私の事が大嫌いだったはずの旦那様が記憶喪失になってから、私を溺愛するようになったのですがこれは本当に現実ですか!?

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第27話

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 それからのことはあまり覚えていない。

 湊さんが警察に通報して、警察の方が来るのを待っていた。

「彩花、助けるのが遅くなってごめん」

「謝らないで。私の方こそ、待っててって言われたのに、勝手にいなくなってごめんなさい」

 湊さんの言うことを聞いていれば、こんなことにはならなかったのに。

「どうしてあんな奴について行ったの」

「パートナーが居なくなったから、一緒に探して欲しいって言われて、」

 パートナーとハグれたなんて、嘘だって分かってたけど。

「断れば良かったのに」
「それは、」

 脅されたから…

「それは?」

「手伝ってくれなかったら、湊さんにとって、大事な話をしないって言われて…」

 今となってはそれも嘘だったのかもしれない。

「脅されたってことか、ごめん、」
「どうして湊さんが…」

「俺のせいで彩花が危険な目にあった」

 違う。そうじゃない。

「私は少しでも湊さんの役に立ちたくて、私が勝手にしたこと。だから湊さんのせいなんかじゃない」

 だけど、結局迷惑かけちゃった。

「そんなのどうでもいいのに」
「どうでもいいって…」

 湊さんにとっては、きっと一番大事なことなのに

「会社なんかよりも彩花の方が大事だよ。そんなの、天秤にかけるまでもない」

 会社よりも私の方が…
 昔の湊さんが聞いたら絶対怒るだろうな。

「いつもみたいに地味なドレスを着てれば、こんな事にはならなかったのかな…」

 そう言うと、湊さんの目の色が変わった。

「…何された」

 なんだか雰囲気が…

「え、」

「何かされたからそんなこと言うんでしょ」

 前まではそんなことなかった。

 挨拶をしたら逃げるように去っていくのに、今日は舐めまわすように私を見た。

 計画を練っていたのも事実なんだろうけど、視線が気持ち悪かった。

 前よりも下心丸出しだったから。

「脚を触られただけ。だけど、いつもよりスカートの丈が短かったからか、ジロジロ見られた」

 思い出しただけで気持ち悪い。

「湊さん?」

 急に立ち上がって、私の前にしゃがむと、

「触られたのってここ?」

「そうだけど...」

「じっとしてて」

 そう言うと、私の脚にキスをした。

「み、湊さん、何して...」

 今はあんまり触って欲しくない

「上書きだよ。あんな奴に彩花を触られたと思うと、腹が立って仕方ない」

「湊さん…」

 湊さんのそんな顔初めて見た。

「ごめん。彩花を一人にしたばっかりに危険な目に遭わせた。怖い思いをさせてほんとにごめん」

 さっきから謝ってばっかりだ。

「湊さんは悪くない。それ以上謝らないで」

「だけど、」

 怖かったのは事実。だけど、それ以上に嬉しかった。

「助けに来てくれるって信じてた。そして、湊さんは助けに来てくれた。それだけで十分」

「彩花…」

「彩花ちゃん大丈夫!?」

 騒ぎを聞きつけたのか、陽翔さんが大慌てで走ってきた。

「陽翔さん、大丈夫です、」

「良かった…。あ、湊、警察の方が話したいって」

 到着したんだ。
 あいつは無事に逮捕されたんだろうか。

「でも、」

 私を一人にするのが気になるみたい。

「私なら大丈夫だから行ってきて」

「分かった。ちょっと彩花と一緒にいてやって」

「もちろん」


「すぐ戻る」

 そう言って優しく頭を撫でてくれた。
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