と、とんでもないッ……!! 俺でよければ……その、お願いします…………」

 そこから彼との共同作業が始まり、なんやかんや初めて異世界の人とまともに喋ったり行動を共にしたと言うこともあって早々に不自然さが露見して、この世界についてあまり知らないことやあまり表だって騒がれくないこと、女であることを理由に制限されたくないことを伝える。

 すると彼は相変わらず頼り無さげだったが、終始自分のことのように親身になって私の話を聞いてくれた。

 曰く、彼自身も種族的なものや見た目で随分苦労した過去があるらしい。

 聞いて驚いたのが、この世界では平均寿命が500を越えるということだ。

 彼(この世界の住民ら)からしたら私なんてひよっこもひよっこのいいとこらしい。

 彼はなにか考える素振りをすると、私の能力について聞いてきて全部話してもいいものかという私の不安が顔に出ていたのだろう、彼の人をよく見る性格から「む、無理にとは…………あの……俺にもなにか、手伝えることないかなって……あははっ……お、俺なんかが……そのっ、おこがましいですですよね すいません」っと捲し立てられ、よくも悪くもこの人は正直で誠実……嘘をつけない人なんだと直感した。

 最近会得したばかりの表示ちゃんスキルであなたの心の中に直接話しかけてます的なアレで、自分の心の中で表示ちゃんと会話したところ無事オッケー貰えたので正直に話した。

 その後レベル50を超えて表示ちゃんの媒介なく直接女神様とやり取りできるようになってからは、なぜかそのノリにハマったらしい女神様からのあなたの心に直接語りかけるネタが大変うるさくて強制シャットダウンし、いまに至る。

 いやね? 女神信仰は一応してるけど、信頼はしても信用はしてないって感じだからさ……ね?

 ね???

 それから彼とは時折こうして会いにいったり、この世界のことや私の能力についてや彼の研究に付き合ったりして親睦を深めてきた。





「シャルネさん、それで本題なんだけど__」





∞∞∞∞∞∞

 何ヵ所か誤字を修正しました。
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