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第15話
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「湊さん?」
「あ、いや。なんでもない」
「そう?ならいいけど」
「俺の母親の事だけどさ…今日のところは引き下がったけど、また絶対来ると思うんだよね。だから、これからこの家に出入りさせないようにしよう」
「え、」
それはいい案とは思えないけど、
「嫌?」
「嫌というか...そんな事しても、あの人が黙って諦めるような人じゃないのは知ってるから。なにかされそうで怖い」
どんな手を使ってでも、この家に入ってこようとするだろうな。
「俺が守ってあげるからそこは心配しなくてもいいよ。ただ、彩花が嫌がることはしたくないし....じゃあ、せめて俺がいない時は家にあげたりしないでね」
湊さんがいない時が、一番危険な気がするんですけど…
「話があるから家に入れてって言ってきたら?」
「居留守を使えばいいよ」
そんな簡単な話じゃ…
「不安なんだけど、」
「大丈夫。何かあったらいつでも必ず俺が助けてあげるから」
なんて言うけど平日は夜しか家にいないのに、助けられるわけない。
いつでもは流石に無理があるんじゃないかな。なんて思ったのは私だけの秘密にしておこう。
後日、お義母様がもう一度家に来た。
そして、湊さんの約束を守ることができず家に上がらせてしまった。
「あなたが家にいることぐらい分かってるのよ、今開けないとただじゃおかないから」
なんて言って、脅迫されたから。
「す、すみません。機械の誤作動で開かなかったみたいです。...今開けますね」
苦しい言い訳をして、開けるしかなかったんだ。
「湊は?」
「仕事に行っています…」
「そ、ならちょうど良かった」
「っ、」
そうだった。
お義母様が私を叩く時はいつも湊さんがいない時。
昔のことがフラッシュバックして、急に怖くなった。今更手遅れだけど。
「湊の事どうして黙っていたのかしら」
「すみませんでした、」
「あら、別に謝って欲しいわけじゃないのよ。ここで謝られると、私が悪いみたいじゃない。私を悪役にさせたいなら話は別だけど?」
「違います。私がいけないんです」
「そうよね?全部あなたが悪いのよね」
「申し訳ありません…」
「申し訳ないで済むと思ってるの!?大事な息子を傷つけておきながら!あなたも同じ目に合えばいいのよ!」
やめてと言ったところで、抵抗したところで、どうせ叩かれるのだから、いっそ一思いに…そう覚悟を決め、目を瞑った時だった。
「彩花に近づくなと警告したはずだけど」
「湊さん…?」
まだ会社にいる時間じゃ、、
「なんで、ここに、不在だって言ったじゃない!私を騙したの!?」
「違っ、」
「ちょっと怒鳴らないでよ、何回言えば分かるの?あんまり俺をいらいらさせないでくれる?」
そう、冷たく言い放つけど、私を背中にそっと隠してくれた。
「なあ。俺言わなかったっけ、彩花には手を出すなって」
「言われたわ。だけどそれって随分と昔の話じゃなかったかしら....あなたまさか、記憶が戻ってるの?」
「へ、」
どういうこと、、湊さんの記憶が…?記憶が戻ってる...?お願い、違うと言って、
「何言ってるの?嘘ついて俺と彩花との仲を引き裂こうしてるのか知らないけど、そんなの無駄だから諦めて」
「…」
何も言わない。な、んだ。お義母様の嘘だったのか。
「あと、帰る前に謝れよ」
「は、誰によ」
「彩花に決まってるだろ」
「どうして私が」
「どうしてなのか本当に分からない?」
「湊さん、私なら大丈夫だから」
「彩花が良くても俺が良くないの。ほら早く」
「…悪かったわね、」
「いえ...」
お義母様が私に謝罪を…
だけど、心のこもっていない謝罪を受けても、嬉しくも何ともない。
「じゃあ、もう二度と家に来ないでね」
「湊さん、それは流石に...」
どれだけ酷いことをされても、この人がどれだけ自分の息子を大切に思ってるか私は知ってるから。
さすがにそこまでするのは心が痛む。
「彩花は黙ってて」
湊さんの冷たい視線は私に向いていた。
「え、」
「そもそもなんで俺がいない時は、家にあげるなって言ったのにそんなことも守れないの?」
「だって、」
怖かったんだもん…
「だってじゃないでしょ?鍵を開けないってそんなに難しいこと?こいつのこと、可哀想だとか思ってるの?それで自分が危険な目にあうかもしれないのに?お人好しなの?それともただの馬鹿なの?どっち?」
自分の母親のことをこいつだなんて...きっと、湊さんはこの人の事を母親だなんて思いたくないんだろうな
「っ、ごめんなさ、」
私のことを思って言ってくれてるのは分かってる。だけどそんな口調で言われたらどうしでも昔のことを思い出してしまう。
「彩花…?」
私が至らないせいで、また湊さんに迷惑をかけてしまった。
「ごめんなさい、ごめんなさい」
謝るから、そんな怖い顔しないで。
