私の事が大嫌いだったはずの旦那様が記憶喪失になってから、私を溺愛するようになったのですがこれは本当に現実ですか!?

hayama_25

文字の大きさ
上 下
23 / 44

第23話

しおりを挟む
「仲睦まじいね」

「お父様」

「元気だったかい?」
「はい。お父様もお元気でしたか?」

お父様とは月に一度パーティーで会うだけで、実家には帰っていなかった。

帰る暇も無かったから。

「もちろんだよ。湊くんも久しぶりだね」

あ、そうだ。湊さんはこの人が誰なのか分からないのか。

さっきお父様って言ったから、お義父さんということは分かっていると思うけど、

「お久しぶりです」

「まだお義父さんとは呼んでくれないんだね。もう少し時間がかかりそうか」

「…」

湊さんはお父様のことを一度もお義父さんと呼んだことがない。

私を妻と認めたくないからだと思う。

「これは失礼、暗い雰囲気にさせてしまったみたいだね。それにしても、君はいつ見てもいい男だ」

「お褒めの言葉ありがとうございます」
「彩花も幸せ者だな」

お父様は知らない。
私が、どんな扱いを受けていたのか。
言えるわけがない。

「はい、」

「では、パーティーを楽しんで」
そう言って行ってしまった。

お父様も他の方と話すのに、忙しいみたいだ。

「湊社長!」

あ、この人は…

「あぁ、紗良さん。お元気でしたか」

どうして、名前を…

「もちろんです。今日は一段と素敵ですね」

「紗良さんも素敵ですよ」
「相変わらずお世辞がお上手なんだから」

この光景は、嫌という程何度も見てる。

湊さんはかっこいいから、パーティーではたくさんの女性に囲まれていた。私は、その様子を遠くから眺めていた。

社交辞令なんだから、仕方がないと分かっていても、他の人を褒める湊さんを見るのが辛かった。

いや、本心だったのかもしれない。

「あら?もしかして隣にいる方は…奥様?」

「いつも主人がお世話になっております」

「まぁ、いつもと違うから誰か分からなかったわ。素敵ね」

思ってもいない言葉
「ありがとうございます、」

それから数十分、他の方達に挨拶して回った。

こんなのは初めてだった。
いつもなら会場に入った瞬間、別行動だったから。

「疲れた?」
「少し、」

「休みんでおいで。俺はまだ話さないといけない人がいるから一緒にはいられないけど」

「でも、私がいなかったら誰が誰なのか分からないんじゃ…」

まだ記憶も戻っていないのに。

「心配しなくても大丈夫だよ。事前にパーティーの参加者リストを見てきたから、彼らの情報は全て頭に入ってる」

あぁ、だから紗良さんとも自然に会話出来ていたんだ。

さすが湊さん。抜かりない。

「じゃあ、少し休憩しようかな」

実は、ハイヒールを履いているから、足が限界だった。

「あそこで座って待っててくれる?終わったらすぐに行くから」

「私のことは気にしないで」

「いや、こんな綺麗な彩花を一人でいさせるのは心配だから」

もう、心配性なんだから。

「分かった」

「動いたらダメだからね」
「分かったよ」

パーティーが好きな唯一の理由は、湊さんが仕事の顔をしてるところ。家では、なかなか見ることが出来ないから新鮮でいい。



なんて思いながら眺めていたら、誰かが私の前に立ち、視界を遮った。
しおりを挟む
感想 0

あなたにおすすめの小説

【完結】お姉様の婚約者

七瀬菜々
恋愛
 姉が失踪した。それは結婚式当日の朝のことだった。  残された私は家族のため、ひいては祖国のため、姉の婚約者と結婚した。    サイズの合わない純白のドレスを身に纏い、すまないと啜り泣く父に手を引かれ、困惑と同情と侮蔑の視線が交差するバージンロードを歩き、彼の手を取る。  誰が見ても哀れで、惨めで、不幸な結婚。  けれど私の心は晴れやかだった。  だって、ずっと片思いを続けていた人の隣に立てるのだから。  ーーーーーそう、だから私は、誰がなんと言おうと、シアワセだ。

さげわたし

凛江
恋愛
サラトガ領主セドリックはランドル王国の英雄。 今回の戦でも国を守ったセドリックに、ランドル国王は褒章として自分の養女であるアメリア王女を贈る。 だが彼女には悪い噂がつきまとっていた。 実は養女とは名ばかりで、アメリア王女はランドル王の秘密の恋人なのではないかと。 そしてアメリアに飽きた王が、セドリックに下げ渡したのではないかと。 ※こちらも不定期更新です。 連載中の作品「お転婆令嬢」は更新が滞っていて申し訳ないです(>_<)。

【完結】お飾りの妻からの挑戦状

おのまとぺ
恋愛
公爵家から王家へと嫁いできたデイジー・シャトワーズ。待ちに待った旦那様との顔合わせ、王太子セオドア・ハミルトンが放った言葉に立ち会った使用人たちの顔は強張った。 「君はお飾りの妻だ。装飾品として慎ましく生きろ」 しかし、当のデイジーは不躾な挨拶を笑顔で受け止める。二人のドタバタ生活は心配する周囲を巻き込んで、やがて誰も予想しなかった展開へ…… ◇表紙はノーコピーライトガール様より拝借しています ◇全18話で完結予定

初耳なのですが…、本当ですか?

あおくん
恋愛
侯爵令嬢の次女として、父親の仕事を手伝ったり、邸の管理をしたりと忙しくしているアニーに公爵家から婚約の申し込みが来た! でも実際に公爵家に訪れると、異世界から来たという少女が婚約者の隣に立っていて…。

初恋の呪縛

緑谷めい
恋愛
「エミリ。すまないが、これから暫くの間、俺の同僚のアーダの家に食事を作りに行ってくれないだろうか?」  王国騎士団の騎士である夫デニスにそう頼まれたエミリは、もちろん二つ返事で引き受けた。女性騎士のアーダは夫と同期だと聞いている。半年前にエミリとデニスが結婚した際に結婚パーティーの席で他の同僚達と共にデニスから紹介され、面識もある。  ※ 全6話完結予定

お飾りの侯爵夫人

悠木矢彩
恋愛
今宵もあの方は帰ってきてくださらない… フリーアイコン あままつ様のを使用させて頂いています。

【完結】聖女の手を取り婚約者が消えて二年。私は別の人の妻になっていた。

文月ゆうり
恋愛
レティシアナは姫だ。 父王に一番愛される姫。 ゆえに妬まれることが多く、それを憂いた父王により早くに婚約を結ぶことになった。 優しく、頼れる婚約者はレティシアナの英雄だ。 しかし、彼は居なくなった。 聖女と呼ばれる少女と一緒に、行方を眩ませたのだ。 そして、二年後。 レティシアナは、大国の王の妻となっていた。 ※主人公は、戦えるような存在ではありません。戦えて、強い主人公が好きな方には合わない可能性があります。 小説家になろうにも投稿しています。 エールありがとうございます!

私の大好きな彼氏はみんなに優しい

hayama_25
恋愛
柊先輩は私の自慢の彼氏だ。 柊先輩の好きなところは、誰にでも優しく出来るところ。 そして… 柊先輩の嫌いなところは、誰にでも優しくするところ。

処理中です...