35 / 44
第35話
しおりを挟む「あの時、どうして私があそこにいるって分かったの?」
人の足音すら聞こえない不気味なところで、きっと助けなんて来ないって…半分諦めていたのに。
「あぁ、それは…それのおかげだよ」
そう言って指差したのは、
「これ…?」
湊さんがくれたルビーのネックレスだった。
「その宝石の中にGPSを仕掛けてたんだ」
「え…?」
だから場所を特定できたのか…
でもどうしてそんなこと、
「もしも彩花の身に何かあったら、すぐに駆けつけれるように」
「それで…」
あの人が何かしてくるだろうって分かってたんだ
「俺が近くにいて守ればいいと思ってはいたけど、一応念の為に仕掛けさせてもらったよ」
「そうだったんだ」
「今日に限って話しかけてくる奴が多くて、目を離した隙に…いま考えたら全員グルなんだろうけど」
確か、あの人が湊さんに何かしたとは言っていたけど…
そういう事か。
「そうだと思う」
「ごめんね、何も言わずに勝手なことして」
きっと、私が不安な思いをしないように、あえて言わなかったんだ
「いいんだよ。そのおかげで助かったんだから」
「でも、ほんとによく似合ってるよ。そのガーネットのネックレス」
ガーネット?
勝手に赤はルビーだと思い込んでた。
「ルビーじゃなかったんだ…ごめんね。私、宝石とかあんまり詳しくなくて、」
せっかくプレゼントしてくれたのに、何も知らなかった。
「いや、謝ることは無いよ。…そっか、やっぱり伝わってなかったか、」
「え?」
伝わるって何を…
「ガーネットの石言葉は変わらぬ愛」
「変わらぬ愛…」
それってつまり、
「俺の気持ちが、彩花に少しでも伝わりますようにって、願掛けのつもりで」
「そうとも知らずに…」
一ミリも伝わってなかった
「そして、お守りの意味も込めてある」
「お守り…ほんとに、守って貰えた。ありがとう。湊さんがいなかったら、どうなっていたか…」
想像したら怖くなって身震いした。
そんな私に湊さんは優しく微笑んで、私の肩に手を置いた。
「彩花が無事で本当に良かった。それだけで十分」
その言葉に、胸が温かくなった。湊さんの優しさと愛情が、私を包み込んでくれるようだった。
「でも、これからはもっと気をつけるよ。湊さんに心配かけたくないから」
もっと、警戒心を強く持たないと。
「それが一番だね。でも、何かあったらすぐに知らせて。俺はいつでも駆けつけるから」
「うん、ありがとう」
その時、ふと湊さんの顔が近づいてきて、私の額に軽くキスをした。
「これで、もっとお守りの力が強くなるよ」
「もう…」
顔が赤くなるのを感じながら、私は湊さんを見つめた。彼の瞳には、変わらぬ愛が確かに映っていた。
「これからも、ずっと一緒にいてくれる?」
「うん、ずっと一緒に…いや、ちょっと待って」
11
お気に入りに追加
69
あなたにおすすめの小説

【完結】お姉様の婚約者
七瀬菜々
恋愛
姉が失踪した。それは結婚式当日の朝のことだった。
残された私は家族のため、ひいては祖国のため、姉の婚約者と結婚した。
サイズの合わない純白のドレスを身に纏い、すまないと啜り泣く父に手を引かれ、困惑と同情と侮蔑の視線が交差するバージンロードを歩き、彼の手を取る。
誰が見ても哀れで、惨めで、不幸な結婚。
けれど私の心は晴れやかだった。
だって、ずっと片思いを続けていた人の隣に立てるのだから。
ーーーーーそう、だから私は、誰がなんと言おうと、シアワセだ。
【完結】お飾りの妻からの挑戦状
おのまとぺ
恋愛
公爵家から王家へと嫁いできたデイジー・シャトワーズ。待ちに待った旦那様との顔合わせ、王太子セオドア・ハミルトンが放った言葉に立ち会った使用人たちの顔は強張った。
「君はお飾りの妻だ。装飾品として慎ましく生きろ」
しかし、当のデイジーは不躾な挨拶を笑顔で受け止める。二人のドタバタ生活は心配する周囲を巻き込んで、やがて誰も予想しなかった展開へ……
◇表紙はノーコピーライトガール様より拝借しています
◇全18話で完結予定

さげわたし
凛江
恋愛
サラトガ領主セドリックはランドル王国の英雄。
今回の戦でも国を守ったセドリックに、ランドル国王は褒章として自分の養女であるアメリア王女を贈る。
だが彼女には悪い噂がつきまとっていた。
実は養女とは名ばかりで、アメリア王女はランドル王の秘密の恋人なのではないかと。
そしてアメリアに飽きた王が、セドリックに下げ渡したのではないかと。
※こちらも不定期更新です。
連載中の作品「お転婆令嬢」は更新が滞っていて申し訳ないです(>_<)。

初耳なのですが…、本当ですか?
あおくん
恋愛
侯爵令嬢の次女として、父親の仕事を手伝ったり、邸の管理をしたりと忙しくしているアニーに公爵家から婚約の申し込みが来た!
でも実際に公爵家に訪れると、異世界から来たという少女が婚約者の隣に立っていて…。

初恋の呪縛
緑谷めい
恋愛
「エミリ。すまないが、これから暫くの間、俺の同僚のアーダの家に食事を作りに行ってくれないだろうか?」
王国騎士団の騎士である夫デニスにそう頼まれたエミリは、もちろん二つ返事で引き受けた。女性騎士のアーダは夫と同期だと聞いている。半年前にエミリとデニスが結婚した際に結婚パーティーの席で他の同僚達と共にデニスから紹介され、面識もある。
※ 全6話完結予定

【完結】聖女の手を取り婚約者が消えて二年。私は別の人の妻になっていた。
文月ゆうり
恋愛
レティシアナは姫だ。
父王に一番愛される姫。
ゆえに妬まれることが多く、それを憂いた父王により早くに婚約を結ぶことになった。
優しく、頼れる婚約者はレティシアナの英雄だ。
しかし、彼は居なくなった。
聖女と呼ばれる少女と一緒に、行方を眩ませたのだ。
そして、二年後。
レティシアナは、大国の王の妻となっていた。
※主人公は、戦えるような存在ではありません。戦えて、強い主人公が好きな方には合わない可能性があります。
小説家になろうにも投稿しています。
エールありがとうございます!

貴方の事を愛していました
ハルン
恋愛
幼い頃から側に居る少し年上の彼が大好きだった。
家の繋がりの為だとしても、婚約した時は部屋に戻ってから一人で泣いてしまう程に嬉しかった。
彼は、婚約者として私を大切にしてくれた。
毎週のお茶会も
誕生日以外のプレゼントも
成人してからのパーティーのエスコートも
私をとても大切にしてくれている。
ーーけれど。
大切だからといって、愛しているとは限らない。
いつからだろう。
彼の視線の先に、一人の綺麗な女性の姿がある事に気が付いたのは。
誠実な彼は、この家同士の婚約の意味をきちんと理解している。だから、その女性と二人きりになる事も噂になる様な事は絶対にしなかった。
このままいけば、数ヶ月後には私達は結婚する。
ーーけれど、本当にそれでいいの?
だから私は決めたのだ。
「貴方の事を愛してました」
貴方を忘れる事を。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる