渇きの果てに咲いた破片

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一章 割れた硝子

四話 いつも通りの日常

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 日付が変わるまでタスクをこなしていた。なかなか手強かった。特に、授業用の資料を作ることが大変で、データが破損していたり、送れなかったりして相手に迷惑をかけた。どうにか締め切りに間に合ったみたいだけど、あまり相手は喜んでいなかった。でもどうしようもないと、この日は眠ることにした。

 次の日。授業が始まるや否や。タスクを返さなければいけないときが来た。クラスメイトに関わらず、同級生が僕の元に集まる。あるいは、僕が本人に会いに行く。
「昨日のノートとったよ」
「ありがとう!」
 同じクラスの黒髪短髪スポーツ系男子。陸上部に所属し、部内では上下どっちつかず、つまり中間の実力を持つ。毎日ゲームに明け暮れているらしく、授業中はほとんど寝ている。僕は、昨日の授業全部をデータ化し、その人に送った。けれど、紙で勉強したいと言われ、印刷してその人のノートに貼った。
 同じことを五人繰り返して、一段落したと思ったら、また次の頼み事だ。
「あ、これ頼む」
「うん」
「職員室まで持っておいて」
「わかったよ」
 同じクラスの眼鏡をかけた賢そうな男子。今週は日直ということで、クラスメイトのスマホを回収して職員室に預ける仕事がある。けれど、彼は勉強が趣味だと言って、その時間を惜しまないために日直の仕事をすっぽかすことがある。糸目で鼻が高い男子。僕は両手で、クラスメイト30人分……のスマホが入ったケースを抱える。ただ、中身を見ると、20台ほどしかない。スマホを預けるとは名ばかりで、授業中や休み時間に生徒が使っている。
「エルズバーグくん!」
 無防備な背中を思い切り叩かれて痛い。振り返ると、第二ボタンを開けて、スカートが膝よりも短い活発な女子がいた。隣のクラスの人だ。プラチナブロンドの髪をお団子にアレンジし、前髪をきっちり揃えている。手には、補講日の書かれたプリントが丸められている。
「これえ、昨日出し忘れちゃったの。あたしの代わりに出してね!」
「うん」
「ありがとう! 助かるぅ!」
 その人はニッと笑って、スマホケースの上にくしゃくしゃのプリントを置いた。用件だけ済ませると、同じ格好をした三人の女子のもとへと走っていく。
「ユーリ! これ数学の先生に渡して?」
「職員室行くならさ、鍵を戻して!」
「教科書重いから持って!」
「今日もノートとって!」
「教科書忘れちゃったの。隣のクラスだし、今日授業ないって聞いたから借りるね!」
「親のサイン忘れてた! ユーリ、代わりに書いて!」
「体育で使う上履き忘れたぁ! そうだ! エルズバーグなら持ってるよな!」
 そう頼まれて、貸して、ノートを取って、返されて……一日が終わった。
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