4 / 13
第3話
しおりを挟む私が湊さんの浮気を疑うようになったのは今から二週間前のこと。
「あ、湊さん、スマホ鳴ってるよ」
電話が何度かかって止まり、メッセージが表示された。
"今日は楽しかった。また会おうね"
七海さん…って誰?
「彩花?どうかした?」
湊さんの声が私の耳に届く。
私は一瞬、心臓が止まるような感覚に襲われた。
「あ、湊さん、電話鳴ってたよ」
私はできるだけ平静を装って答えた。
「誰から…あ、。教えてくれてありがとう」
湊さんはその名前を見ると、少し驚いた様子でスマホを手に取り、そそくさと自分の部屋に向かった。
湊さんの背中を見送りながら、私は胸の中に不安が広がっていくのを感じた。
七海さんって誰?
どうして湊さんにそんなメッセージを送ってくるの?
聞きたいけど、聞けなかった。
その夜、私は眠れずにベッドの中で考え込んでいた。
湊さんは本当に浮気しているのだろうか?
それとも、
ただの友達なのか?
疑念が頭を離れない。
翌朝、家事をしながらも心ここにあらずだった。
湊さんが出勤する前に話しかけようと何度も思ったけど、結局言い出せなかった。
どうしても勇気が出ない。
私の予感が当たってしまったら、立ち直れそうにないから。
湊さんが出勤した後、私は一人でリビングに座り込み、ため息をついた。
どうしても聞き出せない自分に苛立ちを感じながらも、湊さんの言葉を信じたい気持ちと疑念が交錯していた。
その時、ふとあのことを思い出した。
それは、湊さんが記憶喪失だった時のこと、
一緒に行ったお洋服のお店の店員さんが
"ドレスの他にもワンピースなどもご購入されるんです。彩花様が普段お洋服を買う時間が無いから代わりに買ってあげるんだと仰っていました"
そんなことを言っていた。
だけど、私はワンピースを貰った記憶なんて無い。
他に好きな人がいて、その人にあげてるんだとしたら…
表面上、仕方なく私に送るていで選んでるけど、もしかしたら本命は別に…
それなら腑に落ちる。
そっか、私二番目なんだ。
その考えが頭を離れず、私はますます不安になった。
いや、まだそうと決まったわけじゃない。私の勘違いの可能性だって、
本当のことを聞かないと。
聞かないとって思うんだけど、どうしても聞けない。
どうしても湊さんに直接聞く勇気が出ない。
もし本当に浮気しているなら、私の心はどうなってしまうのだろう。
次の日も、その次の日も、私は同じように過ごしていた。
湊さんは何も気づかず、いつも通りの会話を続けていた。
だけど、湊さんとの距離は少しずつ広がっていくように感じた。
0
お気に入りに追加
12
あなたにおすすめの小説
私の大好きな彼氏はみんなに優しい
hayama_25
恋愛
柊先輩は私の自慢の彼氏だ。
柊先輩の好きなところは、誰にでも優しく出来るところ。
そして…
柊先輩の嫌いなところは、誰にでも優しくするところ。
軽い気持ちで超絶美少年(ヤンデレ)に告白したら
夕立悠理
恋愛
容姿平凡、頭脳平凡、なリノアにはひとつだけ、普通とちがうところがある。
それは極度の面食いということ。
そんなリノアは冷徹と名高い公爵子息(イケメン)に嫁ぐことに。
「初夜放置? ぜーんぜん、問題ないわ!
だって旦那さまってば顔がいいもの!!!」
朝食をたまに一緒にとるだけで、満足だ。寝室別でも、他の女の香水の香りがしてもぜーんぜん平気。……なーんて、思っていたら、旦那さまの様子がおかしい?
「他の誰でもない君が! 僕がいいっていったんだ。……そうでしょ?」
あれ、旦那さまってば、どうして手錠をお持ちなのでしょうか?
