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第23話
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「仲睦まじいね」
「お父様」
「元気だったかい?」
「はい。お父様もお元気でしたか?」
お父様とは月に一度パーティーで会うだけで、実家には帰っていなかった。
帰る暇も無かったから。
「もちろんだよ。湊くんも久しぶりだね」
あ、そうだ。湊さんはこの人が誰なのか分からないのか。
さっきお父様って言ったから、お義父さんということは分かっていると思うけど、
「お久しぶりです」
「まだお義父さんとは呼んでくれないんだね。もう少し時間がかかりそうか」
「…」
湊さんはお父様のことを一度もお義父さんと呼んだことがない。
私を妻と認めたくないからだと思う。
「これは失礼、暗い雰囲気にさせてしまったみたいだね。それにしても、君はいつ見てもいい男だ」
「お褒めの言葉ありがとうございます」
「彩花も幸せ者だな」
お父様は知らない。
私が、どんな扱いを受けていたのか。
言えるわけがない。
「はい、」
「では、パーティーを楽しんで」
そう言って行ってしまった。
お父様も他の方と話すのに、忙しいみたいだ。
「湊社長!」
あ、この人は…
「あぁ、紗良さん。お元気でしたか」
どうして、名前を…
「もちろんです。今日は一段と素敵ですね」
「紗良さんも素敵ですよ」
「相変わらずお世辞がお上手なんだから」
この光景は、嫌という程何度も見てる。
湊さんはかっこいいから、パーティーではたくさんの女性に囲まれていた。私は、その様子を遠くから眺めていた。
社交辞令なんだから、仕方がないと分かっていても、他の人を褒める湊さんを見るのが辛かった。
いや、本心だったのかもしれない。
「あら?もしかして隣にいる方は…奥様?」
「いつも主人がお世話になっております」
「まぁ、いつもと違うから誰か分からなかったわ。素敵ね」
思ってもいない言葉
「ありがとうございます、」
それから数十分、他の方達に挨拶して回った。
こんなのは初めてだった。
いつもなら会場に入った瞬間、別行動だったから。
「疲れた?」
「少し、」
「休みんでおいで。俺はまだ話さないといけない人がいるから一緒にはいられないけど」
「でも、私がいなかったら誰が誰なのか分からないんじゃ…」
まだ記憶も戻っていないのに。
「心配しなくても大丈夫だよ。事前にパーティーの参加者リストを見てきたから、彼らの情報は全て頭に入ってる」
あぁ、だから紗良さんとも自然に会話出来ていたんだ。
さすが湊さん。抜かりない。
「じゃあ、少し休憩しようかな」
実は、ハイヒールを履いているから、足が限界だった。
「あそこで座って待っててくれる?終わったらすぐに行くから」
「私のことは気にしないで」
「いや、こんな綺麗な彩花を一人でいさせるのは心配だから」
もう、心配性なんだから。
「分かった」
「動いたらダメだからね」
「分かったよ」
パーティーが好きな唯一の理由は、湊さんが仕事の顔をしてるところ。家では、なかなか見ることが出来ないから新鮮でいい。
なんて思いながら眺めていたら、誰かが私の前に立ち、視界を遮った。
「お父様」
「元気だったかい?」
「はい。お父様もお元気でしたか?」
お父様とは月に一度パーティーで会うだけで、実家には帰っていなかった。
帰る暇も無かったから。
「もちろんだよ。湊くんも久しぶりだね」
あ、そうだ。湊さんはこの人が誰なのか分からないのか。
さっきお父様って言ったから、お義父さんということは分かっていると思うけど、
「お久しぶりです」
「まだお義父さんとは呼んでくれないんだね。もう少し時間がかかりそうか」
「…」
湊さんはお父様のことを一度もお義父さんと呼んだことがない。
私を妻と認めたくないからだと思う。
「これは失礼、暗い雰囲気にさせてしまったみたいだね。それにしても、君はいつ見てもいい男だ」
「お褒めの言葉ありがとうございます」
「彩花も幸せ者だな」
お父様は知らない。
私が、どんな扱いを受けていたのか。
言えるわけがない。
「はい、」
「では、パーティーを楽しんで」
そう言って行ってしまった。
お父様も他の方と話すのに、忙しいみたいだ。
「湊社長!」
あ、この人は…
「あぁ、紗良さん。お元気でしたか」
どうして、名前を…
「もちろんです。今日は一段と素敵ですね」
「紗良さんも素敵ですよ」
「相変わらずお世辞がお上手なんだから」
この光景は、嫌という程何度も見てる。
湊さんはかっこいいから、パーティーではたくさんの女性に囲まれていた。私は、その様子を遠くから眺めていた。
社交辞令なんだから、仕方がないと分かっていても、他の人を褒める湊さんを見るのが辛かった。
いや、本心だったのかもしれない。
「あら?もしかして隣にいる方は…奥様?」
「いつも主人がお世話になっております」
「まぁ、いつもと違うから誰か分からなかったわ。素敵ね」
思ってもいない言葉
「ありがとうございます、」
それから数十分、他の方達に挨拶して回った。
こんなのは初めてだった。
いつもなら会場に入った瞬間、別行動だったから。
「疲れた?」
「少し、」
「休みんでおいで。俺はまだ話さないといけない人がいるから一緒にはいられないけど」
「でも、私がいなかったら誰が誰なのか分からないんじゃ…」
まだ記憶も戻っていないのに。
「心配しなくても大丈夫だよ。事前にパーティーの参加者リストを見てきたから、彼らの情報は全て頭に入ってる」
あぁ、だから紗良さんとも自然に会話出来ていたんだ。
さすが湊さん。抜かりない。
「じゃあ、少し休憩しようかな」
実は、ハイヒールを履いているから、足が限界だった。
「あそこで座って待っててくれる?終わったらすぐに行くから」
「私のことは気にしないで」
「いや、こんな綺麗な彩花を一人でいさせるのは心配だから」
もう、心配性なんだから。
「分かった」
「動いたらダメだからね」
「分かったよ」
パーティーが好きな唯一の理由は、湊さんが仕事の顔をしてるところ。家では、なかなか見ることが出来ないから新鮮でいい。
なんて思いながら眺めていたら、誰かが私の前に立ち、視界を遮った。
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