私の事が大嫌いだったはずの旦那様が記憶喪失になってから、私を溺愛するようになったのですがこれは本当に現実ですか!?

hayama_25

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第18話

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 ちょっと待ってて!そう言われ待つこと10分。

 再びインターホンが鳴り、扉を開けると、

「失礼致します」

「わっ、」

 沢山のドレスを持って沢山の人が入ってきた。
 そして、家の中はたちまちお店屋さんに早変わり。

「事前に準備してたのかよ」

「もちろん!計画性がないと社長なんて出来ないからね」
「はぁ、」

 こんなに沢山…全部可愛い。

「きっと全部似合うよ!彩花ちゃんのドレス姿楽しみだなー」

「ちょっと待って。もし、彩花が気に入るドレスがあれば、それを着てパーティーに行くことは許可する。だけど、一つだけ条件がある」

「条件?」

「パーティーで着るドレスを決めるまで陽翔は外に出てて」

 え、可哀想。

「は?なんで!そしたら彩花ちゃんのドレス姿、一着しか見れないじゃん」

「嫌ならこの件は無かったことに」
「もしや、彩花ちゃんのドレス姿を他の男には見られたくないとかそういう?」

 まさか…湊さんが嫉妬なんてするわけ、

「…うるさい」

 否定しないってことは、そういうこと…?

「うわ、図星じゃん。彩花ちゃんのこと好きすぎるんだから。もう、仕方ない。ってことで、ここにいる男は全員外で待機!行くよー!」

 陽翔さんが居なくなって、一気に部屋が静かになった。

「彩花、」
「何?」

「今更こんなこと言っても仕方ないかもしれないけど…パーティー行きたくなかったら言ってね」

「何で、」

 行きたくないオーラ放ってた?
 それとも、やっぱり湊さんは私の隣を歩くの恥ずかしいと思ってるのかな。

「沢山の社長が集まるから挨拶をして回らないといけないし、仕事の話もしなくちゃいけないから、彩花のこと、構ってあげられないかもしれない。だから退屈だろうと思って…」

「そんな事、」

 湊さんは必ず私をパーティーに連れて行く。
 結婚しているのに夫婦で行かなければ変に思われるから。

 だけど、会場に入った瞬間、私の事は放ったらかしで、お偉いさんと話してる。パーティーで知り合いなんていないし、話せる人もいないからいつも私は1人で....

 って、それは別にいいんだけど、パーティーにあんまり行きたくないのには、また別の理由がある。

「無理に来させるつもりは無いよ。彩花が嫌
 なら今からでも断ればいい」

 彩花の好きなようにしてって、無理強いをするでもなく、私の意見を尊重してくれる。それだけで嬉しかった。

「行くよ」

「無理してない…?」
「してない!」

「そっか。ならいいんだけど」

 あと何回、今の湊さんとパーティーに行けるか分からないし。

「彩花が気に入るドレスあるといいね」

「え、私が選んでもいいの…?」
「え?もちろんだよ」

 そうか。今の湊さんは、私が好きなドレスを着させてくれるのか。

 前の湊さんは、いつも地味なドレスを私に着させた。

 他の人たちは鮮やかで繊細なドレスを着て来ることを知っていながら、暗い色を選んで、お前にはこんな色しか似合わない。スタイルが悪いから、足は見せるな。そう言って、いつもロングスカートだった。

 はぁ、思い出しただけで悲しくなってきた。

「ありがとう。嬉しい」

「嬉しい?」
「いつもは湊さんが買ってくれるドレスしか着たこと無かったから」

 ドレスを選ばなかったのは私だけど、選んだとしても結局湊さんの選んだドレスを着ることになるから。

 自分でドレスを選んで一度失敗してるから分かる。

「俺が買うドレス気に入らなかった?」

「ううん。どんな(にダサい)ドレスでも湊さんが
 買ってきてくれて、すごく嬉しかった。だけど…」

「だけど?」

「スタイルが悪いとか、地味なドレスしか似合わないとか...そんな風に言われるのが悲しかった」

 全部、本当の事だけど。いや、だからこそ、湊さんに言われて余計に辛かった。

「ごめん。彩花はすごく綺麗だよ」

「ありがとう、」

「それなのに、心にもないこと言って傷つけてごめんね」

 心にもないこと…前の湊さんは、きっと本心でそう言ってた。

「謝らないで。湊さんが言ったわけじゃないんだから」
「だけど、申し訳なくて」

「とりあえず、今はドレス探そ?」
「そうだね、」

 自分で選んだドレスを着て、パーティーに行ってみたいと、どれだけ思っていたことか。

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