「彩花、落ち着いて」
「ごめんなさい」
私がいけないの全部。
「あ、いや。なんでもない」
「そう?ならいいけど」
「俺の母親の事だけどさ…今日のところは引き下がったけど、また絶対来ると思うんだよね。だから、これからこの家に出入りさせないようにしよう」
「え、」
それはいい案とは思えないけど、
「嫌?」
「嫌というか...そんな事しても、あの人が黙って諦めるような人じゃないのは知ってるから。なにかされそうで怖い」
どんな手を使ってでも、この家に入ってこようとするだろうな。
「俺が守ってあげるからそこは心配しなくてもいいよ。ただ、彩花が嫌がることはしたくないし....じゃあ、せめて俺がいない時は家にあげたりしないでね」
湊さんがいない時が、一番危険な気がするんですけど…
「話があるから家に入れてって言ってきたら?」
「居留守を使えばいいよ」
そんな簡単な話じゃ…
「不安なんだけど、」
「大丈夫。何かあったらいつでも必ず俺が助けてあげるから」
なんて言うけど平日は夜しか家にいないのに、助けられるわけない。
いつでもは流石に無理があるんじゃないかな。なんて思ったのは私だけの秘密にしておこう。
後日、お義母様がもう一度家に来た。
そして、湊さんの約束を守ることができず家に上がらせてしまった。
「あなたが家にいることぐらい分かってるのよ、今開けないとただじゃおかないから」
なんて言って、脅迫されたから。
「す、すみません。機械の誤作動で開かなかったみたいです。...今開けますね」
苦しい言い訳をして、開けるしかなかったんだ。
「湊は?」
「仕事に行っています…」
「そ、ならちょうど良かった」
「っ、」
そうだった。
お義母様が私を叩く時はいつも湊さんがいない時。
昔のことがフラッシュバックして、急に怖くなった。今更手遅れだけど。
「湊の事どうして黙っていたのかしら」
「すみませんでした、」
「あら、別に謝って欲しいわけじゃないのよ。ここで謝られると、私が悪いみたいじゃない。私を悪役にさせたいなら話は別だけど?」
「違います。私がいけないんです」
「そうよね?全部あなたが悪いのよね」
「申し訳ありません…」
「申し訳ないで済むと思ってるの!?大事な息子を傷つけておきながら!あなたも同じ目に合えばいいのよ!」
やめてと言ったところで、抵抗したところで、どうせ叩かれるのだから、いっそ一思いに…そう覚悟を決め、目を瞑った時だった。
「彩花に近づくなと警告したはずだけど」
「湊さん…?」
まだ会社にいる時間じゃ、、
「なんで、ここに、不在だって言ったじゃない!私を騙したの!?」
「違っ、」
「ちょっと怒鳴らないでよ、何回言えば分かるの?あんまり俺をいらいらさせないでくれる?」
そう、冷たく言い放つけど、私を背中にそっと隠してくれた。
「なあ。俺言わなかったっけ、彩花には手を出すなって」
「言われたわ。だけどそれって随分と昔の話じゃなかったかしら....あなたまさか、記憶が戻ってるの?」
「へ、」
どういうこと、、湊さんの記憶が…?記憶が戻ってる...?お願い、違うと言って、
「何言ってるの?嘘ついて俺と彩花との仲を引き裂こうしてるのか知らないけど、そんなの無駄だから諦めて」
「…」
何も言わない。な、んだ。お義母様の嘘だったのか。
「あと、帰る前に謝れよ」
「は、誰によ」
「彩花に決まってるだろ」
「どうして私が」
「どうしてなのか本当に分からない?」
「湊さん、私なら大丈夫だから」
「彩花が良くても俺が良くないの。ほら早く」
「…悪かったわね、」
「いえ...」
お義母様が私に謝罪を…
だけど、心のこもっていない謝罪を受けても、嬉しくも何ともない。
「じゃあ、もう二度と家に来ないでね」
「湊さん、それは流石に...」
どれだけ酷いことをされても、この人がどれだけ自分の息子を大切に思ってるか私は知ってるから。
さすがにそこまでするのは心が痛む。
「彩花は黙ってて」
湊さんの冷たい視線は私に向いていた。
「え、」
「そもそもなんで俺がいない時は、家にあげるなって言ったのにそんなことも守れないの?」
「だって、」
怖かったんだもん…
「だってじゃないでしょ?鍵を開けないってそんなに難しいこと?こいつのこと、可哀想だとか思ってるの?それで自分が危険な目にあうかもしれないのに?お人好しなの?それともただの馬鹿なの?どっち?」
自分の母親のことをこいつだなんて...きっと、湊さんはこの人の事を母親だなんて思いたくないんだろうな
「っ、ごめんなさ、」
私のことを思って言ってくれてるのは分かってる。だけどそんな口調で言われたらどうしでも昔のことを思い出してしまう。
「彩花…?」
私が至らないせいで、また湊さんに迷惑をかけてしまった。
「ごめんなさい、ごめんなさい」
謝るから、そんな怖い顔しないで。
「彩花、落ち着いて」
「ごめんなさい」
私がいけないの全部。
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