それをわたしにつける??
じょ、冗談ですよね──!?!?
【完結】美しい人。
❄️冬は つとめて
恋愛
「あなたが、ウイリアム兄様の婚約者? 」
「わたくし、カミーユと言いますの。ねえ、あなたがウイリアム兄様の婚約者で、間違いないかしら。」
「ねえ、返事は。」
「はい。私、ウイリアム様と婚約しています ナンシー。ナンシー・ヘルシンキ伯爵令嬢です。」
彼女の前に現れたのは、とても美しい人でした。
好きな人の好きな人
ぽぽ
恋愛
"私には10年以上思い続ける初恋相手がいる。"
初恋相手に対しての執着と愛の重さは日々増していくばかりで、彼の1番近くにいれるの自分が当たり前だった。
恋人関係がなくても、隣にいれるだけで幸せ……。
そう思っていたのに、初恋相手に恋人兼婚約者がいたなんて聞いてません。
形だけの妻ですので
hana
恋愛
結婚半年で夫のワルツは堂々と不倫をした。
相手は伯爵令嬢のアリアナ。
栗色の長い髪が印象的な、しかし狡猾そうな女性だった。
形だけの妻である私は黙認を強制されるが……
バイバイ、旦那様。【本編完結済】
ちくわぶ(まるどらむぎ)
恋愛
妻シャノンが屋敷を出て行ったお話。
この作品はフィクションです。
作者独自の世界観です。ご了承ください。
7/31 お話の至らぬところを少し訂正させていただきました。
申し訳ありません。大筋に変更はありません。
8/1 追加話を公開させていただきます。
リクエストしてくださった皆様、ありがとうございます。
調子に乗って書いてしまいました。
この後もちょこちょこ追加話を公開予定です。
甘いです(個人比)。嫌いな方はお避け下さい。
※この作品は小説家になろうさんでも公開しています。
イケメン社長と私が結婚!?初めての『気持ちイイ』を体に教え込まれる!?
すずなり。
恋愛
ある日、彼氏が自分の住んでるアパートを引き払い、勝手に『同棲』を求めてきた。
「お前が働いてるんだから俺は家にいる。」
家事をするわけでもなく、食費をくれるわけでもなく・・・デートもしない。
「私は母親じゃない・・・!」
そう言って家を飛び出した。
夜遅く、何も持たず、靴も履かず・・・一人で泣きながら歩いてるとこを保護してくれた一人の人。
「何があった?送ってく。」
それはいつも仕事場のカフェに来てくれる常連さんだった。
「俺と・・・結婚してほしい。」
「!?」
突然の結婚の申し込み。彼のことは何も知らなかったけど・・・惹かれるのに時間はかからない。
かっこよくて・・優しくて・・・紳士な彼は私を心から愛してくれる。
そんな彼に、私は想いを返したい。
「俺に・・・全てを見せて。」
苦手意識の強かった『営み』。
彼の手によって私の感じ方が変わっていく・・・。
「いあぁぁぁっ・・!!」
「感じやすいんだな・・・。」
※お話は全て想像の世界のものです。現実世界とはなんら関係ありません。
※お話の中に出てくる病気、治療法などは想像のものとしてご覧ください。
※誤字脱字、表現不足は重々承知しております。日々精進してまいりますので温かく見ていただけると嬉しいです。
※コメントや感想は受け付けることができません。メンタルが薄氷なもので・・すみません。
それではお楽しみください。すずなり。
溺愛ダーリンと逆シークレットベビー
葉月とに
恋愛
同棲している婚約者のモラハラに悩む優月は、ある日、通院している病院で大学時代の同級生の頼久と再会する。
立派な社会人となっていた彼に見惚れる優月だったが、彼は一児の父になっていた。しかも優月との子どもを一人で育てるシングルファザー。
優月はモラハラから抜け出すことができるのか、そして子どもっていったいどういうことなのか!?
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる