私の事が大嫌いだったはずの旦那様が記憶喪失になってから、私を溺愛するようになったのですがこれは本当に現実ですか!? ~Season2~

hayama_25

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第5話

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「彩花、大丈夫?」

 湊さんがドアを開けて部屋に入ってきた。

 私はベッドに横たわりながら、彼の心配そうな顔を見上げた。

「うん、ごめんね、、ご飯作れてなくて」

 体調が悪くて、何も手につかない。
 体がだるい。

「彩花は何か食べたの?」

 湊さんは私の顔を覗き込む。

「食欲なくて、」

 私は視線をそらしながら答えた。

「食欲なくても少しは食べないと。お粥作るから待っててね」

 湊さんは優しく微笑んで、キッチンに向かった。

「ごめんね。ありがとう」

 あれから一週間。

 食欲がないどころか、ますます体調が悪くなっている。多分、これがつわりというものみたい。

「美月、起きれる?」

 湊さんが再び部屋に入ってきた。

「うん、」

 私はゆっくりと起き上がった。

「熱いから気をつけてね」

 湊さんはお粥の入ったお椀を手渡してくれた。

「ごめんね」

 私はお椀を受け取りながら謝った。

 本当はご飯も私が作らないといけないのに。

「もう。さっきから謝ってばっかり」

 湊さんは少し笑って答えた。

「だって、お仕事で疲れてきたのに、私の代わりに家事までさせちゃって」

 私は申し訳なさそうに言った。

「謝らなくていいよ。家事をしてもらうために彩花と結婚した訳じゃないからね」

 湊さんの言葉に、少しだけ安心感が広がった。

「だとしても…」

「いいから。冷めないうちにどうぞ」

 湊さんは優しく促した。

「いただきます、」

 私はお粥を一口食べた。

 相変わらず、湊さんの料理は美味しい。

 こういうシンプルな料理だからこそ、腕の差が出る。

「どう?」

 湊さんは心配そうに尋ねた。

「美味しいです、」

 私は微笑んで答えた。

「良かったです。じゃあ俺はシャワー浴びてくるね」

 湊さんは立ち上がった。

「うん、」

「ごゆっくり」

 そう言うと、湊さんは部屋を出て行った。

 調子に乗って食べすぎたせいか、

 駄目だ、気持ち悪い。

「うっ、」

 吐き気が襲ってきた。

 だめだめ。さすがにここで吐くわけには、私は必死に耐えた。

 ___


「間に合った、」

 私はトイレから戻り、湊さんに気づかれないように息を整えた。

「全部食べれた?」

 湊さんがシャワーから戻ってきた。

「あ、うん」

 私は微笑んで答えた。

「良かった」

 湊さんは安心した様子で微笑んだ。

 湊さんにはこのこと黙っておこう。

「明日からまた頑張るから」

 私は湊さんに向かって言った。

「いいって。今は大変な時期なんだから自分のことだけ考えな」

 湊さんは優しく言った。

「え?」

 私は驚いて湊さんを見つめた。

 大変な時期って、

「えーっと、ほら、最近体調悪い日が続いてるでしょ?」

 湊さんは少し照れくさそうに言った。

 なんだ。そういうことか。


「うん、ありがとう」
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